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童貞男子高生の紡ぐ転生神話  作者: 大庭青葉
第4章 新たなる敵
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第4話 ノルスタジアでの日々①

 明くる日、まだ太陽が出て間もない頃に、教会の玄関口に立ったフィオレが振り向く。

「それでは、私はギルドに行ってきますね。昼頃には帰ります。みんな、ソウタさん達に迷惑をかけちゃだめよ?」

『はーい』

 子供たちの元気のいい返事を聞いて、フィオレは微笑みながら出ていった。



「フィオレさんは、どうしてギルドに行ったの?」

「フィオレは光魔法が使えるから、たまにギルドに回復役として出向いてるんだよ。あたしが怪我した時も、文句言いながらちゃんと治してくれるんだぜ」

 花奈の疑問に、メリナが自慢げに答える。

「……メリナは、フィオレのことが大好きなんですね」

「べ、別に好きじゃねーよあんな口うるさいやつ! いつも説教ばっかでめんどくせーし!」

 リフィアに指摘され、メリナが照れながらまくし立てる。昨日から見ていても、フィオレとメリナには他の子達とは違った雰囲気が流れている。



「ここにキマシタワーを建てようかしら」

「単純に付き合いが長い親子みたいなもんだろ」

 隣で余計なことを呟くアテナに、草太が呆れ顔で返した。



「それよりも! お前らノルスタジア城に行きたいんだろ? そこまであたしが案内してやるよ」

「私達と一緒にいる所を見られたら、メリナも巻き込まれてしまいますよ?」

「大丈夫だって! 裏道を通っていけば人になんて会わないよ」

 自信満々に答えるメリナが答える。花奈が伺うように見てきたので、少し考えて草太は頷いた。



「じゃあ道案内を頼む、メリナ」

「任せとけ! この街はあたしの庭みたいなもんだからな!」

 メリナがドンと薄い胸を叩いた。



「……ですが、子供たちだけで留守番をさせるのも不安ですね」

「たしかにな。この中から誰か残すか?」

 そうの言葉に、花奈とリフィアは控えめに、アテナは露骨に嫌そうな顔をする。

 子供達の相手が疲れることは昨日のことで学習済みだ。草太だって一人でこの子達の面倒をまとめてみるのは面倒くさい。



「しょうがない。こいつに頼むか」

 草太は【ウェアハウス】から召喚陣の描かれた紙を取り出した。子供達がなんだなんだと草太に近寄る。

「【コールメイト】」

 紙を床に置き、草太は呪文を唱えた。



 魔法陣が淡く輝き、やがて一匹の魔物が姿を現す。

「呼ばれて飛び出てにゃにゃんにゃん! ケットシーのキットだにゃ!」

 現れた草太の召喚獣――ケットシーのキットが草太に買ってもらった帽子を直しながらお辞儀をした。

「よ、キット。悪いんだけど一つ頼まれてくれないか?」

「ご主人の頼み事なら、オイラはなんだってするにゃ!」

「そうか、なら悪いんだが――」



 草太が言い終わる前に、わーーー! と子供達がキットに群がった。

「何この猫喋るー!」

「かわいい!!」

「もふもふだ〜」

「にゃにゃにゃ!? なんなんだにゃ、こいつらは!?」

 もみくちゃにされながら、キットが悲鳴をあげる。



「……俺達が帰ってくるまで、その子達の相手を頼む。よし、行くぞ!」

