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童貞男子高生の紡ぐ転生神話  作者: 大庭青葉
第4章 新たなる敵
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第1話 ノルスタジア

新章突入です!

 夕暮れ時。ノルスタジア近くの森林にガリアムスは降り立った。

「ここら辺でいいだろう。この先を下っていくと道が見える。それを北にまっすぐ行くと王都ノルスタジアに着くぞ」

「ありがとうガリアムス」

 竜王の背から降りて、草太はインビジブルを解除した。



「礼はいらん。それよりも、思ったよりも時間を取られてしまってすまなかったな」

「ああそれは……お前のせいじゃないから気にしないでくれ」

 頭を下げながら謝るガリアムスに苦笑いを返しながら、草太は後ろの三人に目を向けた。



 空の遊覧に興奮した花奈達は、ガリアムスにあっちに行けこっちに行けと色々と注文したのだ。そのため道草を食うことになってしまい、気づけばこんな遅い時間になってしまった。

「「「ごめんなさい……」」」

 反省した様子の三人に草太はやれやれとため息をつく。……まあ草太も楽しんでいたので強く責めることは出来ない。




「私はこれで失礼する。達者でな」

「ああ、ありがとうガリアムス。また今度遊びに行くよ」

「ありがとうございました」

「感謝致します」

「ありがと」

 再び飛び上がるガリアムスに、草太達は礼を言いながら手を振った。




 やがて赤い竜王が空の彼方に消え、一瞬静寂が訪れる。

「……さーて、今晩はここで野宿だな」

「それしかありませんね」

「うぅ……ごめんなさい」

「花奈だけのせいじゃないさ」

 今晩の予定を考えながら、草太達は談笑する。



「……え? 宿には泊まらないの?」

 そこにアテナが不安げに問いかけた。

「ああ。今から街に行っても宿が空いているか怪しいしな」

「えぇー……」

 アテナは野宿に不満そうだ。草太達も初めてのことなので不安はある。



「大丈夫だよ、アテナちゃん。周りは私の魔法で守るから」

「焚き火で肉を焼くのも趣があっていいですよ、アテナ」

 そんなアテナを花奈とリフィアが説得する。

「そ、そう……? まあたしかに人間達のやっていることを経験できる貴重なことかしら」

(……ちょろい)

 即座に頬を緩めるアテナを見て、草太はそんなことを思ったが口には出さないでおいた。



「んじゃまあ、野営の準備は俺がやっとくから、花奈達は夕飯の準備をしておいてくれ。確か、王都にいた時にリフィアがとってきた肉と野草がまだあったよな」

「はい、私の『道具袋』に保管してあります」

「じゃあ私とアテナちゃんは焚き火用の木を集めに行こうか」

「いいわね、探索しましょう!」

「はしゃぎすぎて森の奥には行かないようにな」



 動き出した花奈とアテナに草太は親のような注意をした。



 日も完全に落ち、森に夜が訪れる。

 真っ暗な森の中で、草太達は小さな薪を囲んで座った。

「この肉はなんの肉なの?」

「それはブレイブオックスという魔物の肉ですよ。気性の荒い魔物なのですが、その肉は柔らかくてとても美味です。このシャリン草を付け合せにするとまた格段と美味しくなります」

