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童貞男子高生の紡ぐ転生神話  作者: 大庭青葉
第2章 異世界探索・初級
28/90

第9話 花奈の記憶、二人の出会い

遅くなりました!

すいません!

 その日、森園花奈はピンチに陥っていた。

 見知らぬ街をあてもなく彷徨い、たまに立ち止まってはキョロキョロと辺りを見回して、そして悲しそうに息をつく。


 彼女はよくこう言った状況に陥る。

 行くべき道を見失い、放浪する旅人の様に街中を歩き続ける――


「道がわからない……」


 そう、迷子である。


「うう……なんで学校までの地図を忘れちゃったんだろう……」

 今日は高校の入学式だ。期待に胸を膨らませて出てみたものの、彼女にとって一番忘れてはいけないものを忘れてしまった。


「お母さんに着いてきてもらった方が良かったかな……」

 高校生らしからぬ子供みたいなことを呟くが、それほど必死なのだ。


 なお、彼女はスマホを持っているが、パニックになっていて地図アプリ等を使うと言う選択肢は抜け落ちている。


「……と、とりあえず一回最寄りの駅に出よう……多分こっちだよ、ね……」

 そう言って花奈は本来の駅への道の真逆の方向に進み始めた。


「あぁ〜どうしよう……時間はまだ余裕があるけど、いつになったら着けるのかな……」

 登校時間が迫っている焦りと、見知らぬ土地での不安が、花奈の心をきゅっと締め付ける。


 だが、とにかく今は歩かなければ。

 迷いのない足取りで、花奈は住宅街を進む。

 次第に家の並びが変わっていき、現代風の住宅の代わりに和風の家が増えてきた。


(こんな所があったんだ……)

 自分が迷っている現状を忘れ、花奈は周りの風景に目を輝かせた。

 鉄筋コンクリートのマンションに囲まれた、灰色の世界に住んでいる彼女にとって、ここはまるで異世界のようだった。


 そして、更に驚きの光景が彼女の目の前に現れる。

「わぁ……!」

 そこは整備された河川敷であった。

 幅の広い川が眼下を流れ、美しい色彩を放っている。


 そして花奈の目の前には、大きな桜の木があった。

 丁度満開の時期を迎えたのか、桜は大量の花を咲かせた枝を風に揺らしながら、悠々とそこに立っていた。

 桃色の花びらと青空とのコントラストがただただ美しく、花奈は時を忘れその桜に見入っていた。


「――はっ! こ、こんなことしている場合じゃなかった! ここはどこなの!?」

 だがやがて我に帰り、自身の現状を思い出す。

 時刻を確認すると、入学式まで残り二十分程しかない。

(終わった――)

