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第九十九話

 「そ、即答だね。読んでから決めなくてもいいの?」


 隣に座る図書委員の相方は私の答えが意外だったのか少しだけぽかんとした後にそう聞いてきた。


 「もちろん、お手紙は読ませてもらうけれど、中身を読んだからと言って受けることは無いかな」


 「はっきりと言うんだね、あの先輩ってそんなに好みから外れてたのかな?」


 そう聞いてくるけれども、ゲームの舞台となった影響からか、元から良家の子女というものはそういうものなのか、はっきりと言って、この学園の生徒は皆、外見の水準が高い。

 だから、先ほど私に手紙を手渡した先輩も、目の前に座る相方も、他の高校等にいれば確実にクラスで騒がれるくらいには容姿が整っている。

 前世では受験勉強中だというのに乙女ゲームを買い込んでしまうくらいには私も、格好いい男子や綺麗な女子というものは好きだし、対面しているとドキドキしてしまったりもするれけれども、だからといって容姿だけで好きや嫌いを決めるつもりはないよ。現在進行形で直昌君のことを好きになっている私が言っても説得力は薄いかもしれないけれども、直昌君のことだって決してその容姿だけで好きになった訳じゃない。重要な要素の一つであることも否定はしないけれども。

 

 「違うんなら・・・、あ、もしかして好きな人がいるとか?成松は・・・クリスマスパーティであんなこともあったし、違うよね・・・、なら木下とか?」


 「え、なんで分かったの!?」


 私の様子から先の自分の発言が外れていたのを察したのか、少し考え込む素振りをすると、おススメしてくる本の傾向からして推理ものの小説が好みらしい彼は、ずばりと言い当てて来てついつい驚いてしまった。

 

 「あれ、当たってたんだ?実はただの当てずっぽうだったんだよね」


 「えぇ?」

 

 私の驚きように軽く吹き出すようなしぐさをしてからただの当てずっぽうだと言う。推理小説好きらしく彼の頭の中では名推理が繰り広げられているとばかり思ったのに。


 「うちの学園の女子、特に同学年のは大体、一度はあの二人に惚れるからね。森山さんは同じ美術部員だしふれ合う機会も多いだろうから取りあえず言ってみただけさ」


 さすがに盛った言い方なのだろうけれども、それだけモテると言いたいのだろう。それはよくわかる。


 「んー、でも木下か・・・。あいつはやめておいた方がいいかもよ?」

 

 「え?」


 「木下はモテるはモテるんだけど、初等部や中等部のころは何人もアタックしたんだけど、全部が全部取り付く島もなし。それはまあ、成松も同じなんだけど、アイツの場合は宇都宮さんって婚約者がいるし、人当たりもいいからね。木下の場合は女子でもわりと遠慮とかしないから。今じゃあ、木下は観賞用ってのが女子の間での合言葉らしいよ?」


 観賞用・・・、そう言えば美術部でも以前、同じようなことを聞いたなあ。私も入学して間もない頃くらいのときは少し怖いかなとか思ってたこともあったし。ただ、親しく接している案外世話焼きさん?な一面というか優しさが見えてくるんだよね。

 あ、でもこれってチャンスじゃないかな。

 美術部でしたような大々的な発表というのは流石に恥ずかしいのだけれども、それでも私と直昌君の今の関係の目的を考えたら知っている人は少しでも多い方がいい。

 図書室の中でくらいしか付き合いのない彼が広告塔になってくれるかどうかは分からないけれども、この手の話題に全く興味が無いということも無いだろうし。


 「ええと、その、実はね、付き合っているんだ。私たち」


 「え?誰と?」


 「だからその、木下直昌君」


 お互い内部生同士、その分付き合いも長いのだろう彼らにとってそれだけ意外なことなのだろう。話の流れ的に該当する人物なんて一人だろうに聞き返してきた相方に名前を告げれば「ええ!?マジで!?」と本気で驚いていた。


 「はあ、ビックリした。まさかアイツを墜とす人物が在学中に現れるとはね」


 まあ、実際には墜ちてなくて私の片想いは継続中なのだけれどもね。

 

 「それにしても、アイツが女子を口説く姿が想像できないんですけど。ちなみに、参考までにどちらから?」


 「えと、それは私の方から?」


 「へえー。森山さんって意外と積極的だったってことかなあ。本の傾向からしてもっと受け手な印象だったんだけど」


 本当に木下君と色恋沙汰とは無縁な印象を持っていたのか意外だという様子を隠すようなことも無く。「どんな手段を使ったのか聞いてもいい?」なんて聞いてくるのには何と答えていいのかわからなくて笑って誤魔化す。

 流石に弱みにつけ込みましたとは言えないもんね。

お読みいただき、ありがとうございます。

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