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童貞男子高生の紡ぐ転生神話  作者: 大庭青葉
第3章 新たな旅の始まり
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第4話 同行者が増えるよ!

やったね!

「――ほんっと信じらんない! ハナがそんな人間だとは思わなかったわ!」

「ご、ごめんなさいアテナさん……」

 十数分後、そこには顔を真っ赤にして叫ぶ女神の姿があった。花奈が申し訳なさそうに頭を下げ、何度も謝罪しているが、アテナの機嫌は治らない。


 というのも、花奈とは別の人物が全く反省した素振りを見せないからである。

「私は女神なのよ! いくら不死身だからと言って、やっていいことと悪いことがあるでしょう!?」

「あーはいはい悪かった悪かった。そんなに出たくなかったなら、もう一回生き埋めにしてやるか」

「それは止めて!」

 素知らぬ顔で草太が鬼畜なことを言い、アテナが怯えるように身を竦ませた。


「こっちだって落ちてくるお前を顔面で受け止めて死ぬかと思ったんだぞ……ていうか、なんで地面に埋まってたんだ?」

「そ、それは……その……」

 呆れ顔の草太の質問に、アテナはどうしてか言い淀んだ。

「そ、その……あんたたちをこの世界に送ったことがばれたから……お父様たちに下界に落とされて……そのまま垂直落下したら、地面に突き刺さりました……」

「ええ……」

 想像以上にぶっ飛んだ理由に、さすがに草太も同情の視線を向けた。花奈も同様に唖然としている。


「そ、それは災難だったな……」

「ええ本当に……お父様たちのああいう所は本当に勘弁してほしいわ……」

「も、戻る方法とかはないんですか……?」

「……っ、あ、あるにはあるけど……その……」

 アテナは再び言い淀み、草太の顔をちらりと見た。


「……? なんだ?」

「――べ、別に! あんたなんて見てないわよ!」

「なんなんだ本当に……」

 顔を赤くしてそっぽを向くアテナを見て、草太はめんどくさそうに首を振った。


「……あのぅ、そろそろその人がどなたか教えていただけませんか……?」

 アテナと草太が互いに言い合っていると、横からリフィアが恐る恐るといった風に声をかけた。


「あー……」

 なんと説明したものかと草太が考えていると、その横からアテナがばばっと前に出た。

「よくぞ聞いてくれたわね! 私の名前はアテナ! 戦いを司る女神であり、オリュンポス――」

「わぁー待て待て待て!」

 自己紹介をしようとしたアテナの口を、草太は慌てて塞いだ。そして、そのままズルズルと引きずってリフィアから距離を取る。


「リフィア、ちょっと待っていてくれ」

「え……あ、はい」

 寂しそうにするリフィアの表情に草太の胸が少し痛んだが、そのままアテナに顔を近付けた。


「ちょ――」

 すると何故かアテナが赤面した。だが、そんなことはどうでも良い草太は強引に話をし始める。

「いいかアテナ。この世界の住民の前では、お前が女神だと言うことと、俺達が別の世界から転生してきたことは秘密にしておいてくれ」

「ちかいちかいちかいちかい!」

 草太がアテナの耳元で呟くと、アテナが耳まで赤くしてもがきだした。


「おいこら暴れんな。とにかく、リフィアには今の事を言わないようにしてくれ」

「な、なんで私がそんなこと……」

「それが出来ないんだったら、お前をもう一度埋める」

「卑怯者! あんたやっぱり屑人間ね!」

「うるせえ! 手違いで人を二人殺すような奴に言われたくないな」

「うぅ……そう言われると何も言えない自分が悔しい……」

 アテナは涙目になりながら肩を落とした。もう歯向かうことは無いだろうと、草太はアテナから離れてリフィアに近付いた。


「リフィア、あいつは俺達と同郷のアテナっていう奴だ。地面に埋まることが趣味で、自分のことを女神だと思っているちょっと頭のおかしい奴だけど……まあ、あいつの身分は俺と花奈が保証するよ」