 広い河川敷で、花奈はがくりと肩を落とした。


「……あの、これ落としたぞ」

 そんな彼女の耳に、男の声が聞こえた。

 ばっと顔を上げると、いつの間にか花奈の隣には自分と同じ学校の制服を着た青年が立っていた。


 日本人らしい黒髪黒眼で、その瞳は切れ長で冷たい印象を抱かせる。

 そして、言葉にはできない寂しさが彼からは感じられた。


「えっと……あ、それ私の生徒手帳!」

 思わずまじまじと青年を観察してしまい、花奈は慌てて目を逸らした。と、そこで彼が自分の生徒手帳を持っていることに気付く。


「足元に落ちてたぞ。……ていうか、なんでこんな所にいるんだ? 高校は真反対の場所だろ?」

 青年はそう言いながら、花奈に生徒手帳を返した。

 青年の言葉に、花奈はばつが悪くなり身を縮こまらせる。


「あの……迷っちゃって……」

「……まじか」

「…………まじです」

「……スマホのアプリとか使えよ……」

「あっ」

「思いつかなかったわけですね分かります」

「ち、ちが――わないけど!」

 花奈が慌てると、青年は「はいはい」と言ってすたすたと歩き出した。


「ほら、行こうぜ」

「えっ……ま、待って!」

 慌てて追いつくと、青年は些か不服そうに口を開いた。



「まあ、道案内くらいならしてやるよ。こっからなら学校まで十五分だし。ぎりぎり間に合うだろ」

 ぶっきらぼうな彼の言葉に、しかし花奈は救いの手だと内心で大いに喜んだ。



「……あ、ありがとう! ……あっ、私『森園花奈』って言います。一年の……」

「あー、うん。森園さんね」

「……それで、君の名前は?」

「……別に、覚えなくていいよ。どうせ君と俺は接点とか無いだろうし」

「そんなことないよ! だって今こうして話をしているんだし!」

 花奈が意気込むと、青年は心底億劫そうに頭を掻いた。



「……『草壁草太』。それが俺の名前」

「草壁くんか……うん、覚えたよ!」

「覚えなくてもいいんだけどな」

「私、暗記力には自信があるから!」

「そうですか……」

 花奈の高テンションに、彼はため息をついた。



 いざ歩いてみると、青年は迷いの無い足取りですたすたと進んでいく。

 だが一応花奈の歩行速度に合わせてはくれているようで、花奈は苦労することなく草太へとついていく。



「あ、あの! 草壁くんはどこの中学出身なの?」

「川向こうの中学だよ」

「そうなんだ。私は駅の向こうの方なんだ。……ねえねえ、草壁くんはどうしてここの高校にしたの?」

「家から近かったからだよ」

「そ、そうなんだ……あ! 今日のことでお礼がしたいんだけど、草壁くんは何が好……」

「お礼はいらない」

「は、はい……」



 花奈はなんとか会話を弾ませようとするが、青年の平坦かつ無味無臭な受け答えがそれを許さない。


 次第に会話の種も底をつき、二人とも黙ってしまった。

(せ、せっかく助けてくれたのに……何か出来ないのかな……)

 人物像を詳しく知りたいのに、青年は意図的にそれをさせないようにしている気がした。

 彼は、花奈の今までの人生で出会ったことのない人種だった。



 故に、どうすればいいのかも分からない。

(うぅ〜! 草壁くんへの接し方が分からないよ……)

 頭を抱える花奈を知ってか知らずか、草太は黙って歩き続けたのだった。



「……着いたぞ」

(結局……何も話せないまま学校に着いちゃった……)

 目的地である高校につき、花奈は疲れきった顔でため息をついた。

 当初の目的は果たせたものの、その後にできた目的は達成出来ていない。



(でも同じ学校で同じ学年なんだし、きっとこれからも関わりはあるよね……!)

