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第二十八話

 玲奈さんと電話で話してから一カ月くらいが過ぎた。

 いやまあ、あの日以外にも玲奈さんとは普通に電話し合ったりしてるんだけれどもね、それだけあの日の会話が印象深かったというか。

 いろいろと御大層な推論を展開してみはしたものの私の日常に変化はない。

 

 「そもそも、私あのゲームのストーリーとかシナリオとか知らないし」


 結局のところ私が一人で考えていてもその結論に回帰するだけだし。玲奈さんに聞けば教えてくれるのかもだけれどもあまり聞きたいとも思わない。

 シナリオありきでヒロインとして行動することはなんとなくずるっこかなって思うし、私のキャラじゃない気がする。

 それにアレだ、私自身が似たような境遇に陥るなんて想像もしていなかったけれども、この手の──乙女ゲームの世界に転生しました系なラノベなんかはよく読んでいた。その中でヒロインちゃん達はゲームの知識を武器に猛威を振るって、あるいは空回りして最終的にぎゃふんされて散っていったケースが多数あった。正直、ああはなりたくないので調子に乗るのダメ、絶対。

 まあ、今のところ誰かを好きになったとか攻略したいとかは無いので杞憂みたいなものだ。

 ただ、ヒロイン的なご縁?みたいなものに期待が全く無いかというと、無いと言えば嘘になる、少しだけだけれどもね。私だって年頃の乙女?な訳で、誰かを大切に想ったり、その誰かに大事にされたりする関係に憧れを持っていて、ぶっちゃけて言うと素敵な恋人が欲しい!

 誰か、を具体的に想像できない時点でお察しなんですけれどもねー。

 普通に、いや普通以上に顔面偏差値の高い彼等のような人種と間近に接する機会の無かった、耐性も経験値もゼロな私としては日常会話をするだけでもドキドキしっぱなしで、我ながら随分とミーハーだなあと呆れたりはするものの、色恋的なアレコレは抜きにしても今よりもお近づきになりたいと思うのも仕方ないよねと自己弁護してみたり。

 入学前にはゲームのイベント的なトラブルに巻き込まれることが面倒で関わり合いを避けようとしていたのに現金なものだとは思うけれど知り合いに、友達になった以上はね。よく知りもしない相手のトラブルには絶対に巻き込まれたくはないけれども、友人がトラブルに巻き込まれて困っているのなら何か手助けが出来ないかと思うし、トラブルに巻き込まれたくないから友人をやめるのはおかしいと思うからね。

 そもそも、今まで彼らのトラブルに巻き込まれたりとかは殆ど無かったからね。オリエンテーションの時の彼女たち?あれはレアケだよレアケ、それに彼女たちはどちらかというと成松君というよりも玲奈さんの取り巻きだしね。本人、迷惑そうにしてたけれど。なので玲奈さんが”しっかり”と言い聞かせてくれて以降は変に突っかかれたりはしていない。

 だからまあ、目の前の彼女たちもそんな風なレアケに違いないよね、うん。


 「ちょっと、ちゃんと聞いてるの!?」


 もちろんです、()()()()聞いてないですよ。とはいえ、まあ半分現実逃避しながら聞き流してはいても要点は抑えておりますので問題ありませんとも。

 要約するとこんな感じ、「私たちは何もしていない(・・・・・・)のに入部を拒否られたのに、何で同じ(・・)外部生のアンタが入部を許可されてるのよ、何か卑怯な手を使ったんでしょ!?」という内容かな。

 いやいや、ツッコミどころ多いな!?先輩方に軽く聞いただけでも普通に迷惑かけまくってたと聞きましたけど!?あと卑怯な手って何?普通に入部届出しただけなんだけれど?というか、何で私のところに文句を言いに来るの?あ、あと一緒にしないで下さい、正直、同類に見られたくないです。最後にここ、図書室なんでお静かにお願いします。

 ちなみに私は今、委員会の仕事で貸し出しカウンターの中に座っているので適当に言いくるめて逃げ出したりできそうにない、勝手に席を離れるわけにもいかないしね。

 図書委員になったのは割と消去法な感じで、本当は文化祭や体育祭の実行委員とか楽そうで良かったんだけれど、あれはあれで期間中は激務だし短い期間で高度な連携を要求されるので外部生にはおススメしないと由美達に釘を刺されてしまったので、他のはどこもどっこいどっこいな感じだったので競合の少なそうな図書委員で希望したらすんなり就任できたのでした。

 図書委員の仕事といっても専門の司書さんがいるので私たちのやることと言えば一週間ごとに当番を持ち回りで貸し出し業務や返却本を棚に戻したりの軽い雑務程度なんだけれどねー。

 おっと、また思考が逸れそうになっていたよ、何だろう、彼女達みたいな人等の話には真面目に思考させないような波動でも出ているんだろうかね。


 「何か言ったらどうなのよ!?」


 「取りあえずもっと声のトーンを落としてくれません?」


 周りの利用者の人たちの視線が痛いんだよ!さっきから何度か言っても聞きやしてくれないし、というかコレ、私が何か言っても火に油を注ぐだけだよねえ、誰か仲裁に入ってくれないかなあ。こんな時に限って相方は先生に呼ばれて職員室に行ってるしなあ。

お読みいただき、ありがとうございます。

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