「…………」

 草太の説明を聞いたリフィアは、少し顔を俯かせた。そのため、草太からは彼女の表情が見えなくなる。


「……リフィア?」

 しばらく黙り込むリフィアに、草太は戸惑いがちに名前を呼んだ。

 名前を呼ばれたリフィアは静かに顔を上げ――。

「――はい、わかりました。ソウタ、あなたを信じます」

 ガラス細工のような笑顔で頷くのであった。


 その笑みを見て再び草太の心が痛み、本当のことを言おうか迷った。

 だが、首を振って考え直す。今はまだその時ではないのだと。

「……ありがとう」

 だから、感謝の言葉だけをリフィアに伝えた。


「……それで、アテナさんはこれからどうするんですか?」

 二人の様子を黙って見守っていた花奈がアテナに尋ねた。

「そりゃもちろんあんた達についていくわよ。ていうか、私がここに来たのは、あんた達と一緒に旅をするためだったんだし」

 花奈の質問にアテナは当たり前のように答えた。草太の顔に「この馬鹿は何を言っているんだ」という言葉が浮かぶ。


「いや待て、お前をつれていくことなんてしないぞ。一人でどこへでも行けばいいだろ」

「……はぁ!? あんた私をここに置いていくっていうの!? こんな何もない所に、かよわいレディを置き去りにするつもりなの!?」

 アテナは一瞬呆気にとられたが、すぐさま猛反発した。

「地面に埋まっていても無事なんだから問題ないだろ」

「おおありよ! ……さ、寂しいじゃない……」

「寂しいとかお前子供かよ……良い子はお留守番してましょうね~いいこでちゅね~」

「くっそむかつく! 一回痛い目見せてやるからそこに座りなさい!」

 草太の煽りについにアテナが激怒した。バッと後退して距離を取り、ビシッと草太を指さす。


「あんたにはそろそろお灸をすえなきゃいけないみたいね!」

 アテナは自信満々に言い放ち、彼女の愛武器の名前を呼んだ。


「顕現しなさい――『絶対の盾アイギス』、『女神の槍パルテノス』!」

「……!」

 アテナの様子を見て、草太は警戒するようにリコシフォスの柄に手をかけた。


 一触即発の空気に、花奈とリフィアが心配するように草太とアテナの様子を伺う。

 そして、ついにアテナの武器が現れ――!

「「……」」

 無かった。


「どうしてよぉぉぉぉぉ!?」

 何も起きないことに気付いたアテナが涙目になって絶叫する。

「なんで!? 天界から落とされたときに確かに持ってきたはずなのに! ……はっ!」

 少し考えて、アテナは自身が地面に突き刺さったときに、地上から複数の男たちの声がしたことを思い出した。


(かしら)! なんか強そうな武器が落ちてますよ!』

『はぁ? そんなの何かの罠に決まってんだろ。近くに人がいないか確認しろ』

『へい! 了解です!』

『か、かしらぁ……』

『今度はなんだ?』

『あ、あそこに人が埋まっています……』

『はぁ? んなわけ……うお、まじかよ……あれがこの盾と槍の持ち主なのか?』

『だったら遠慮なく持っていっちゃいましょうよ! あんな様子だったら絶対に生きてませんし!』

『……それもそうだな。野郎ども、かっぱらっていくぞー!』

『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』



「まさか、あの時……」

「……で、俺に何をすえるって?」

 考え事をしているアテナの背後から、草太の低い声が響いた。

「ひぃ!」

 ビクリと肩を跳ね上げ、アテナは恐る恐る草太の方を向いた。口元に笑みを浮かべながら、されど目は全く笑っていない草太が、黄金の剣に右手を添えながら、左手でアテナの肩を叩いた。


