第3話 アーシェの忠告
「――で、どうして俺達は密林をさまよっているんだ?」
サクサクと足元の落ち葉を踏みしめながら、草太が不満そうに呟いた。
「ギルドで『ヨギモ草』という薬草の採取を依頼されて、スードの西にある密森に来たんですよね」
「んで、達成基準の数のヨギモ草を取れたから、スードに帰ることにしたんだよな」
「そうしたらハナが道を覚えていると言うから……」
草太とリフィアはそこまで言って、互いに顔を見合わせた。……そして、二人の後ろをとぼとぼと歩く花奈を見る。
花奈はがっくりと肩を落として、消え入るような声で「ごめんなさい……」と呟いた。
要するに、三人は現在絶賛迷子の状態なのだ。はあぁぁぁ……と草太が大きなため息をついた。
「そういえば花奈はそうだったな……」
「まさか方向音痴だとは思いませんでした」
「うう……あってると思ったんだもん……」
「方向音痴な奴って、なんでそんなに自分の記憶を信じられるんだろうな」
「……ごめんなさいぃ……」
言い訳を募ろうとする花奈を、草太がズバッと切り捨てる。
「ま、まあまあ……とにかくどうしましょうか。狼煙でも上げて人が来るのを待ちますか?」
「うーん……日も暮れてきそうだし……運よく近くを人が通るかな……」
「……あっ」
「…………今度は何を言い出すつもりですか、花奈さん?」
「そんな疑い切った目で見ないいでよ! ……あの、キットを呼べば良いんじゃないかなーって」
花奈の意見に、草太はふむ……と少し考える。
「確かに、キットならなんとかしてくれそうだな。ナイスアイディアだ花奈」
「これでさっきのアレは無しになりますか……?」
「えぇーどうしようかなー?」
「草太くんのいじわる!!」
「あっはっは、冗談だよ、冗談。はいはい、これでチャラな」
「やったー」
花奈が珍しく子供みたいに万歳をする。それほど心に来ていたのだろうか。
「それじゃあ、召喚陣を描くとするかな。魔物が襲ってきたらまずいし、二人は周りを見張っていてくれ」
「はい」
「うん」
花奈とリフィアが離れるのを待って、草太は地面に召喚のための魔方陣を描き始めた。
(落ち葉が邪魔で、いつもみたいに描けないな……これは時間かかりそうだ……いっそのこと周りの落ち葉を風魔法で一掃しちゃうか……?)
草太がそんなことを思っていると、不意にリフィアが鋭い声を上げた。
「ソウタ、何か来ます!」
リフィアの方を向くと、確かに前方で砂煙とともに落ち葉が舞い上がっている。かなりの勢いで何かがこっちに向かってきているのだ。
「正体は!?」
「少し待ってください……あれは、馬車……?」
リフィアは目を細め、怪訝そうに呟いた。
「馬車だって? なんでこんな道のないところを……?」
「……っ! 草太くん! あの馬車、魔物に追われてる!」
「「!!」」
別の方向から見ていた花奈の声に、草太とリフィアははっと息をのんだ。
「二人とも、武器を構えろ! 前衛は俺が担当する。花奈は馬車に乗っている人達を保護、リフィアは後方支援を頼む!」
「わかった、安全が確認できたらすぐに私も加わるね」
「ソウタ、安心して背中を預けてください」
「頼もしすぎだ、最高かよ」
力強く頷く二人に、草太は思わず笑みを零した。
そうこうしている内に、いよいよ完全に全貌が掴めるほどに馬車が迫ってきた。
豪奢な飾りはないが、中々に大きな馬車だ。もしかしたら、それなりに地位のある商人が乗っているのかもしれない。
(助けたらそれなりに報酬がもらえるんじゃないか?)