「いつもこんなことばっかだにゃーーーーー!」

「上手い魚買ってきてやるからー!」

 悲痛の叫び声をあげるキットを残して、草太達は教会をそそくさと出ていった。



 教会を飛び出した草太達は、メリナの案内に従い細い裏道を進んだ。

「なあなあ、あの猫はなんなんだ?」

 先導しているメリナが興味津々で草太に尋ねる。



「あれは俺の召喚獣のキットだ。ケットシーっていう魔物らしい」

「|魔物調教師【モンスターテイマー】とは違うのか?」

「俺も詳しくは知らないんだが、魔力で契約を結ぶのが召喚魔法で、それ以外の手段で魔物を手懐けるのが|魔物調教【モンスターテイム】と言うんだとよ」

「へー、世界には色んなことやってる奴がいるんだな」

「メリナは、この街から出ようと思ったことは無いのか?」



 草太の問いに、メリナは困ったように笑う。

「やりたいことはあるけど、手のかかる弟や妹が沢山いるからなー。まだまだ先になるな」

「そうか……」

「そんな辛気臭い顔すんなよ! あそこでの生活に不満があるわけじゃないからあたしは別にいいんだぜ?」

「それもそうだよな。俺がとやかく言うことじゃない」

 メリナが笑うのを見て、草太は首を振った。



 たまに会話を交えながら、草太達は裏道を進み続けた。

 そうしてしばらく歩いた先に、大きな城の一部が現れた。

「あれがノルスタジア城ですか」

「そうだ。……で、ここまで案内したのはいいけど、これからどうするんだ? 王様に直接指名手配を取り消してもらうよう頼みに行くのか?」

「そんなことしても門前で捕えられて終わりだろ。まあこっからは俺に任せてくれ。……要は、この国の人達に『竜王が生きてるってこと』を証明すればいいんだ」

 草太の言葉に、メリナは首を傾げた。



 「ちょっと待ってろ」と言い残して、草太は【ゲート】でどこかへ行ってしまった。

 残された女子達は、街の喧騒が遠くに聞こえる路地裏で手持ち無沙汰の状態だ。

「……なあ、お前らってソウタのことが好きなのか?」



 そしてそんな静かな場所で、メリナが爆弾発言を投下した。

「なななななななにを言っているの!?」

「そそそそそうよ! 私があいつを好きなわけないでしょ!?」

 花奈とアテナが顔を真っ赤にして慌てふためく。リフィアはその様子を面白そうに眺めている。



 三人の様子を見て察したメリナは、にししと意地悪な笑みを浮かべた。

「そっかー。それならソウタにはうちのフィオレと結婚してもらいたいなー」

「「な!?」」

「身内びいきなしでもフィオレって美人だろー? 絶対いい嫁になると思うんだよなー。ソウタもかなり稼げそうだし、これならあの孤児院も安泰だ」

「そ、それは草太くんの気持ち次第じゃないかな!?」

「そそそそうよ! てか、あいつにフィオレなんてもったいないわよ!」

 メリナのからかいを真に受けて花奈とアテナが慌てて否定する。



 と、メリナが今度は深刻そうな表情に変わる。

「フィオレもいい歳だし、そろそろ身を固めてほしいんだよ。お人好しで見つけた孤児を見境なく拾ってきて、そんなこと考えてもないだろうけど……でも、やっぱあいつには幸せになって欲しいんだ」

「そ、それは……」

「で、でも……」

 それにすっかり騙されて花奈とアテナが言い淀む。



(こいつら面白いな)

