第15話 竜王対峙
「ガリアムスは、どこだ……」
水の竜王はぎろりと船に乗る者たちを見渡した。鋭い眼光に、草太の首筋に悪寒が走る。
「炎の竜王ガリアムスはここにはいない」
「何……?」
草太が答えると、黄色い瞳が草太を睨み付けた。
「我は確かにガリアムスの臭いを感じたぞ。我を謀る気か、人間」
「違う、ガリアムスはここにはいない!」
「ほざけ! 奴め、我に臆して身をひそめたな……貴様らが隠したのか」
「話は通じなさそうだな……」
竜王はどうしてもガリアムスがここにいると思い込んでいるようだ。
「ねえどうするの? あれ、会話ができるような状態じゃないでしょ」
「まあそうだな。でも、ガリアムスがいないってわかれば引き返してくれるかもしれない。静観するしかないな」
幸い、竜王はこちらに攻撃するようなそぶりは見せていない。こちらから攻撃しなければ敵対することはないようだ。
「アルビダ、少し待っていてくれ」
「ああわかったよ。なんで水の竜王がこんなところで顔を見せたのかはわかんないけどね」
アルビダが首を振るのを見て、草太は自身の頬をかく。
「あー、その、それは少しだけ俺が原因になってるっぽいんだよな……」
「はあ!? どういうことだい?」
「このゴタゴタが終わったら説明するよ」
「まあわかったよ。……お前ら、撃つんじゃないよ!」
『了解!!』
アルビダの指令に海賊達が敬礼を送った。
「貴様……」
と、竜王が草太を見据えた。
「……なんだ?」
「貴様からガリアムスの臭いがする……」
「っ!」
竜王の視線が草太を射抜く。
「貴様……ガリアムスと会ったことがあるな」
「……ああ。少し前にな」
「貴様から奴の血の臭いがする……」
(犬かよ……)
草太は竜王の鼻の良さに対して内心で悪態をついた。
「まあな。色々訳あって戦ったんだよ」
「ほう……戦った貴様がここに立っているということは、ガリアムスに勝ったのか」
「……勝ったといわれると素直に頷けないけどな」
「なるほどな。……わかった、どうやらここにはガリアムスはいないようだ」
「やっとわかってくれたか! それじゃあ――」
草太の顔に自然と笑みが浮かぶ。不要な戦いは避けたいところだった。
「だが、貴様に興味がわいた」
直後に、竜王の言葉で笑顔をひきつらせる。
「ガリアムスを倒した貴様の実力――我にも見せてみよ!」
竜王の口腔に水流が集約する。
――ブレス!
草太が目を見開くと同時に、咢から激しい衝撃を纏った渦潮が解き放たれた。
「アイギス!」
草太の前にアテナが立ち、神器の盾でそれを防ぐ。
「サンキューアテナ」
「結局こうなるのね……」
防ぎ切ったアテナが呆れ顔でため息をついた。
「お前ら、ぼけっとしてるんじゃないよ! もう一度大砲を撃ちな!」
驚愕で固まっていた船員達はアルビダの怒声で我を取り戻し、素早い動きで装填の準備を始める。
「花奈、海を凍らせてくれ! 足場がほしい!」
「わかった! 【イモータルクリスタルプリズン】!!」
草太の指示に花奈が素早く動き、船と竜王の周りの海を凍らせた。
「メリナ、アテナ、行くぞ!」
「ええ!」
「ああ!」
草太が凍った海に飛び降り、アテナとメリナが後を追う。
「ソウタ、無茶するんじゃないよ!」
「わかってるよ!」
アルビダの声を背に、草太は氷上を駆ける。
「よくぞ防いだ! もう一度だ!」
竜王は草太を見据えてもう一度ブレスを吐き出した。
だが、アテナが草太の前に立ち再びアイギスで水のブレスを防ぐ。
「メリナ!」
竜王が草太とアテナに気を取られている間に、横から近付いたメリナが跳躍しマヴロスキアを構える。
「くらえ!」
「ぐおおおおっ!」
短刀が横っ腹に刺さり、竜王の呻き声が響いた。
「小癪な!」
「うわっ!?」
氷結した海から竜王の尾が突き出し、メリナの体を弾く。
「メリナ!」
「大丈夫、口の中を少し切っただけだ」
氷に激突する直前に受身を取り、メリナは血が垂れる口元を拭った。
「ねえ、あれ相当厄介じゃない?」
「海を凍らせたのは失敗だったかもな」
花奈の魔法の威力が強いこともあって、氷はかなり分厚くなっている。故に、どこから竜王の下半身が出てくるのかがわからない。
「この程度か、人間」
並ぶ三人を見下ろしながら、竜王は拍子抜けした様子で言った。
「まだ始まったばかりだろ。相手の実力を測るのには早すぎんじゃないのか?」
「ふむ……。それもそうだな」
草太が好戦的な笑みを返すと、竜王も少し楽しそうに首を振った。
「では、我が力の一端を見せるとしようか」
その言葉と共に、竜王の周りの氷が盛り上がった。新しい現象に草太はリコシフォスを握り直し、警戒心を強める。
轟音と共に、氷の床の下から巨大な水柱が上がった。その数は優に十を超えている。
「嘘でしょう……」
竜王の周りで渦巻く水柱を見上げ、草太の隣にいるアテナが戦慄して呟いた。
「防ぎきれるか、人間」
それは、一瞬の出来事だった。
うねりをあげた三本の水柱があっという間に草太達の体を呑み込み、氷の上に叩きつけられた。
氷の砕ける乾いた音ともに三ヶ所で水飛沫が上がる。水柱が消え、そこには巨大な穴があき、下に広がる海が見えた。
「草太くん!」
船の上から、花奈の悲鳴が響いた。
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