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童貞男子高生の紡ぐ転生神話  作者: 大庭青葉
第3章 新たな旅の始まり
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第3話 一ヶ月後

リアルでゴタゴタしていて投稿が大幅に遅れてしまいました。申し訳ございませんでした。

 竜は、永い時を過ごしてきた。

 幾星霜の時の中で、竜は人と争い、人と親しくなった。


 今は暗い洞窟の中で、土と風と太陽の香りを楽しむ日々を送っている。

 そんな竜の元に、何百年ぶりの客人が訪れた。

「……誰だ」

 しゃがれた声で、竜は問うた。


「あなたに用がある者です」

 客人――人間の女は不敬な笑みを浮かべながら、そう答えた。

 その女は、血の匂いにまみれていて、そばに寄られるだけで不快な気になった。


「近いうちに、ここをある少年が通ります。黒装束に身を包んだ、黄金の剣を持つ少年です。あなたには、彼の相手をしてもらいたいのです」

 女は不躾に、そんなことをほざいた。

 竜は女を睨みつけ、強い語気で答える。


「――去れ。貴様の願いを聞くつもりは無い」

「あらあら……会ったばかりだと言うのに、随分と嫌われてしまったようですね」

 残念そうに女は語るが、その表情からは悲しみなど感じられなかった。


 竜はますますその女が気に食わなくなった。重い頭を上げ、口腔に炎を宿した。

「その鬱陶しい薄ら笑いを止めろ、小娘。さもなくば火あぶりにしてくれる」

「あら、怖い怖い。竜王様の炎を浴びたら、骨まで焼かれてしまいそうですわ」

 女は身を抱いて嬌声を上げる。気に食わない、ますます気に食わない。


「――ならばとくと味わうがよい!」

 竜は咢を開き、溜めた炎を吐き出そうとした。

「焼かれるのは困ります。――ですから、さっさと用を済ませましょう」

 その直前、竜の頭の横で、女の声がした。


「――なにっ」

「はい、こちらを差し上げます」

 戸惑う竜の首元に、硬いうろこを貫通して何かが差し込まれた。

 直後、竜の体が急激に重くなった。


「貴様、何を――!?」

「あなたの本当の姿を見せることが出来る、素晴らしいお薬ですよ。……さあ、精神の奥深くに落ちていきなさい。そして――殺すのです。ありとあらゆるすべてを。目に映るものすべてに殺戮を与えるのです」

「うっ……ゴ、ゴアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 竜の絶叫が、洞窟内に響き渡った。


 すでに、竜は自我を失いかけていた。頭にあるのは、殺したいという欲求のみ。

「コロス、コロス、コロスコロスコロスウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!! アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア――!」

「そう、その姿です! あなたはここで眠っているべきではない。大空を舞い、大地に炎をまき散らすのです! ――さあ! あなたの力を振るいなさい! この世界に、絶望として君臨しなさい!」

「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア――!!」


 竜は洞窟の天井を突き破り、大空へと飛び上がった。太陽が忌々しく照り付け、竜の鱗を熱くする。

「Aa――」

 炎を吐き出し、真下の地面を焼いた。その行為に意味は無い。ただ燃やしたかったから燃やした。

 竜の自我は、とっくに失われていた。


(黒装束で、黄金の剣を持った男を殺す)

