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第六話:「悪夢再び…」

第六話 「悪夢再び…」


僕は気が付くと林の中にいた。遠くを見るとそこには…ワンピース姿の桜井さん!

僕は目をゴシゴシしてもう一度見た。間違いなく桜井さんだ。

彼女はだんだん僕の方へ歩いてきていた。僕が嬉しさの絶頂に立った瞬間…


ガブッ!


っと耳を何かに噛まれた。


いたたたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!


僕は昨日と同じように飛び起きた。そこにはまた子犬がおすわりをしていた。この犬の名前はたしか…「小太郎」だったな。人間の言葉がわかるはずがないが僕は小太郎に向かって言った。「お前なぁー もう少しやさしい起こし方できないのかよ…」どうやらさっきの林は夢だったようだ…

(それにしても、なんてリアリティのある夢だったんだ…しかし、ワンピース姿の桜井さんも

かわいかった…)

僕はある事を思い出した。そう。桜井さんの寝顔…今は朝の5時半。今日は土曜日である。

僕はゆっくりと起き上がり、桜井さんの部屋とつながっているふすまに手をかけた…

その後ろで小太郎が僕の行動を首をかしげながら見ていた。

僕はゆっくりと少しずつふすまを開けた… 間から覗くとそこにはもう桜井さんの姿は無く、パジャマと布団がたたんで置いてあった。

僕は疑問に思った。こんな朝早くから何やってるんだろう?僕は着替えて小太郎と一緒に家の中を探してみた。すると昨日見た体育館のような場所から音が聞こえる。なにかを叩くような


ピシーン! パシーン!


と何回も聞こえた。僕は体育館らしき場所の扉を少し開けて中を覗いてみた。そこには桜井さんが白い剣道着に竹刀を持ち、練習用の台に竹刀を打ち込んでいた。しばらく見ていると、後ろから誰かに押されて中に入ってしまった。っていうか勢いよく押されたので


ビターンッ!


と音を立てて体育館らしき床に顔面を強打してしまった。後ろからおじいさんの声が聞こえた。

「ふぉっふぉっふぉ、覗き見とはあまりよくないのぉー見るなら堂々と見なされ。」そこには見たこと無いおじいさんが立っていた。桜井さんは僕の存在に気づき、振り向いた。

「春香よ、お前もまだまだ未熟よのー 覗かれている事に気づかんとは…」おじいさんは桜井さんに近づきながら言った。このおじいさん何者なのだろうか?僕が疑問を持った顔で見ていると、

「おぉおぉ、自己紹介がまだじゃったの。ワシは桜庭清次郎サクラバ セイジロウじゃ。よろしく頼むよ翔君。ふぉっふぉっふぉ。」なぜか僕の名前を知っていた…

「うむ。ではこれも何かの縁じゃ、翔君もやってみるかね?」と竹刀を目の前に差し出された。

僕は「あー いやー 僕…運動得意じゃないし…」と断ると、「運動神経なんぞ関係ないんじゃぞ。剣道は心で挑むもんじゃ。」と言われ、剣道着と竹刀を渡された…どうやら拒否権は無いらしい…


僕はしかたなく道着に着替えた(桜庭さんに助けられながら)

桜井さんとは対照的な紺の道着だった。生まれて初めての剣道である… まぁ 後々役に立ちそうだし、やってみるか…と決めた。

桜庭さんは僕に剣道の基本をみっちり叩き込んだ。足裁きや竹刀の振り方、面と小手と胴の位置などなど…いろいろと教わった。結構ためになった。

僕は一通りの竹刀の振り方を教わると、一人で振ってみた。桜庭さんが僕の素振りを見ていた。

「ほぉー おぬし、なかなか良い素振りをするのう…どうやら才能があるみたいじゃ…」

どうやら僕には剣道の才能があるらしいが、自分ではよく分からなかった…

(きっとゲームで見た剣の振り方に似ているからであろう…)


すると桜庭さんは防具を倉庫から出してきて、「よしっ、それでは翔。春香と手合わせしてみるがいい。」といきなり言われた。


どえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?