草太がそんなゲスなことを考えていると、いよいよ馬車が近付いてきた。
馬車の御者台に乗った青年が草太達を見て、青ざめた顔でぎょっと目を見開く
「お困りでしたら、手を貸しますよー!」
草太が御者の青年に向かって声を上げると、青年は間髪を入れずに答えを返した。
「お願いします! 『大黒蜘蛛』の群れに追われているんです!」
「……なるほど、蜘蛛ねぇ……」
青年の答えに、草太がはさらに馬車の後方を見やった。
土煙と落ち葉を上げながら馬車に追随するのは、無数の蜘蛛の群れだ。真っ黒な全身の先に、赤い眼が不気味に輝く。
『大黒蜘蛛』は西の密林に生息する虫系の魔物の一種だ。体長は約一メートルほどで、鋭い牙には人を簡単に麻痺させられる神経毒が含まれている。
その素早さもあってなかなか厄介な魔物だ。
「あの数を全部まともに相手するのは悪手だよな……」
蜘蛛の数は五十を優に超える。剣で切り伏せていては埒が明かない。
(馬車と蜘蛛の距離は十メートル……いける!)
「【呼ぶは土・妨げる壁・アースウォール】」
高速で呪文を詠唱し、馬車と蜘蛛達の間に土壁を生み出した。蜘蛛達は突如現れた壁に一瞬動きを止め、しばらくしてよじ登ったり迂回し始めた。
「今の内だ。【呼ぶは炎・灼熱の燃焼・イグニッション】」
草太はほくそ笑んで、もたついている蜘蛛達に向けて中級炎系魔法を放った。
「「「「「「キシャアアアアアアアアアアアアアアアア!!」」」」」」
不協和音を上げながら、蜘蛛達が次々に灰となる。なんともまあ残酷な行為だが、これも必要な犠牲だ。
だが、燃やし漏らしたり炎を躱したりした蜘蛛も勿論いる。
「っ!?」
炎の陰から、白い何かが草太の腕に絡みついた。
糸だ。蜘蛛の吐き出した糸が、草太の腕に巻きついている。
「っ! めんどくせえ……!」
草太は舌打ちをして、絡まった糸を解こうとする。だが、その間にも蜘蛛達が草太を狙って迫ってくる。
その時。
「【烈風弓】!」
リフィアの放った矢が、草太に絡みついている糸を引き裂いた。
さらに続けて、草太に近付いていた蜘蛛達を矢の雨が撃ち抜いていく。
「ソウタ、無事ですか!?」
「ああ、ありがとうリフィア!」
木の上から狙撃したリフィアに、草太はオーケーのサインを返した。
残る蜘蛛達はあと僅か。草太はリコシフォスを引き抜き、体の前に構えた。
「相手が悪かったな」
ニッと不敵に笑い、草太は残りの蜘蛛達に向かって走り出した。
やがて、草太達の周りに無数の蜘蛛達の残骸が生まれ、密林での戦いは幕を閉じた。
「なんとかなってよかったな」
「ええ、ソウタの力があったからこそですよ」
「いやいや、リフィアの援護があったからだよ」
草太とリフィアは互いに相手を褒めあいながら、先程の馬車の元へ向かう。
「草太くん、リフィア!」
近付いて来た二人を見つけた花奈が、ぶんぶんと手を振った。
「こっちは終わったよ。馬車の人達は無事か?」
手を振り返し、草太は花奈に尋ねた。
「うん。何人か毒をもらってたけど、魔法で全員治しておいたよ」
「ありがとう花奈。話せる人はいるか?」
草太が聞くと、まるでその質問を待っていたかのように、馬車の中から二人の男が現れた。
一人は頭が少し禿げた、恰幅のいい男。そしてもう一人は、その男に連れ添うように並ぶ、鍛えられた肉体と短い銀髪を持つ壮年の男だ。
「君達が、『大黒蜘蛛』を退治してくれた冒険者かい? そこの魔法使いのお嬢さんの仲間だね?」
「ああ、はい。俺は草太って言います。魔法使いの子が花奈、そんでこっちの弓使いがリフィアです」
「なるほど、ソウタ、ハナ、リフィアか。うん、覚えたぞ。……自己紹介が遅れてすまない。私はペリオス・ケーニヒ。『ペリオス商会』の会長を務めている。そしてこっちの男はフンド。私の商会が雇っている傭兵部隊の隊長だ」