 ただ、その言葉だけを覚えながら。



 ――頭上を舞う偉大なる竜王の姿に恍惚の表情を浮かべ、女は心の中で、遠い場所に居る少年へ笑いかけた。

「さあ、どうしますか……ソウタ?」


 揺らぐ炎の中、竜の叫び声だけが、あたりに響いていた。



 山奥で起こった事件の十日後。場所はフェリア王国の王都グローアルのから、一台の馬車が出発した。二頭の馬に引かれる普通の馬車だ。

 その馬車の荷台に座っているのは、三人の男女だ。

「フェリア王国の人には、本当にお世話になっちゃったね。馬車まで出してもらって……」

 そのうちの一人、日本から転生してきた魔法使いの花奈が遠くなっていく王都を眺めながら呟く。


「ええ。そのうち何かお礼をしたいですね」

 花奈の隣に座るエルフ、リフィアが頷く。

「……まあ、その代わり『ルージェン』を絶対に取り返さなきゃいけないんだけどな」

 そして、その二人の向かいに座るもう一人の転生者――草太が愛刀『リコシフォス』を磨きながら答えた。


 三人は、一か月の時間をフェリア王城で過ごし、またこうして旅に出た。

 目的は、奪われた王家の宝剣『ルージェン』を取り戻すことと、『ルージェン』を奪った謎の組織『黒の巨人』を倒すことだ。

 そのためにこの一か月間、三人は各々がやれることをやり、力を伸ばしてきた。

「大丈夫、今の私たちならできるよ!」

 故に、花奈が自信満々に宣言し、二人もそれに頷くことができる。


「そうだな……そのための一か月だったんだ」

 草太はそう呟いて、車窓から流れる景色を眺めた。


「……お客さんたち、本当にノルデーンに行くんですかい?」

 ふと、御者の男が浮かない表情で話しかけてきた。

「ええ。その予定です」

「止めといた方が良いんじゃないですかねぇ……フェリア王国とノルデーン王国の国境にある、ドラグ山ででは、竜王が暴れているって話ですぜ」

 御者はそう言いながら、遠くに見える岩山を指さした。が、花奈は何の気も無しに。


「知ってますよ。私達がその竜王を止めに行くんです」

「……えぇ!? た、たった三人でですかい!?」

 花奈の言葉に、御者が思わず馬車を止めて振り向いた。

「はい! あ、王家からの勅令状も出てるんですよ」

 花奈はそう言いながら一枚の羊皮紙を取り出した。御者はそれに目を通すと「はぁー」と驚愕の声を上げた。


「この印は確かにフェリア王家のものですなぁ。いやはや、こんなに若い方々が竜王を相手取るとは……」

「えへへ……」

 御者の言葉に、花奈は照れくさそうに頬をかいた。


 二週間ほど前から、ノルデーン王国領にある岩山で、一頭の竜が突如暴れだした。その竜は「竜王」と呼ばれ、ノルデーン王国民から祀られていた存在で、それ故にその事件はノルデーン国民にとってショックであった。

 理由はわからないが幸運なことに、竜王はそのままドラグ山にとどまっており、近隣の村などに被害などは出ていないという。しかし、ドラグ山はノルデーン王国とフェリア王国の交易路の上にあるため、このままでは物流が滞ってしまう。

 それを危惧したノルデーン国王は、フェリア王国のアベンテラー王に竜王を止めるよう依頼した。


「ノルデーン王国は、先の戦争で国力が衰えていましてね……それで、軍事力のあるフェリア王国に縋ったのでしょう」

 御者が岩山を眺めながら、そう語った。


 フェリア王国を出る際に、草太達がアベンテラーから命令されたのがその竜王を止めることだ。国民達から祀られている存在のため、殺してはいけないという厳しい条件が付いている。

『これくらいの事をやってくれなければ、ルージェン奪還の話を信じるわけには行かないな』

(無茶を言ってくれるぜ……)

 アベンテラーの意地悪な笑みを思い出し、草太は小さくため息をついた。


 その後しばらくの間、馬車は静かな林道を平穏に進み続けた。

「ん……?」

 と、御者の男が遠くの方を見て眉を顰める。

「どうしたんですか?」

「……いえ、道の真ん中に変な物が刺さってましてね……」

「「「変な物?」」」

 御者の言葉に三人は窓から顔を出した。


 馬車の進む方角に数十メートル先に、確かに何かが突き刺さっていた。

「うそ……草太くん、あれって……」

「……ああ」

 何かの正体に気付き、全員が表情を強張らせる。


 それは、地面に逆さのまま突き刺さった人間だった。まるでそこに最初から生えていたかのような、見事な刺さりっぷりだった。

 胸部までが地面に埋まり、腹から足までが真っ直ぐに天を向いている。体には、いわゆるビキニアーマー――要所要所に鎧を付けているが、全体的に肌色率が高い鎧――を身に着けていて、戦闘職であることがうかがえる。