 表情をころころ変える二人を見ながら、メリナ(とリフィア)は面白そうに笑った。



 少女達が恋バナにてんやわんやしていると、不意に街のざわめきが大きくなった。

「ぜえぜえ……何? 何かあったの?」

「街の方が騒がしいな。何かあったのか?」

「見てきましょうか?」

「…………あー、みんな……上を見て……」

 警戒するアテナ達に、上を見た花奈が疲れた様子で伝える。



 花奈の言葉に三人が上空を見上げると――

「「「なーーーーーー!?!?」」」

 竜王ガリアムスに跨って王城に向かう草太の姿を見て、驚愕の叫び声を上げた。



 ノルスタジア上空を睥睨しながら、草太は竜王の体をぽんと叩いた。

「大人気だなーさすが竜王様だ」

「私は見世物では無いのだが……約束通り、この後は試合をするのだろうな?」

 ガリアムスが少し怒った様子で草太を見る。

「約束は守るよ。……よし、あの城に向かってくれ」

 草太の指示に従い、ガリアムスはノルスタジア城の一番上――目を丸くしたノルデーン国王が窓から顔を覗かせる場所に向かった。



 ノルデーン国王はアベンテラーと違い優雅な髭と丸い体をしていて、これぞ国王という風貌だ。

 国王は近づいてきたガリアムスを見て、口をパクパクさせている。

「久しいな、シェリオ。お前の戴冠式以来か」

「りりりり竜王様!? ど、どうしてこのような所に!?」

「お前に頼み事がある。私の背に乗っている男――ソウタとその仲間の竜王殺しの罪を取り消せ。私はこの通り健在だ」

「シェリオ様、お願いします」

 竜王の言葉と共に草太は深々と頭を下げた。



 シェリオ国王は混乱した様子で

「は、はい……竜王様がそう仰るなら……」

 と呟いた。



 シェリオがしどろもどろになりながら兵士達に指名手配を取り消すように指示を出して、晴れて草太達は表を出歩けるようになった。

 竜王殺しが誤解であったことはガリアムスの姿を見たらすぐに分かることで、それはその様子を見ていた街の人々にとっても同じだ。

 草太が罪人でないということは、たった数分でノルスタジアに広まった。



「ありがとなガリアムス。お前がいなきゃこんな簡単にいかなかった」

「ふん、お前ならば力技でどうにでもできるだろうに」

「そんなことしたら他の罪を重ねちゃうだろ」

 未だ不満な様子のガリアムスの言葉に草太は苦笑いを返す。



 と、真下から声が聞こえた。見ると、路地裏に身を隠している花奈が呼びかけている

「草太くーん! 誤解は解けたのー?」

「ああ。これから俺は竜王と戦ってくるから、もうしばらくそこで待っていてくれー!」

「たた……怪我しないでねー!!」

「おーう!」



 軽い会話を交わして、草太はドラグ山に繋がる【ゲート】を開いた。




 草太がガリアムスと共に【ゲート】の先に消えてしばらく経った。

 話すこともなくなり花奈達が暇を持て余していると、彼女等のそばに【ゲート】が開いた。

 中から土埃にまみれた草太が出てきて、よっと元気そうに片手を上げる。

「そ、草太くん……その汚れはどうしたの?」

「ああ、ガリアムスと手合わせしてきてそのまま帰ってきたからな。今落とすよ――【クリーン】」



 花奈の質問に草太はあっけらかんに答え、白魔法を使って服の汚れを落とす。

「ガリアムスと手合わせって……あんた一人じゃいい勝負にならなかったでしょ」

「まあな。だから飛行なし、ブレスなし、魔法なしの決まりでやったんだよ。そうすりゃただの力のぶつかり合いだからな」

「普通はそれでも太刀打ちできない筈なんですがね……」



 リフィアが呆れて呟いた。

「……ソウタ、お前緑の冒険者なんだろ? なのに竜王と戦えるのか? なんだってそんなに強いんだ?」

 草太達の会話に取り残されていたメリナが尋ねる。

「いい師匠に巡り会えたからだよ。……あの人がいなかったら、俺は今でも弱いままだったと思う」

 草太は、穏やかな瞳をメリナに向けた。

 師匠と呼ぶ人への絶対的な信頼が、草太の目から読み取れる。



「……そっか。へなちょこなソウタも見てみたかったな」

「なんでだよ」

 小馬鹿にするように笑うメリナに、草太は眉を顰めてツッコんだ。



「……それで、この後は予定通り街の外に魔物狩りということで大丈夫ですね?」

「ああ。メリナ、おすすめの場所とかあるか?」

「西の草原だと見晴らしもいいし強い奴も余りいないからいいと思うぞ。……あと、狩りに出る前にギルドで依頼を受けてきていいか?」

「どうしてなの?」

 メリナのお願いに、アテナが首を傾げる。



「魔物を狩ったらお金を貰えるんだけど、その魔物を対象にした依頼を事前に受けていたらその依頼料分金が増えるんだ。正直、孤児院の経営はキツキツだからな……」

「ああ、別に構わないぞ。俺達は先に草原に行ける門に行って待ってるから、メリナはいい感じの奴を見繕ってきてくれ」

「わかった! 西の草原にはこの道を左に曲がってまっすぐ言った門から出られるから!」

 そう言い残して、メリナはかなりの速度で駆け出していった。



「優しい子ですね」

「ああ。口調は乱暴だけど、周りの……孤児院のことを一番に考えているんだな」

 遠ざかるメリナの背中を眺めながら呟くリフィアに、草太は頷きながら返した。


読んでいただき、ありがとうございます!

感想、誤字脱字報告がございましたら遠慮なくかいてください!一言だけでも下さると嬉しいです!



三日連続で投稿します。次話は明日の6時頃です。


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