恰幅のいい男――ペリオスは低めの声でそう言った。フンドと呼ばれた男も、ペリオスが目配せをすると小さく会釈をした。
「ペリオスさんと、フンドさんですね。よろしくお願いします」
「ああ、よろしく。……早速だが、この度の援助、心から感謝する。君達が居なければ、私達は今こうして生きてはいなかったかもしれない」
「俺からも、ありがとう」
そう言って、ペリオスとフンドは頭を下げた。三人は照れてお互いに顔を見合わせる。
「どうして、あんなに大勢の蜘蛛達に襲われていたんですか?」
「私達はとある行商の帰りなのだが、その時うっかり道を間違えてしまってね。森をさまよっていたら蜘蛛達の巣に突っ込んでしまったんだ」
「なるほど。……ていうか、蜘蛛が群れを作るんですか? 俺が知ってる蜘蛛とは違うんですけど……」
「ああ、君達が相手をした蜘蛛達は一つの家族だよ」
「「「家族ぅ!?」」」
ぺリオスの言葉に、三人は揃って驚きの声を上げた。
「あの蜘蛛は、繁殖期に大量の子を産んで成長したらそれぞれ旅立っていくんだよ。たびたび大量発生するから、よくギルドでも討伐依頼が出ているはずだ」
「へ―そうなんですか……で、今が丁度繁殖期だったと」
「そういうことだ」
たははーとペリオスが苦笑いする。
「……私が油断して毒を受けてしまってね。隊のみんなには迷惑をかけてしまった」
「いえ、会長を守れなかったのは我々の責任です。申し訳ございません」
そこでようやくフンドが口を開いた。戦士に相応しい、低く重い声だ。
頭を下げるフンドに、ペリオスは小さく首を振った。
「いや、ソウタ達に会うまで逃げられたのは君達の迅速な対応のおかげだ。感謝しているよ。これからも頼む」
「……光栄の極みです」
どうやら彼等の信頼関係はかなり強い物らしい。
「なんかいいね、ああいうの」
ペリオスとフンドを眺め、花奈が小さく呟いた。
「ああ、長い時間をかけて築き上げた物なんだろうな」
「…………わ、私達も、いつか、あんな風に…………」
「花奈?」
「な、なんでもない!」
小声で何やら呟く花奈に草太が聞き返すが、花奈は慌ててブンブンと首を振った。
「? ……まあなんにせよ、皆さんが無事でよかったです」
「ああ、本当にありがとう。君達が居てくれて助かったよ。良かったら、スードまで送っていくよ」
「助かります。実は道に迷ってしまってたんです」
「はっはっは! 結構結構! 助け合ってこその商人だ! おーい、三人分の場所を開けてくれ! スードに帰るぞ!」
ペリオスは愉快そうに笑い、楽しそうにそう言うのであった。
帰りの馬車で色々な質問をされながら(主に三人の関係とか三人の強さとか)、草太達は無事にスードに戻って来た。西の空には夕日が輝き、石造りの外壁を赤く染め上げている。
南の大通りの端に下ろされた草太達に、ペリオスは笑顔で告げた。
「私達はしばらくこの街に滞在するつもりだ。何か困ったことが有ったら遠慮なく尋ねて来てくれ。出来るだけ力になろう」
「はい、その時はよろしくお願いします」
草太達も頭を下げて笑顔で答えた。
馬車の中での会話でわかったことだが、ペリオスはなかなかの人格者であった。己の身一つで商会を立ち上げ、絶え間ない努力の末に商会をフェリア王国でも最大手にのし上げたのだという。
この話をしたのは彼の部下や傭兵隊の面々だったのだが、誰もが皆自らの主の功績を誇らしげに語っていた。部下からも信頼される良い上司なのだ。
「それじゃあ、君達の冒険が良いものになることを願っているよ!」
ぺリオスはそう言い残し、馬車と共に去って行った。それに手を振り、草太達はギルドに向かった。
依頼されていた『ヨギモ草』の採取依頼の報酬を受け取りに行くためだ。
喧騒に包まれた酒場を抜け、受付へと向かう。
