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第五話

 くわあー、これは恥ずかしい!恥ずか死ねるわ!!

 お姫様抱っこだよ、お姫様抱っこ。壁ドンやら顎クイやらに並ぶ乙女の夢シリーズが、今、ここに、実現してるわけだよ。しかも、私が当事者で!

 前世含めても、これまでの人生で異性と密着した経験など皆無なんだよ私。なのに初対面から半時も経過してないってのにこのシチュエーションは難易度高すぎでしょう。ていうか、近い!顔が近い!さっきまでよりもさらにズームの倍率あがっちゃってるよ。

 パニクってる間にズンズン運ばれちゃってるわけだけれども、暴れたりしたら落っことされてしまうかもしれずで、動くに動けず。腰抜けちゃってて一人で立てないから、道端に放置されてもそれはそれで困ってしまうしで、大人しく運搬されてるけど。

 出来れば、こういうことは第三者として傍観する役回りがベストだと思うのよ。具体的には、画面の向こう側で二次元の出来事としてキュンキュンと悶えたい。


 「あ、あのー、私はどこまで運ばれてしまうのでしょうか?」


 「校門入ってすぐに、目立たないけど座れる場所があるから、そこまでかな」


 校門はすぐそこだし、幸い朝早くということで人通りもない(特に他の入学生とか)ので被害は最小限に抑えられると言えるかも。宇都宮さんと校門の詰め所に居る守衛さんにはがっつり見られてるけれども。宇都宮さんは当事者だし、校門を通る人間を見るのが守衛さんの仕事だし必要経費として割り切るしかない。恥ずかしいもんは恥ずかしいけどな!

 


 永遠の時間とも思える乙女の夢という名の拷問を耐えきった私、今はベンチに腰を落ち着けている。実際は五分もかかっていないけれどもね。

 本来ならば、こんなイケメンにお姫様でっこ運ばれるとか至福の時間と表現するべきシチュエーションなんだろうけれども、恋愛経験どころか異性との接触経験すら初心者以下な私にとっては正気度をゴリゴリと削られるイベントでしかないよ。 

 

 「落ち着いたかな?」


 「ええ、はい、まぁ」


 俯けていた顔を上げると柔和・・な笑顔がこちらを覗き込んでいるし。・・・ホント誰だよコイツわ。成松勝彰という人物は俺様系な性格をしているんじゃなかったでしたっけ、取説様?未だ出会ってから三十分と経ってはいないけれども、所謂、俺様な態度は一つとして見られていない。猫を被っているだけかも知れないが、無理をしているようにも見えない。

 所詮、私の知っている情報なんて取説の一文程度でしかないしゲームの中で彼が実際にどんな性格だったのかは分からない。取説ではそういう風に紹介しているけれども接してみると実はって、展開もありえるかもしれないか。

  

 「落ち着いたところで自己紹介といこうか、俺は成松勝彰。内部からの持ち上がりで今年度から高等部の一年生だよ」


 「あ、えーと、森山華蓮です。外部受験で、同じく一年生です。改めまして、先ほどはありがとうございました。おかげで怪我もせずに済みました」


 精神的なダメージは負いましたけどね。


 「そう、かしこまらなくても──っていうか、そもそもがコイツのせいだし森山さんが気にすることじゃない。むしろ、怒ってもいいくらいだよ」


 「コイツとは失礼ね、私には宇都宮玲奈という立派な名前があるんですー。あ、ちなみに私も内部生でもちろん一年生よ。ヨロシクね」


 成松勝彰──成松君に向かって啖呵を切ったかと思えば、こちらに華が咲くような笑顔を振り撒いてくださる。結構フレンドリー?

  

 「お前なぁ、さっきのことちゃんと謝れよ。初対面の女の子をいきなり押し倒すとか意味わかんねぇだろ」

 

 「やだ、勝彰ったら、女の子を押し倒すとか、卑猥だわ」


 「茶化すなって言ってんの、本気で怒るぞ?」


 「はいはい、ちゃんと、正式に、謝罪をいたしますので大丈夫よ。それより集合時間、そろそろ危ないんでしょ?さっさと行けば?」


 「ぐっ、後でちゃんと話聞くからな、覚悟しとけよ!ごめん、森山さん。時間無いからこれで失礼するね。コイツのことキツく言っても大丈夫だから、反省させてやって」


 OH、結構無茶なこと言い残して行ってしまわれた。ていうか、二人きりにさせるくらいなら回収していってくれんかね。初対面で苦情入れろとか反省させろとか難易度高すぎませんかね。


 「さて」

 

 結構な速度の展開についてゆけず、唖然としていると、残った彼女から声がかかる。思わず肩を震わせて振り向くと、視界に広がるのはキレイな頭頂部。わぁ、美人さんは髪の毛もやっぱりキレイだなぁ。


 「さっきはごめんなさい。危うく怪我をさせるところだったわ、その点については反省しています」


 「あっと、その、実際に怪我とか無かったですし。あの、気にしないでください」


 きっちり九十度に折られた腰と思いのほかしっかりとした謝罪の言葉に、こちらの方がしどろもどろになってしまう。さっきまでのフリーダムな感じはどこに行ったよ。


 「もっと軽い感じのイベントを想定してたんだけどね、なんか思ったより危ないことになっちゃって焦ったわ」


 頭を上げてニッコリとほほ笑む宇都宮玲奈──宇都宮さん。やっぱり、美人だわぁこの人、思わず拝みたくなっちゃう。眼福眼福。


 「謝罪ついでにもう一つ、不躾な質問をしてもいいかな?貴女、『キュンパラ』って言葉に心当たり、ある?」


お読みいただきありがとうございました。

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