「言い残すことは無いか?」

「許してえええええええええええええええええ!」

「……草太くん、そろそろアテナさんをいじめるのは止めてあげなよ」

 命乞いをするアテナを見かねてか、花奈が草太とアテナの間に割って入った。


「ハナぁ……ソウタが、ソウタがいじめるのぉ……」

 女神の威厳が一ミリも感じられない涙声で、アテナが花奈に泣きついた。その様子はただの駄々っ子の様だ。

「よしよし、怖かったですね」

「なんで俺が全面的に悪いみたいになってるんだよ……」

「少女をいじめるのは感心しませんよ、ソウタ」

「リフィアまで……はいはい、ここまでにしておくよ」

 納得がいかない草太だったが、形勢が不利なので引き下がることにした。


「まあいつまでもこの馬鹿に構っていられないしな。さっさと出発しよう」

「ちょ、ちょっと待って!」

 草太がため息をつきながら馬車に向かおうとすると、アテナが慌てた様子で引き止めた。

「まだ何か用があんのかよ」

 苛立ちも隠さずに草太が尋ねると、アテナは気まずそうに身をよじらせながら口を開いた。


「そ、その……私も連れて行ってくれないかしら……」

「……はぁ?」

「その、お父様からあんた達の旅の手助けをする様に言われているから……連れて行ってほしいんだけど……」

「お前のお父様がどうして俺たちに協力的なんだ?」

「そ、それは……そう! あんたたちへのお詫びってことよ!」

「……ふーん。まあそういうことにしておくか。……ところで、お前戦闘はできるのか? 出来ないのなら手助けどころか足手まといになるから同行させることはできないぞ」

 草太の質問に、アテナは得意げに胸を張って答えた。


「もちろんよ! 私にかかればどんな魔物でもちょちょいのちょいよ!」

「でもお前武器もってないじゃん」

「あっ」

 アテナは自身の状況を思い出して間抜けな声を漏らした。


 沈黙が四人の間に生まれる。

「……今回はご縁が無かったということで……」

「ちょっっと待ってよおおおおおおおお!」

 馬車に戻ろうとする草太のコート裾を、アテナが悲痛な面持ちで掴む。

「なんなんだよ! いい加減しつこいぞ!」

「お願い! お願いだから私も連れて行って! どこにも行くアテがないのよおおおおおおおおおおおお!! もう天界にも帰れないし、武器もないし……私を助けてよおおおおおおお!!」

 女神としてのプライドをかなぐり捨て、アテナは縋るように草太に泣きつく。傍から見ると、男に捨てられそうな女の図だ。


「草太くん、アテナさんも一緒に連れて行こうよ。旅は大勢で行った方が楽しいし」

「そうですね。彼女もこんなに必死になっているのですし」

 さすがにいたたまれなくなって、花奈とリフィアが困り顔で草太を説得する。アテナが表情を輝かせて女子二人を見るその様子は、小動物の様であった。

 少数派になってしまった草太に勝ち目はない。草太はため息をついてアテナに向き直った。

「……はぁ。二人がそういうならしょうがない。……アテナ、大人しくするって約束できるんだったらついてこい」

「うぅ……ありがとう……」

(ほんとガキみたいな奴だな)

 涙目で小さくお礼を言うアテナを眺めながら、草太はそんなことを思った。


 色々なゴタゴタはあったものの、草太達は再び馬車に乗り込んだ。御者がいつの間にか加わったアテナに面食らっていたが、事情を説明するとすぐに納得した。

「それじゃあ、おかしな奴も増えたが……暴走する竜退治に改めて出発するか!」

「おー!」

「はい!」

「ちょっと、おかしな奴って何よ!」

 草太の掛け声に、前よりも賑やかな答えが返ってくる。

 新たな彩りが加わり、草太達の旅路はまだまだ続くのであった。


おいやめろ。

ということでアテナが一行に加わりました。騒がしい彼女が物語にどんな刺激をもたらしてくれるのか楽しみです。


感想、誤字脱字がありましたら遠慮なく書き込んでください。


来週忙しくなりそうなのでもしかしたら投稿が遅れるかもしれません。何度も申し訳ありません。

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