「すいません、依頼を受けた『ヨギモ草』を採ってきました」
「ああ、はい。ご苦労様でした。報酬を用意するので少々お待ちくださいね」
受付に座っていた女性はそう言って裏でごそごそとし始めた。
「……二人は今の内に汗を流して来たらどうだ? 結構歩いたしさっぱりしたいだろ」
「え、いいの?」
「ああ、別に金を受け取るのくらい苦じゃないしな。遠慮なくどーぞ」
「では、お言葉に甘えるとします。花奈、行きましょう」
「うん、ありがとう草太くん」
ギルドの近くにある大衆浴場に向かう二人の背中を眺め、草太はほうっと息をついた。
「お待たせしましたー。報酬の銅貨三十枚です」
「はい、ありがとうございます」
受付からもらった銅貨を、【ウェアハウス】にしまう。
「ああ、そう言えば西の密林で『大黒蜘蛛』が生まれ始めているみたいですよ」
「本当ですか?」
「はい、さっき退治してきました。……ああ、これが討伐証明の蜘蛛の眼です」
草太は再び【ウェアハウス】を開き、無数の赤い眼を受付の台に置いた。
「……おお、確かにこれは『大黒蜘蛛』の眼ですね。……わかりました、掲示板に載せておきます。それと、情報提供料と眼の買い取り料を追加でお渡ししますね。少々お待ちください」
「本当ですか、ありがとうございます」
草太は再び受付の前に立って待つことになった。
と、受付が怪訝そうな顔で草太に尋ねる。
「……あれ? すいません、ソウタ……さんは今日冒険者になったばかりなんですか?」
「はい、そうですね」
「それで、『大黒蜘蛛』の大群を倒したと?」
「まあ、仲間に助けてもらいながらですけど」
「……なるほど」
ポカーンと間抜けな顔をする女性に、草太は首を捻った。
「あの、なにか有りましたか?」
「ああ、いえ。本来『大黒蜘蛛』は『黄』の冒険者の人が相手をするような魔物なんですよ。……もしかして、戦闘経験がおありですか?」
「えーと、まあ一応」
「そうだったんですか。それでは、冒険者の位を黒から緑に上げておきますね」
「え、良いんですか?」
「はい、この数の『大黒蜘蛛』を倒せるのならば問題は無いでしょう。実績が足りないので『黄』にすることはできませんが」
突然の提案に呆然としている草太を尻目に、受付嬢は草太の冒険者の証を持ってまたなにやらごそごそとやり始めた。
「はい、どうぞ! 今後の活躍を期待しています!」
次に返された時、証の左下の点は黒から緑に変わっていた。
「あ、ありがとうございます……そうだ、仲間の証も更新してもらっても良いですか? あとでここに来るように伝えるので」
「はい、かしこまりました」
受付の女性の返事を聞いて、草太はその場から離れた。
酒場の比較的静かな場所に腰を下ろし、草太は自分の証を眺めた。
(なんというか、出会う人達がみんな良い人ばかりだな。俺は運が良いらしい)
ロゼッタやペリオス、それに先ほどの受付の女性を思い出しながら、草太はそんなことを考えた。
「相席、失礼するよ」
(……まあ、どうしても合いそうにない奴も居るけどな)
声をかけて来た人物を悟り、草太は顔をしかめた。
そこに居たのは白髪の青年、アーシェだった。草太の向かいに腰を下ろした彼は、酒場には相応しくない紅茶を優雅に飲んでいた。
「……他にも空いている席があっただろう」
「ここは僕のお気に入りの席なんだ。別に良いだろう」
「そうかよ」
アーシェとはつい午前に衝突しかけたのだ。自然と、草太は身構えることになる。
が、当のアーシェはただ紅茶を啜るだけで、特に何かをしようとしている気配は無い。
(ほんと、なんなんだこいつ……)
草太は目を眇めて、アーシェを睨んだ。
「ああ、そうそう。君に言いたい事があったんだ」
「はあ? なんだよそれ?」
不意に口を開いたアーシェの言葉に、草太は不機嫌そうに答えた。