 花奈がそんなことを考えて顔を輝かせていると。



「あ、もう俺には話しかけるなよ。ていうか話しかけてきても無視するから、話そうとしても無駄だからな」

「そんなぁ!」

 青年の口から、残酷な言葉が放たれたのであった。



 それからしばらく月日が流れ、花奈と彼との繋がりはほとんど消え去っていた。

 青年とはクラスも違ったし、花奈自身が男子とそんなに話す人間ではなかった。

 話しかけようと思ったこともあったが、入学式の日に言われた言葉が花奈を躊躇わせた。



 だが、青年の噂は女子達から聞こえてきてもいた。

 人並みの身長と、どこか不思議な雰囲気が乙女達の心を射抜いたらしい。

 女子生徒達が彼の話をするたびに、花奈は自分の心を持て余しながらヤキモキするのであった。



 そんな花奈も、異性からの人気を集めていた。


「森園さん、俺と付き合ってください!」

「……えっと、ごめんなさい……」


 人気のない校舎裏で、花奈は自分に頭を下げる男子生徒を見て困ったように首を振った。


「そ、そうか……」

 告白を断られた男子生徒は、落胆したように呟き、とぼとぼと校舎へと帰っていった。

 もう何度も見た光景だが、未だに慣れることは無い。



 中学生に入った頃から、花奈は男子から告白されることが多くなった。だが良くも悪くも真面目な彼女は、「お付き合いは好きな人同士で」という信念を持っていた。

 同時に、花奈は誰かを好きになったことがない。


 そのため、彼女は誰かと恋仲になったことは無い。

 そして、高校生に入る頃にはそのような関係への憧れも冷めてきていた。



 だが、他の少女達が花奈と同じであるとは限らない。

 惚れた腫れたの話は、花奈の意志とは関係なく、人々の心を揺らすのであるのだから。




「森園サンさぁ、最近ちょーし乗ってない?」

 秋も深まり、風が肌寒い頃。

 黄色く染まった銀杏の木々に囲まれながら、花奈は数名の女子生徒達に睨まれていた。



 事の発端は、夏休み明けに花奈が一人の男子生徒を振った事だった。

 その男子生徒の元カノが今花奈の目の前に立っている人物であり、男子生徒が花奈と付き合うために彼女と別れたという噂が流れている。



「そんなこと、言われても……」

 花奈は、名前も知らない女子生徒に対して、小さな声でそう言った。

 彼女達の話は花奈には関係の無いことだ。むしろこちらが巻き込まれた被害者だとも言える。



 だが彼女は、彼女のお仲間達はそんなことは思っていない。

「乗ってるでしょ。男(はべ)らせて、いい気になって。純情ぶってほんとは裏でヤリまくりなんでしょ?」

 悪意に満ち満ちた言葉が、花奈の鼓膜を叩く。謂れのない罵倒に、花奈の心が折れそうになる。



 自分は何も悪く無いのに。どうしてこんな事を言われなければいけないのだろう。

 諦観しながら、花奈は小さく縮こまる。


 彼女達を動かしているのは嫉妬だ。燃え上がる火のように激しい嫉妬が、この少女達を動かしている。



 その炎に自分が巻き込まれる所以など、どこにも無かったはずだ。

 自分はただ、高校生活を楽しみたかっただけだと言うのに。ただ、あの日に出会った青年のことをふと考えるだけで良かったというのに。



 けれど、過去を嘆いても現状は何も変わらない。

 花奈はただ、彼女達の気が収まるまで従順な子犬になるしかないのだ。



 全てを諦め、花奈は顔を伏せた。

 自分を助けてくれる人など居ないのだから。

 この状況に否を唱えてくれる人など居ないのだから。


 だから。


「――お前ら、いい加減にうるせえよ」


 ――だから。

 その声を聞いた時。


 運命だと、思ったのだ。


 人気の無かった校舎裏には、いつの間にか一人の少年が立っていた。

 あの日、桜の木の下で見た、周りに壁を作った様な瞳で。


 ――草壁草太が、そこに立っていた。



「はぁ? いきなり来て何いってんの?」

 花奈を糾弾していた女子は、草太を見るなり威嚇するように舌打ちをした。

 だが、草太は微動だにせず。

「だから、うるさいんだよ。お前らの声がうるさ過ぎて、俺がここで飯を食えない。やるなら他のどこかに行け」



 突き放す様にそう言った。

「なっ……! なにそれ、むかつく……!」

「知るかよ」