 リフィアはブレイブオックスの肉を焼きながら、アテナにぐるぐる巻きの葉っぱを渡した。



「ふんふんふん……あ、これニンニクの匂いと似てるわね」

「にんにく……とは聞いたことはありませんね」

「俺達の故郷にあった植物だよ。シャリン草と同じで肉とかと一緒に食べると美味かったな」

「口臭が臭くなるのが玉に瑕だけどね……」

「ならばご安心を。このシャリン草は口臭に害を与えません」

「完全体ニンニクじゃん」

 リフィアの説明に、草太はきらきらとした瞳でシャリン草を眺めた。



「出来上がりました。ブレイブオックスの炙り焼きです。お熱いうちにどうぞ」

「美味しそうね!」

「すごい暴力的な匂い……」

 アテナと花奈がごくりとつばを飲み込みながら、ブレイブオックスの肉が刺さっている棒をリフィアから受け取る。



 二人は一拍置いて、同時に牛肉にかぶりついた。

「うまぁ~~~~! なにこれ、肉がすっごい柔らかい!」

「口の中に肉汁が広がる……美味しい……」

 アテナと花奈が恍惚の表情でグルメリポートする様子を、草太は羨ましそうに眺めていた。

 というのも、リフィアの二本の腕で焼ける串焼きは2つまでだからだ。調理人のリフィアと、女性を優先させた草太がブレイブオックスを食べられるのはもう少し先になる。



「ソウタ、もう少し待っていてくださいね。今すぐに焼き上げますので!」

「あ、うん。急がなくてもいいからな……」

 それを見たリフィアが真剣な面持ちで肉を睨み始めたので、草太は困り顔で笑いかけた。



 無事に草太とリフィアもブレイブオックスを食べることができ、四人とも大満足で今晩の夕食を終えた。

「あとは寝るだけね……って、ちょっと待って! あんたが作った野営用のテント、一つだけなの!?」



 お腹をさすりながら一息ついていたアテナが、突然ぎょっとしたように言った。

「そうだよ。正直、二つも買ったら無駄な出費だったからな」

「ありえないんだけど!? あんたはめっちゃボロいテントにでも入ればいいでしょ!? こんな狭いテントに男女一緒って……!」

「は? 何言ってるんだ? 俺は外で寝るに決まってるだろ」

 顔を真っ赤にしてまくし立てるアテナに、草太は冷めた目を向けた。



「…………え?」

「いやさすがにそこはわきまえてるよ。お前は俺をなんだと思ってるんだ」

「……あっ……そうですか……」

 呆れ返る草太を見て、アテナは風船がしぼむように小さくなった。



「まあ、三人で一緒に寝るのは結構慣れてるんだけどね」

「何回かそういうことはありましたしね」

 二人の様子を眺めていた花奈とリフィアは、思い出したように呟いた。



「あんたやっぱり女たらしのクソ野郎じゃない!!」

 アテナの怒号が、森の奥底まで響いた。




 一悶着ありながらも四人とも寝静まり、夜が明け朝日が昇った。

「ん……今日もいい天気だ」

 陽の光を浴びた草太はむくりと体を起こし、うーーんと伸びをした。

 暖かい日差しが、寝起きでぼやけた思考を少しずつ起こしているように感じた。



 草太がしばらくあくびを交えながらのんびりとしていると、離れたところにあるテントから女性陣がのろのろと出てきた。

「おはよう。よく眠れたか?」

「おはよう、草太くん。ぐっすりだったよ」

「おはようございます、ソウタ。休養は充分に取れました」



 草太が声をかけると、花奈とリフィアがまぶたを擦りながら笑いかけてきた。

「おはよう、外で眠っていたピーマンの肉詰め系男子。あなたがそんなに遠くにいてくれたおかげで、私はおかげで快適で安全な夜を過ごせたわ」

 その後ろから見下すように草太に満点の笑みを向けるアテナが出てきた。



「……バカは朝から元気だな」

「朝からいい度胸じゃない! タルタロスにぶち込むわよ!」

「大体てめぇが『ここからは女子領だから男は浸入禁止!』なんて言って俺をテントから引き離したんだろうが! ご丁寧に花奈に【サイクロンパレス】まではらせやがって! どの口で『おかげ』とか言ってんだ!」