剣道をやり始めてまだ1時間半ぐらいしかたっていない僕が桜井さんと手合わせって…

ボッコボコになるだけじゃないか…

桜井さんを見るともう防具をつけ始めていた。やる気満々である。

「先生!無理ですよ!ボッコボコになっちゃいますよ!」と僕が反発すると、

「ふぉっふぉっふぉ翔君、試合は勝つためで無く経験を積むためにあるのじゃぞ。」と説明された。言われてみればそうとも考えることができる。いい経験にはなりそうだ。

僕は桜庭さんに手伝ってもらいながら、防具を身につけた。さっきの素振りとは違い、竹刀が振りにくく、視界も狭かった。あとなんといっても、面はとても暑苦しかった…

桜井さんはすでに試合が開始できる位置に立っていた。僕は桜井さんの前に立ち、お辞儀をした。

二人同時に蹲踞そんきょした。

解説:そんきょとは相撲や剣道で、つま先立ちで深く腰を下ろし、膝を開いて上体を正した姿勢である。試合開始や、終了時にするお辞儀の一種とでも思っていて下さい。

「始めぇい!!」と声が聞こえた瞬間頭に激痛が走った。桜庭さんが「メンありぃー!」と叫んだ。どうやら桜井さんの竹刀が僕の面をとらえたようだった。

桜井さんの動きは速かった。踏み込んで、竹刀を僕に当てるまでに一秒もかからなかった気がした。桜庭さんは「ふぉっふぉっふぉ、では二本目いくぞぃ。翔君。構えなさい。」無茶である。

二本目僕は「始めぇい!」の叫び声の後、すぐにメンを狙って竹刀を振った。しかしスカッっと僕の竹刀は空を斬った… 次の瞬間。


バシーン!!


と音と同時に今度は右の手首に激痛が走った… その衝撃で竹刀を落としてしまった。

今度は僕のメンを一瞬で見切り避けた後、小手を打ったみたいだ…

「では、そろそろやめにするかの?」と桜庭さんが言ったので僕は少し解放された気分になった。

このまま続けていたら、間違いなく全身アザだらけである…


僕は床に正座し、防具を外した。とても新鮮な空気が僕を包み込んだ。

久しぶりに見る広い視野である。桜井さんは防具を外した後倉庫に片付け、道着のまま体育館を後にした。僕は桜庭さんにどこに言ったのか聞いてみた。

「ふぉっふぉっふぉ。どうせ庭にでも行ったのであろう。」と言ったので、僕は防具を片付けた後、桜庭さんにお礼を言い庭に向かった。


庭に着くと、桜井さんは日本刀を持っていた。どうやら木の枝から作った日本刀のようだ。

僕は家の中から桜井さんを見ていた。

桜井さんの前には、この前疑問に思っていた木の棒の上にテレビの居合い斬りなどに使いそうなワラのようなものが乗っかっている物が五本立っていた。

桜井さんは鞘に日本刀をしまい、目を閉じた。少しの間沈黙が流れた…風の音が聞こえた…

彼女は目を開き、鞘から日本刀を抜いた。と思ったら目の前にあったワラが横に真っ二つになった。どうやら一瞬で刀を抜き、ワラを斬ったらしい。

彼女は五本とも同じように斬り、こちらに振り返りやっと気が付いたようだ。

「何見てるの?」と聞かれ僕は「いやー ちょっとすごいなーって見てたんだよ。」と褒めた。

桜井さんは「別に、いつもやってるから褒められても嬉しくないよ」ってちょっと不機嫌そうに答えた。喋り方は昨日とはまるで別人だ…とても明るい喋り方だ…


家の中から「おーい 朝ごはんができたぞぉー」と呼ぶ声が聞こえた。僕と桜井さんは剣道着のままリビングへ向かった。


今日の朝ごはんはご飯に焼き魚、それに味噌汁だった。おじさんの朝ごはんとは一品違うだけだったが、なんだかとてもおいしそうに見えたのは気のせいだろうか?