 草太は舌打ちをして、どっかりと錆びれたベンチに腰を下ろした。

 そして、もしゃもしゃとサンドイッチを食べ始めた。

「む、無視すんなよ!」



 遂に怒りのゲージが突破した女子が、草太にツカツカと近寄った。

 と、草太は食べかけのサンドイッチから口を離し。



「……それと、お前ら臭いんだよ。鼻が曲がりそうだ。だから、俺に近づくな。気持ち悪いんだよ」



 絶句。

 絶句である。あまりの暴言に、草太以外の少女達は全員言葉を失った。

 助けられているはずの花奈でさえ、「さすがにそれは酷いんじゃないかな……」と思ってしまった。



「なっ……なっ……!」

 一番間近で暴言を吐かれた少女は、肩をぷるぷると震わせて、次第にその瞳には涙が溜まっていく。


「い、行こ……」

 震える声で、彼女はその場を立ち去った。仲間達も戸惑いながら、彼女の後を追う。

 去り際に、「サイテー」「女の敵」みたいなことを草太に言っていた。



 一番騒がしかった彼女達が去り、銀杏に囲まれた校舎裏はいつもの静寂に包まれた。

 残されたのは、花奈と草太の二人だけだ。


 花奈はぽかん、と再び食事を始めた草太を眺めていた。

「……あ、ありがとう……」

 だがこれだけは言わなければと、ひとまずお礼を口にする。



 草太はサンドイッチを飲み込むと、面倒くさそうに頭をかいた。

「お礼を言われる様なことはしてない。邪魔だっただけだ」

 ぶっきらぼうにそう言う草太は、しかし先程までの剣呑な雰囲気ではなく、少しだけ静かで柔らかい表情だった。



 そんな彼を見て、花奈は少し大胆な事を聞いてみる。

「で、でも、どうして草壁くんがここに? も、もしかして私を――」

「ここから見える銀杏が綺麗なんだよ」

 一抹の期待を抱いた花奈の言葉はバッサリと切り伏せられた。



「そ、そうなんだーあははー」

 白々しく花奈は作り笑いを浮かべる。ほんの少しの乙女心が呆気なく砕け散ってしまった姿は、いっそ哀れであった。



「……でも、本当にありがとう。……その、怖かったから……」

「……まあ、確かにああいう輩は厄介だからな」

 花奈の言葉に、草太は身に覚えがあるのか同調するように頷いた。



 自分の言葉に頷いてくれたことが嬉しくて、花奈は更に会話を続けようと言葉を繋ごうとした。

「……で、でも! 女の子に臭いって言うのは流石に可哀想だよ?」

「なんで?」

 だが、それは地雷だったらしい。



 草太は「お前は何を言っているのか」という目で花奈を見る。

 その瞳は残酷な程に真っ直ぐで、花奈に「逃げ」を許さない。



「だ、だって……(にお)いとかって、女の子が一番気にする所でもあるし……」

「……別に、あいつらの体が臭いって言った訳じゃないけどな」

「え?」

 草太が予想外の言葉を返した。花奈は思わず草太の顔を見つめた。



「俺が言ってんのは、香水の事だよ。あいつらこれでもかってくらいに塗りたくりやがって……嫌いなんだよ、香水がきつい女って」

 吐き捨てるように草太は言った。



「そ、そうなんだ……」

 花奈はそこまで酷く感じなかったが、男子と女子では感じ方が違うのかも知れないと割り切ることにした。



「……あ、じゃ、じゃあ私は大丈夫? 臭くない? 香水とかは付けないんだけど」

「……なんでそんなことを俺に聞くんだよ……」

「あ、だ、だよね! ご、ごめん!」

 変なことを聞いてしまったことを自覚し、花奈は途端に赤面した。



 草太は呆れ顔になりながら、新しいサンドイッチを食べ始める。

「……そ、そう言えば草壁くんって植物を見るのが好きなの?」

 話を変えようと、花奈は銀杏を指して尋ねた。



「あー、まあな」

「へー、珍しいね」

「別に。じい……祖父がガーデニングとか好きな人だったからだよ。俺も自然に覚えたんだ」

「そうなんだ。……あれ? 草壁くんって……」

「それよりも森園さん、昼飯は食べたのか?」

 ふと感じた疑問を口にしようとした所、草太が花奈に向かって尋ねた。



「……あっ。それどころじゃなくて忘れてた……」

「もうすぐで昼休みも終わるし、早く戻った方が良いと思うぞ」

「そ、そうだね! ありがとう草壁くん!」

 はぐらかされた気がしないでもなかったが、昼ごはんが食べられなくなるのも困るので、教室に戻ることにした。