 草太は昨晩、アテナの強い要望によって、焚き火を挟んでテントから反対側にあるところに移動させられていた。

 そんなアテナが調子に乗っているので、草太の頭は朝っぱらから苛立った。



「ふん、本当はあんたみたいなケダモノは檻に入れて隔離したいところだったのよ! そうされないだけ恵まれていると思いなさい!」

「檻に入れられるのはお前の方だよ。【クリスタルプリズン】」

 アテナの挑発に、草太はノーモーションで魔法を返した。



 瞬時にアテナを長方形の氷が囲んだ。キィンと子気味のいい音が響く。

「……え、なにこれ? ちょ、ちょっと、これめちゃくちゃ硬いんですけど」

 いきなり自分を閉じ込めた氷の塊を叩きながら、アテナは不安そうな声で言う。



「水系上級魔法の【クリスタルプリズン】だ。対象一人を氷の檻に閉じ込める魔法だ。お前はそこで俺達の朝食風景でも眺めてろ」

 氷の牢に閉じ込められたアテナを、氷と同じぐらいに冷ややかに見ながら、草太は魔法の説明をする。

 この魔法は、対象範囲が狭い代わりにかなりの強度を持つ。武器を持っていないアテナが突破するのはまず不可能だ。



 叩いた感触でそれが分かったのか、草太の言葉にアテナが絶望の表情を浮かべる。

「【クリスタルプリズン】【クリスタルプリズン】【クリスタルプリズン】【クリスタルプリズン】」

 更なる恐怖を与えるため、草太は【クリスタルプリズン】を四重にかけた。

 五層の氷の檻が、無防備なアテナを完全に閉じ込める。



 アテナの顔が真っ青に染まる。

「そ、ソウタ? さっきは私が言いすぎたわ。昨夜もちょっとやりすぎたわね? 反省したから……あの……」

 氷を通しているので、アテナの声は酷くくぐもっている。声が震えているのは、寒さと恐怖からだろうか。

 草太は感情のない瞳でそれを眺め――



「早く溶けるといいな、それ」

 清々しいほどの綺麗な笑顔を向けてアテナに背を向けた。



「あああああああ!! ソウタ、ソウタさん、ソウタ様ぁあああああああああああああ!! ごめんなさい! 許してぇええええええええ!!」

 アテナのくぐもった絶叫が森中に響き渡った。



 その後しばらくして、花奈によってアテナは救出され、無事に朝食にありつくことが出来た。



 朝食を終え、出発の準備も整った草太達は、野営地を後にした。

「ガリアムスが言うには、この坂道を下っていけば街道に出るみたいだな」

 林が並ぶ坂道を下りながら、草太はガリアムスの言葉を思い出す。



「その道を北に進めば王都ノルスタジアに到着する、とも言ってましたね」

「あ、道が見えてきたよ」

「案外早かったわね」

 アテナが草太の後ろから指をさす。たしかに舗装された土の道路が見えてきた。



 出てみると、馬車が三台は通れそうな大きな道だった。さすがは王都に続く道だと言うことか。

「ノルデーンはフェリアよりも国力が劣っていると聞きましたが、立派な道ですね」

「そうだな。王都もかなり栄えていそうだ」

「早く行ってみたいね! 北に真っ直ぐってことはこっちだよね」

 わくわくした様子の花奈が、率先して進み始めた。



「ちょっとハナ、そっちは南。真逆よ? 北はこっち」

 アテナに止められ、すぐにその顔は真っ赤になったが。




 ノルデーン王国王都ノルスタジア。

 ドラグ山の麓近くに位置するこの都市は、竜王ガリアムスの加護を最も享受できると言われ、はるか昔にノルデーンを建国した人物が城とともに築いた城下町だ。

 かつての大陸戦争で大きな被害を受けたが、十年以上経った現在では、戦争の傷も癒えて人々で賑わっている。



 城と街を守るための外壁と大門が草太達を出迎えた。門の前には複数の兵士達が並んでいる。

 フェリア王国の騎士の鎧は銀色だったが、この国の鎧は紅色だ。竜王を意識しているのだろうかと草太は考えた。

「すみません、ノルスタジアに入りたいのですが」

 草太は『冒険者の証』を見せながら兵士達に話しかけた。



「ああはい、旅人の方です……ね……」

 草太の言葉に柔らかい雰囲気で答えた兵士は、しかし何故かすぐにその表情を驚きの表情に変えた。

「ちょ、ちょっと待っていてもらってもよろしいですか?」

 そしてどうしてか後ろに控える兵士達の元に慌てて駆け寄っていった。

 兵士達はこちらに聞こえない小さな声で、何かの紙を見ながら相談しているようだ。



「あれどうしたの?」

「さあ……」

 アテナの問いに、草太も首を傾げるしかなかった。



 五分ほどして、兵士が草太達の所に戻ってきた。

「お待たせしました! 入国は問題ありません。……お名前は、ソウタ様ですね。そちらの三名様も冒険者ですか?」

「えっと、はい。……あ、でもこいつはまだ冒険者の証は持ってないんですよね」

 草太はアテナを指しながら兵士に説明した。



「では、この街の冒険者ギルドで登録されてはいかがでしょうか?」

「それもそうですね。アテナもそれでいいか?」

「構わないわよ」

 草太が首を向けると、アテナは頷いた。



「では、そちらのお二人の証も拝見しますね」

 それを聞いて、花奈とリフィアは兵士に自分達の冒険者の証を渡した。

「…………えっと、皆さん全員『緑』の冒険者なのですか?」

 それをじっくりと見ていた兵士が、そんなことを草太達に尋ねた。



「そうですね。まだそんなに大きな実績を挙げていないので」

「そう…………ですか……」

 兵士は何かを考え込むようにして、証を花奈とリフィアに返した。



「何か問題でもありましたか?」

「いえいえ、なんでもありません! ソウタ様、ハナ様、リフィア様、そしてアテナ様ですね! ではどうぞ入ってください!」

 草太が聞くと、兵士は慌てたように草太達のために道を開けた。いつの間にか、門が開いている。



 草太達は兵士の態度に対して少し疑問に思いながらも、言われた通りに進んだ。

「私たちに何か問題があったのかな?」

「でも通してくれたってことは大丈夫ってことだろ? 単にフェリア王国よりも警備が強いだけなんじゃないか」

 不安そうにする花奈を安心させるため、草太は楽観的な考えを述べた。




 大門を通り、ノルスタジアの街に入っていった草太達の背中を注視しながら、兵士達は顔を寄せあった。

「ソウタ、ハナ、リフィア、アテナ…………お前達、しっかりと覚えたな?」

 一人の兵士の言葉に、他の兵士達が頷く。

「よし、 ビリー国王に彼らのことを伝えろ。そしてすぐに新しい指名手配書の準備にとりかかれ。それと先回りして冒険者ギルドにも奴らのことを詳細に伝えるのだ」

 兵士の指示に、他の者達が即座に動き始める。



「竜王様を殺めた大罪人め……必ずやここで貴様らの息の根を止めてやる……!」

読んでいただき、ありがとうございます!

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