「君の戦い方は、酷くお粗末だ。このままではいずれ死ぬよ」
「っ……!」
だが、アーシェの予想外の言葉に、思わず息を飲む。
「どういう事だ」
「言葉の通りだよ。君の戦い方は誉められたものではない。あれでは雑魚に勝てても真の強者には勝てない」
「……見ていたのか、密林での戦いを」
「まあね。僕はたまたまそっちで依頼を受けていたから、偶然に過ぎないけど」
なおも平然と紅茶を啜るアーシェに、草太はいよいよ警戒心と少しの怒りを露わにする。
「……俺にそれを言って、お前に何か利益は有るのか?」
「損得でしか物事を考えられないのかい? 悲しい奴だな、君は」
「……お前は面倒臭い奴だな」
「自覚しているよ」
売り言葉に買い言葉な会話が続く。周りにいた冒険者達も二人の様子に気付き、なんだなんだと面白そうに眺めている。
「……僕が言いたいのはね、君は自分の力を過信するべきでは無いという事だよ。『大黒蜘蛛』との戦いでも、何度か危なかった場面があったはずだ」
「うるせえな、分かってるよ。でも、後ろにはリフィアが居たからな。俺はあいつを信じてたから――」
「一人きりで戦う時、君の後ろには誰も居ないんだよ」
「っ……それは……」
アーシェの言葉に、草太は言葉に詰まった。
アーシェの言葉に間違いは無い。実際、草太が一人だったら命に関わりそうだった場面は何度かあった。
「まあ、僕から言いたいのはそれだけだ。『緑』の冒険者になったからって舞い上がらないようにね」
「……ああ、耳にだけ入れておいてやるよ」
「……それでいい、今はね」
アーシェはそう言い残して、席を立った。
群がっている野次馬達がドヨドヨとざわめき、アーシェのためにと道を開ける。
「……本当に、好きになれない奴だ」
草太は舌打ちをして、その背中を眺めるのであった。
それから暫くして、花奈とリフィアが戻ってきた。
「ただいま帰りました」
「お先にお湯頂きましたー……草太くん、どうしたの?」
「ん? ああ、なんでも無いよ。おかえり。報酬は受け取っておいたから」
「そうなの? なんだか不機嫌そうに見えるけど……」
花奈が伺うように草太の顔を覗いた。勘がいいよな、と苦笑しながら草太は答える。
「本当になんでもないよ。それより、どうやら俺達は早くも緑の冒険者になれるみたいだぞ。さっきの受付のお姉さんに、冒険者の証を渡して来るといい」
「え、そうなの!? すごい! 行こう、リフィア!」
「え、ああはい。信じられませんが、行きましょうか」
女子二人は浮かれ気分で、受付へと向かった。
二人の背中を眺めながら、草太は考える。
(……俺は弱いのか? 確かに武器を持ってまだ数日しか経ってない……けどレッドワイバーンも、今日の蜘蛛達も、問題なく倒せたんだ。……じゃあ、アーシェの言葉は、どういう意味だったんだ?)
その問いに、答えを出せる人物は居ない。
(一人きりでも戦える強さ、一人でも強大な敵に勝てる強さ、か……)
草太はそんな状況を思い浮かべる。花奈やリフィアが居ない戦場、信じられるのは自分の技術と経験だけだ。
(ああ、確かに足りないな。俺にはどちらも足りないんだ。力と武器を持っていても、俺はまだそれを使いこなせていない。宝の持ち腐れだ)
草太は心の中で、自嘲気味に笑った。側に置いたリコシフォスにそっと手を伸ばす。
(なら、まずは剣の素振りから始めよう。小さな積み重ねから、強くなっていこう)
正しい方法は誰も教えてくれない。
だから、草太は自分で決めるのだ。自分の道を。自分の生き方を。
強くなるために。死なないために。そして、守りたいと思ったものを、守るために。
読んで頂きありがとうございます!
感想、誤字脱字報告お待ちしております!
冒険者の位は
金>銀>青>赤>黄>緑>黒
となっております。