僕は昨日と同じく、桜井さんの前に座った。彼女は喋ること無く朝ごはんを食べ終わると食器を片付け、行ってしまった。僕も朝ごはんをたいらげ、食器を片付けて部屋に戻った。

桜井さんは部屋にいた。もう着替えていて、昨日とは違う黒いフード付きトレーナーを着ていた。僕も体育館に自分の服を取りに行き、着替えた。

すると校長先生が僕の部屋に来て、「金子 鉄也という子から電話じゃぞ。」と僕に受話器を渡した。

「もしもし?」 


「おぉー 久しぶりに声聞いたなー!ワイや!鉄也や!」


電話の向こうからは、鉄也の元気な声が聞こえてきた。

「今日はどうしたの?ってかなんで電話番号と僕がここにいるってわかったの?」

と僕が不思議に思い鉄也に聞くと、「実はな、昨日お前のクラスの担任に聞いたんや。なんせお前珍しく休んどったからな!」それで先生が話したのか…

「で?用件は?」 

「おぉおぉ、そうやったな!用件はな、今日またあのゲーセン行かんか?って誘いたかったんや。」

どうやら遊ぼうと言っているらしい。僕はここにいても暇なので、

「行く行く!何時にどこ?」と予定を聞いた。

「おぉー 決まりやな!ほな、昼食ったら中学校の前集合や!」 

「わかった。じゃあね」と言って僕は電話を切った。

桜井さんが後ろから来て、「誰から?」と聞いてきたので、

「あぁー そういえば桜井さん鉄也君知らないよね?」コックリと彼女はうなずいた。

僕は彼女に鉄也が能力者であることや、性格などを話した。「へー おもしろそうな人」と興味を持ったように言った。


時は流れて、昼になった。僕は急いで食べて用意をした。

そして僕は家を出て険しい山道を下った。この前よりもハードだったが、頑張って降りた。


学校の前に着くと、珍しく鉄也が先に来ていた。「おぉー 来たか!ひさしぶりやな!」と

鉄也が僕の背中をバンバン叩いた。「ほな!行きまっか!」と鉄也は言って歩き出した。


僕と鉄也はこの前、鉄也が教えてくれた路地裏にあるゲームセンターに行った。

そこには、相変わらず誰もいなかった。僕と鉄也はゲームにハマってずーっとやっていた。

僕はふと時計を見た。時は経つのが早く、もう6時であった。

「鉄也君もう六時だよ。」と彼に言うと、

「おぉー せやな。もうかれこれ5、6時間やっとるし、帰るか!」と言い僕と鉄也はゲームセンターを後にした。


少し辺りは暗くなっていた。鉄也はこの前と同じ道を通れば早いと言いこの前通り魔に会った道に進んだ。僕は「また出たらヤバイよ。」と警告したが、

「なーに!あんなやっちゃワイの鉄拳でギッタンギッタンにしてやるで!ハハハハ!」と言いビルの建設現場に向かった。

どうやらもう作業員はいないようだ。「ほらな?おらんやろ?」と鉄也が僕に言った時だった。


ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!


この雄叫びは…まさか…


ズシーン!


鉄也の後ろにトゲトゲ鎧の通り魔が降り立った…なんだかこの前とは感じが違う…

体勢は前かがみになり、


フー フー フー


と息を切らせているような声が出ている。まるで野獣である。

鎧の目の部分は赤く光っていた。同じ赤でもシタッパーズとは違う赤だった。もっと濃く、怖い赤だった。まるで今にも襲い掛かって来そうな雰囲気である。


「出たな!このトゲトゲやろぉ!今度こそワイの鉄拳で!って?あれ?