 体の細さから、女性の様だ。

「……あ、あれ……あの人、死んでるの?」

「分からない。……声をかけてみるか。すいません、あそこまで馬車を動かしてもらえますか?」

「……は、はい」

 御者は得体のしれないものに怯えながらも、馬に鞭を打った。


 数メートルずつその逆さに突き刺さった者に近付いていく。

 そして、馬車とそれの距離が二十メートルを切った地点で。


「……! …………!」

 突如、突き刺さっていた者が足をバタバタと動かした。

「!!」

 得体のしれない動きに、草太が剣を握り、リフィアが弓を構え、花奈が魔法を唱える体勢に入った。


 突き刺さり人間は、ずっと足をバタつかせている。その光景は、何とも奇妙だった。

「……草太くん。あの人、口が地面に埋まってるから喋れないんじゃないの?」

「……なるほど。なら、喋れるように頭を出さないといけないな……花奈、【エクスプロージョン】を撃ってくれ」

「えぇ!? 【エクスプロージョン】なんて撃ったら、あの人大ケガしちゃうようよ?」


 草太の指示に、花奈が顔を強張らせる。だが、草太は涼しい顔で言い放った。

「地面に埋まったまま生きてる人間なんだ。爆発の一つや二つで死にはしないさ」

「う、う~ん……良いのかなぁ……」

 困り顔になりながらも、他にいい案が浮かばないのか、花奈は魔法を唱える準備に入った。


「おじさんは俺とリフィアの後ろに下がっていてください。何が出てくるかわからないので」

「は、はい」

 草太は御者と馬車を下がらせて、リフィアの隣に立った。

「相手が攻撃的な態度を示してきたら、足を潰してくれ」

「はい。任せてください」

 リフィアが頷いたのを確認して、草太は花奈に指示を飛ばした。


「花奈、頼む!」

「――【エクスプロージョン】!」

 草太の言葉に従い、花奈は無詠唱で中級炎系攻撃魔法の【エクスプロージョン】を唱えた。


 魔力が収束し、熱と風があたりに発生する。それらはやがて突き刺さり人間の周りに集まり、熱球となった。

「……? ……!?」

 熱と異変を感じ取ったのか、突き刺さり人間の足がおどおどし出した。


 だが、既に魔法は顕現している。

 次の瞬間、光と共に爆発が巻き起こった。


 突き刺さり人間の周りが一瞬で轟音と共に吹き飛び、その余波を受けて周りの木々が揺れる。

(花奈の魔法、確実に強くなってるな……)

 想定を超えた威力の魔法に、草太は少し冷や汗をかいた。実は、一ヶ月の修行を終えてから花奈の魔法をまともに見るのは初めてだったのだ。


「……ソウタ、何か聞こえませんか?」

「ん? ……確かに」

 リフィアの言葉に、草太は耳を澄ませた。


「……ぁ」

 それは誰かの声。吹き飛ばされた上空から響いてくる。

「……!」

 バッと上を見上げると、丁度草太の真上に一人の少女が見えた。


 全身を白銀のビキニアーマーで包み、頭には黒髪のツインテール。

 その少女の姿は、草太と花奈が良く知るものであった。

「……ぁあああああああああああああああああああああ!! ふっざけんじゃないわよおおおおおおおおおおおおおおおお!! どうして私がこんな目にいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」

 少女は涙目で恨み言を叫びながら、真っ逆さまに草太の元に落ちてくる。


 その体、顔つきが鮮明になり、花奈と草太は同時に声を上げた。

「あ……」

「アテナあああああああああああ!? ――ひでぶっ」

 ――そして、少女の華奢な体は、草太の顔面へと激突したのであった。







読んでいただき、ありがとうございます!

感想、誤字脱字報告を頂けると嬉しいです。

また、2章の最後にちょっとした幕間を入れたので、まだ読んでいない方はぜひ読んでください。

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