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第八十九話

 「ということがあったんですよ」


 あの後、百武先生とその奥さんの早苗さんと軽い世間話をして別れて帰宅、大掃除を終えて年越しを待つばかりの夜、電話の向こうにいる相手に今日、出会った出来事と人物のことを報告する。


 『へえ、彼女に会ったのね。で、どうだったのかしら?貴女から見て』


 少しばかりの驚きと、それに続く少なくない好奇心の言葉に今日会った人のことを思い浮かべる。


 「なんというか、カッコイイ人でしたね。美人、ていうよりは麗人というんでしょうかね。ただ・・・」


 『ただ?』


 「ああ、いえ。お話している間ずっと見られていたような気がしてて、なんだったのかなあと」


 睨まれる、というほどの強さでは無かったのだけれども、それでもこちらの動きを見逃さないぞという気迫?闘争心?よくわからないけれど、そんなようなものを感じる視線だったような気がする。


 『・・・ああ、ふふっ』


 思い当たることでもあったのか、少し考え込んだ後にひとり笑いをこぼす。直接対峙した私が分からなかったのに話を聞いているだけで分かることがあったのかな。


 「玲奈さんはどうしてか分かるんですか?」


 『ええ、そうね。大丈夫よ、貴女が気にするようなことじゃないから』


 「そんな風に言われると余計に気になるんですけども・・・」


 『そう?そうね、彼女か彼女の周りに転生者が居るとは思っていたけど、貴女の話を聞いて十中八九、彼女自身が転生者なのねって思っただけよ』


 「そうなんですか?でも、今の話だけで分かるものなんですか?」


 彼女自身かその周りに転生者がいるだろうってことは玲奈さんや木下君から私も聞いていた。でも、ゲームの中では亡くなっていた早苗さんが今も無事でいるということからも何らかの形で転生者が関わっているだろう可能性が高いというのは自身も転生者である人間ならすぐに考え付くことだけれども、その人が転生者本人かどうかなんてその人自身からの告白でもないと分からないものなんじゃないかなって思うのだけれども。


 『勘みたいなものだけどね、彼女の立場は私に近いものがあるから、それでピンと来たのよ』


 立場?同じ転生者だってこと?それなら私も同じ立場だよね、それでも直接顔を合わせたのに分からなかったってことはもっと別の要因なのかな。


 『貴女には分からない感覚かもしれないわね。貴女は”奪う側”で私と彼女は”奪われる側”だから』


 奪う側?確かにゲームの中での私のような主人公という存在はライバルキャラの視点からしたら多くの場合で自分のパートナーを奪っていく存在なのだろうけれども。

 でも──


 「私はそんなことをするつもりはありませんよ?」


 『その通りね、でもそんなことは実際に貴女と接してみないと分からないでしょう?貴女が貴女でなかったのなら充分在り得た話よ』


 私が私では無かったのなら、私以外の誰かが森山華蓮として転生したとして、ゲームの通りに成松君や百武先生を攻略しようと行動したのなら、ということなのだろう。

 だから早苗さんは私に警戒の目を向けてきたのだし、そのことに玲奈さんはピンときた。その可能性が現実になることを二人とも恐れていたから。


 『それに、貴女だって──』


 玲奈さんの言葉にはまだ続きがあって、少し考えに沈みそうになっていた意識が引き戻される。


 『北島さんが私達のような立ち位置だったとして、いいえ、彼女でなくてもいいわ、誰かが彼の隣に立っていたとして、それで貴女は諦めるのかしら?』


 クリスマスの騒動の時、成松君とのルートでイベントが進んでいたこともあって玲奈さんは私が成松君の事を好きなんじゃないかって思いこんでいた。その誤解を解く意味合いもあって私が誰のことを好きなのかと、玲奈さんには伝えてある。北島さんの名前が出てきたことも合わさって、玲奈さんの言う彼というのは木下君のことで間違いないと思う。

 その木下君の隣に誰かがパートナーとして、奥さんは年齢的にないとしても、恋人や婚約者としていたとして、それで私が諦めるのかどうか。

 どうだろう、そもそもそんな決まった相手がいたとしたら私は木下君のことを好きになっていたのかな?木下君だってそんな相手が居たのなら、私と今のような関りを持ってくれるかどうかも分からないのだし。でも、私が木下君のこと好きになったのは、木下君に特定の相手が居なかったから、なんてそんな理由なんかじゃ決して無いのだし。


 「分からないです。そもそもそんな相手が居たのなら今のように好きになっているかどうかも分からないのですし。でも」


 『でも?』


 「それでも、木下君のことを好きになったのなら諦められないと思います」


 『ふふ、やっぱり貴女はそちら側よね。まあ、あくまでも今までの話は仮定の話、もしかしたらあり得たかもしれない実現しなかった話よ。だから言ったでしょ?貴女が気にする話じゃないわって』

 

お読みいただき、ありがとうございます。

今年最後の投稿で、丁度閑話含めて百話目の更新となりました。狙っていたわけじゃないのに切の良さにびっくりです。

このまま更新ペースを保って完結までこぎつけられるよう努力していきたいと思っています。

それでは来年もよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 100話到達おめでとうございます。 これからも華蓮ちゃんと木下くんを見守る所存です。 来年の更新も楽しみにしています。 良いお年をお迎えください。
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