第10話 海賊団の来訪と、予定決め
お待たせしました!
「姉御〜! 会いたかったですよ〜!」
港に着いた海賊船から、一人の女性が飛び出しアルビダに抱きついた。
「一週間別行動しただけなのに、大袈裟だねえメアリー」
「私には十年以上にも感じましたよ! 本当にご無事で何よりです!」
「姉御がティーチと二人でハガラを追いに行った時から、メアリーの奴本当に厄介だったぜ」
アルビダに抱きつき泣きじゃくるメアリーと呼ばれる女海賊の頭を、ガタイのいい男がはたいた。
「お疲れさん、ドレイク。私がいない間の統率感謝するよ」
「はっ、お安い御用さ」
ドレイクは自慢げに胸を張り、アルビダに笑みを返した。
「ところで姉御、そこにいる子達は誰なんですかい?」
「ああ紹介が遅れたね。こいつらが今話題のソウタ達さ」
「『殺戮道化』を倒したっていうアレですかい」
「そうだよ、バルトロメオ。今回の作戦はソウタ達の手を借りたんだ」
「まあ、あんまり力になれなかったけどな」
「ふ~~~~ん……」
バルトロメオという名の、腰にカトラスを携える男が吟味するように草太達の顔を見てきた。
「粗相するんじゃないよ、ロメオ」
「わかってやすって」
(個性豊かな奴らばっかりだなあ……)
アルビダと彼女の部下達との会話をぼんやり眺めながら、草太はそんなことを思った。
「ソウタ。俺と姉御は船に戻りますが、あなた達はどうしますか?」
「お邪魔するのも悪いし、俺達は昨日の宿に泊まるよ。今後の予定が決まったら教えてくれるか?」
「分かりました。……今日はありがとうございました」
恐らくこの海賊団の中では一番の常識人枠であるティーチは、少しやつれた顔になっている。
(この人、色々と苦労しているんだろうな……)
草太はティーチに同情しながら、『黄金の海賊団』と一度別れた。
ヴェネールの街中に一度戻り、草太達は川沿いのベンチに腰を下ろした。
「作戦は成功だったのかな……」
「最優先事項だった、奴隷にされた獣人達は助けることは出来ましたから、良かったのではないでしょうか」
「でも、ハガラって奴に逃げられたのはムカつくわね。あのヘラヘラ男の顔面をボッコボコにしてやりたいわ」
「過激すぎるだろお前……」
草太が呆れ顔を見せると、アテナは「なによ」と口を尖らせた。
「初見の能力だったとはいえ、何にも反撃ができなかったのは私のプライドが許さないの」
「負けず嫌いだなぁ……」
「そういう草太も、メアリって女を取り逃がしたんだろ? 絶叫が聞こえてきたし」
メリナの指摘に草太はバツが悪そうに頭をかいた。
「聞こえてたのかよ……まあ、あいつは俺に執着しているみたいだしどうせまたすぐに会うさ」
「次こそ倒しなさいよ」
「わかってるよ」
草太は気のない返事をして川の流れに目を向けた。
黒の巨人と接触することはできたが、有力な情報を得ることはできなかった。追求は振り出しに戻ったといえるだろう。
「これからどうすっかな」
「予定通りクリシュ大陸に渡るということでいいのではないですか?」
「やっぱそうなるよな。ここにいてもこれ以上やることもないだろうし」
リフィアの言葉に、草太はうなずき返した。
「それじゃあ船の予約とかしないとだね。今からまた港に行こうか?」
「その必要はないんじゃないか?」
花奈の提案に、メリナが口を挟む。
「何かいい案でもあるのか?」
「ふっふーん、もちろんあるぞ。……アルビダたちの船にあたし達も乗せてもらうんだよ」
「ああ、それいいわね」
「いやさすがにそれは遠慮がなさ過ぎないか? 大して貢献もできたないんだし」
「うん……ちょっと気が引けるよね」
メリナの提案にアテナが賛同し、草太と花奈が日本人らしく遠慮がちな意見を述べる。
「まあだから、あたし達が獣人の護衛を担うってことでいいんじゃないか? また黒の巨人がくるかもしれないんだしさ」
「たしかにそれは一理ありますね。私個人としても、あの獣人達を放ってはおけません」
「リフィアも賛成側か。……じゃあ、メリナの意見でいこうか。明日アルビダにお願いしに行こう。今日はいろいろあって疲れたし、さっさと宿に戻ろうか」
草太の言葉に、花奈達が「はーい」と口をそろえて答えた。
草太達が予定を決めている所と時を同じくして、一つの箱が空中を進んでいた。
巨大なそれは、地球でいう潜水艦のような存在だ。魔力回路が通る壁に囲まれ、ハガラがぼやく。
「あー俺の最高に盛り上がる筋書きが台無しになっちまった」
「彼らを味方につけたアルビダ達の運がよかったですね」
「メアリ、お前よっぽどあのソウタとかいうガキのことを気に入っているんだな」
「ええ。私と彼は運命のようなもので繋がっていますから」
「なんだそりゃ」
うっとりと語るメアリを見て、ハガラがうへえと下を出す。
「だけど、お前さん相手に一方的にやられないってだけでもソウタは只者じゃねえなぁ。今後も俺達の邪魔をするとなると相当厄介だ」
「ええ。そうなれば私としては大変うれしいですわ」
「厄介だって言ってんだろ」
さすがのハガラもあきれた様にため息をついた。
「もちろん私としても『黒の巨人』の復活を妨げられるのは阻止いたしますわ。そのための布石はすでにもう打っていますが」
「は? なんだよそれ」
怪訝の表情を浮かべるハガラに、メアリはちょいちょいと下を指差す。
「サラス大陸とクリシュ大陸の間にある――通称西海。ここに何が棲んでいるのか……あなたも知っているでしょう?」
メアリのその言葉に。
「――ハッ」
ハガラは邪悪な笑みを浮かべた。
「なら、期待しておくか。怪物が怪物を食らってくれる未来をよ」
悪意をに満ちた者達を乗せて、空を飛ぶ潜水艦は東へと向かうのであった。
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