「……あれ? そう言えば、初めて名前を呼ばれた気が……」

 校舎裏を後にして、花奈は自分がとんでもない好機を逃したことを気付いたのであった。




 それから、花奈の草太への思いはますます強くなった。

 疑いは確信に変わり、「気になる相手」は「好きな人」へと変わった。


 空いた時間に彼の居る教室に行ったり、例の校舎裏に顔を出しに行ったりした。

 だが、その殆どが不発に終わり、結局一年生の間は草太と距離を縮めることは出来なかった。



 だが、次の年に花奈は再び幸運に見舞われる。

 同じクラスに、草壁草太の名前があったのだ。

 これは更に親しくなるチャンス! と当初は花奈も喜んだ。



 だが生来の臆病が出てしまい、特に話しかけることも出来ず。

 少しずつ少しずつ時間は過ぎていった。



 そんなある日の事だ。

 花奈は自分の通学路に草太が居るのを見つけた。

 本来草太は花奈とは真反対の所に住んでいるので、このような事態は初めてだった。



 そして、それは花奈にとって最大の好機に感じられた。

 「話しかけたい」という欲望と共に、いつもの様に不安が頭の中を支配する。

 草壁草太という人間が、自分のことをどう思っているかは分からない。

 だから、動き出すのが怖い。



 だが、それでも。

 今ここで動かなければ、きっといつまでも花奈は草太に近づくことが出来ない。



 花奈は遂に心を決め、少し駆け足になり、自分の前を歩く青年に近付いた。


 ――そして、ほんの少し上ずった声で、呼びかけるのであった。


「く、草壁くんっ!」




「――とまあ、こんな感じかな。……面白くなかったでしょ」

 一連の話を終えて、花奈は照れたように紅茶を啜った。

 リフィアに分からない言葉は頑張って言い換えたりしたが、それでも肝心の内容にピンと来てないだろう。



 事実、リフィアはぽかんとした瞳で花奈を凝視している。

「ま、まあ気持ちは分かるよ。惚れっぽい女だなーって自分でも思うし……」

「……いえ、そうではなくてですね」

「……? じゃあ、なんなの?」

「ハナがとても可愛い人だと思いまして」

「っ!? げほっ、けほけほ!」

 唐突な発言に花奈がむせる。



「だ、大丈夫ですか!?」

 リフィアがタオルを手渡し、花奈は咳き込みながら口周りを拭いた。

「けほっ……もう、いきなりなんてことを言うの……」

「いえ、私はハナを美しい人だと思っていたのですが、可愛らしさも兼ね備えているのに驚きました。これはもう、最強の乙女ではないでしょうか」

「ほ、褒めすぎだよ……」

 真顔で言ってるので、どうやら本気のようだ。



 なんだかなーと思いつつ、花奈は頬をかいた。

「と、とりあえず私の話はこれでおしまい。良い時間だし、そろそろ帰ろ?」

「そうですね。ロゼッタさん達も待っているでしょうし」

「うん!」

 そう言って二人は仲良く宿へと向かい歩き出した。



 夕日が彼女達を照らし、世界が幻想的に染まる。

 赤い日を見ながら、リフィアは口を開いた。

「――ハナ」

「ん? どうしたの?」

「…私は、ハナのことを応援します。必ず、ハナがソウタと結ばれるように」

「――」



 リフィアの瞳は真っ直ぐで、どこまでも真剣で。

 その言葉に、花奈は否応なく勇気付けられる。

 それと同時に、一つの不安も生まれる。



 ――いつの日にか、リフィアは草太のことを好きになるのではないのだろうか?



 それは根拠の無い不安だ。しかし、花奈はそれを有り得ないと決めつけることが出来なかった。


 もしこの友達が草太を好きになったら、自分は一体どうするのだろう。

 彼女の様に、迷いのない瞳で背中を押せるだろうか。


 もしかしたら、修復できない迄に関係が壊れてしまうかもしれない。


 想像してしまった最悪の未来を、花奈はぶるぶると首を振って振り払った。


 ――そうだ、今はただ。

 ――この心優しい友人の言葉に、心から感謝をしよう。


「――うん! ありがとう、リフィア!」


 互いに笑顔になりながら、二人は夕日を背に歩いていくのであった。

読んで頂きありがとうございます!

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