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閑話2

 結局、条件は満たされること無く年月は流れ、私は勝彰の婚約者という立場のまま高等部の入学式の朝を迎えることになった。

 条件と言っても、そうは複雑なものじゃない。「勝彰に真に想い合う相手が出来た時、不服なく婚約破棄に応じること」・・・なんだか相手側から私に対して申し付けれられる条件のように見えるが、私から大人たちに突き付けた条件だ。

 私自身には勝彰との婚約や結婚に不満は無い。というか、順当に育てば容姿、収入、社会的地位を兼ね備える存在との結婚を嫌がれば十中八九は我儘だと非難されると思う、私だって他人事ならそう思う。仮令そこに色恋の情などなかろうとも。

 私が前世の意識を取り戻したのは四歳前後だけど、その時点で中身の精神年齢は三十を超えていた。この年代に情欲の念を抱くような幼年趣味でもなければ小学生にも上がっていない洟垂れなんぞ、いかに容貌かおが良かろうとも恋愛感情など湧くはずもないでしょう。

 勝彰のことは嫌いではないし、むしろ好意を持っているけれど、あくまで現状は色恋のソレではなく保護者としての、甥や姪に抱くような親愛の情に近いかもしれない。が、さすがに適齢期にもなれば改善するんじゃなかろうか、なにせ容姿はストライクゾーンのど真ん中、ゲームでは推しキャラだったのだ。二次創作うすいほんの即売会等では彼中心のものを漁っていたくらいだ。だからこそ・・・・・、恋愛感情を抱かないとも言えるかもしれないけれど。


 

 まあ、私の事は置いておいて。物心がつく頃から隣にいるのが当たり前、家族ぐるみの付き合いで頻繁に両家を行き来して、大きくなったら結婚する。なんだか刷り込みのようだ。

 いや、良家の婚約、許婚っていうのはそういうものなんだろうけども。一般庶民の感覚が染みついている私にしてみたら、それが健全なことなのか判別がつかなくて、ふと脳裏に思い浮かんだのはゲームのヒロインのこと。

 プレイヤーのバイアスが掛かっていたとしても、ゲームの中で彼女は勝彰のことを真剣に想っていたし勝彰もそれに応えていた。

 ここは現実であってゲームではないのでヒロインに限ったことではないが、そういった娘たちの想いをこんやくしゃという存在で全て否定するのもどうかと思ったからこそのこの条件だ。

 だったら最初から婚約の話など受けなければと言われるかもしれないが、ゲームの中のヒロインはそれを乗り越えたのだ──玲奈わたしが捨てられても仕方ないくらいには酷いキャラだったにしても。なにも邪魔をしようなどとは思わないし、場合によっては応援したっていいとも思っているのだから、この程度のハードルくらい、超えるだけの覚悟は見せてほしい。

 そのくらいには私だって勝彰のことは大切なのだから。


 

 高等部への入学──ゲームの舞台を迎えるにあたって当然ながらゲームの登場キャラのことは調べさせた。前知識というアドヴァンテージがあるんだから生かさないのは勿体ない。

 ゲーム通りだったり一味も二味も違ったりと様々な人物模様だったが、ちらほらと転生者くさい動きをしていた者も居たりしたが私と言う存在がある以上、想定内なので驚きは少ない。

 ヒロイン──森山華蓮についてだけど、調べた限りでは転生者と思わせるような不自然な動きは見受けらなかったし、ゲーム内での人物像からかけ離れるような性格でもないようだった。

 ただし、内部生の他のキャラと違って彼女は外部生なので受験の邪魔にならないようにこの一年は調査を控えさせた、実家うちで使ってる興信所が見つかるようなヘマをするとも思えないが万が一ということもあるので。清鳳学園を受験したということと、無事合格して入学するという報告は受け取っているんだけどね。

 調査結果によって転生者として覚醒する時期がまちまちじゃないかと推測しているので、この一年で何も変化が無かったとは限らないので、そのあたりは入学後の楽しみかな。



 入学式のリハーサルのため、普通に登校するよりもかなり早い時間に私達は校門前に到着していた──用事があるのは勝彰だけで私は付き添いだ。

 本来であれば居る筈の無い、新入生であればなおのこと予想外の時間にバスから降りてくる制服姿に目をやれば、さらに驚きの事にヒロインのご登場である。

 調査結果に基づく人物像や普段の行動、ゲーム内での描写からもこんな時間に遭遇するなんて思ってもいなかった。

 ゲームであった勝彰との出会いイベント狙いかなとも考えたけど、その場合時間と場所がずれているし、勝彰を注視している割に接触しようとする気配がない。

 普段通りとは思えない行動、全く見知らぬ相手に向けるのとはちょっと違う感じのする視線、その割に接触を避けようとする気配。それらを統合するともしや、という考えがピンと立つ。

 幸いなことに彼女の注意は勝彰のみに注がれていて私の事には気づいていない様子にむくむくとイタズラ心が湧いてきて──。

 

 

お読みいただき、ありがとうございます。

今回の閑話はこれで終わります、次話からは本編に戻ります。

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