この前の設計図が無い!」


どうやら作業員が持ち帰ったらしい。


「チクショウ!何かないか…何かないか…」


鉄也は辺りをキョロキョロして紙を探した。すると急に「あった!」と言いある方向へ走り出した。鉄也の走っていく先には『工事中に付きご迷惑をおかけします』と書かれたポスターが二枚。

彼は急いでポスターを剥がし、腕に巻いて変換した。この前と同じく鋼鉄のグローブのおでましだ。


「この前は夜遅かったが!今度は夕方や!とことん付き合えや!」


と鉄也は右腕を振りかざし、突っ込んで行った。しかし野獣のような通り魔は彼の拳を片腕で受け止め、ギリギリッと握った。


「はっ!この鋼鉄のグローブを握力で潰せるわけあらへんがな!」

と言い鉄也は余裕をこいていた。すると、


ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!


と通り魔は雄叫びをあげた次の瞬間、


バキバキバキッ!


っと骨が折れるような音がしたと同時に、

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

と鉄也が叫び声をあげた。彼はその場に座り込み右手を押さえていた。どうやら通り魔はこの前より強くなっているようだ。鉄也の右腕のグローブは変な形になっていた。

通り魔は鉄也が痛みに耐えているのにもお構いなしに、鉄也を蹴り飛ばした。鉄也はそのまま僕の横の壁に激突した。

「チィ…なんやコイツ…この前よりもパワーアップしとるやないかい…」

鉄也は口から血を流しながら言った。

「だがな!こっちにはまだ作戦があんねん!」

と言い、鉄也は右腕のボロボロのグローブを紙に戻し、また変換した。今度は大きな十字手裏剣だった。

「これでもくらいやぁ!」

と鉄也は通り魔の腹目がけて手裏剣を投げた。

手裏剣は見事通り魔の腹に当たり、通り魔は壁に手裏剣ごと刺さった。

「やったか!」と鉄也が見ていると、通り魔の両目がビコーンッっとザクのように光り、

手裏剣を引き抜いた。

「なんやコイツ!マジで化けモンやないか!」

鉄也はもう打つ手が無いようだ。

通り魔は手裏剣を構えた。鉄也は、「いや!まだ左腕があるんや!」

と叫び突っ込んで行った。

通り魔は構えていた手裏剣を投げた。手裏剣は鉄也の左腕にクリーンヒットして。


ズガーン!


という音と同時に鉄也は壁に左腕を貼り付けた状態になってしまった。

投げた力が相当強かったらしく、抜けなくなっていた。

「チクショウ!俺にはもう何もできない…」

彼は諦めの表情を浮かべていた。

僕は急いで鉄也に駆け寄り手裏剣を抜こうとした。少しずつだが手裏剣は抜けている気がした。

「翔!お前!危ないから下がってろや!」

鉄也は折れた右腕で僕を押すが、僕はそれを振りほどき、

「いやだ!僕はもう身近な人が死ぬのは嫌なんだ!」と言いながら手裏剣を抜こうとし続けた。通り魔はどんどん迫ってくる…僕は死ぬ気で引っ張った。グラグラし始めた…あと少しだ…

通り魔はもうすぐそこまで来ている…僕は最後に思いっきり引っ張った。


ガッ


っという音と同時に鉄也の左腕は自由になったが、通り魔はもう僕達の目の前である。

僕は今度こそ死を覚悟した…

父さん…母さん…おじさん…僕、もうすぐそっちに行けるかもよ…

通り魔は手を槍のようにして構えた…死ぬときって痛いのかな…

そんな事まで考えてしまった。


通り魔は僕にもっと近づいて来る。もう逃げ場は無い… 横にも逃げられない…

逃げたとしても追いかけられて刺されるのが結末である。そう考えた

次の瞬間。


ガガガッ


という音がして、目の前に三本の日本刀が刺さった。まさか!僕はビルの上を見上げた。

そこには制服姿の桜井さんがいた。通り魔は桜井さんに気づくとターゲットを変えたらしく、


ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!


っと雄叫びをあげ桜井さんを威嚇した。桜井さんはビルの鉄骨を伝って降りてきた。


「金子君でしょ?」


と鉄也に背を向けたまま聞いた


「そうやけど、お前はだれや?」


「彼女は桜井さんだよ。ほらこの前僕が言ってた…」 


「おおーあいつが。」


「金子君、あなたはもう逃げて。あなたはもう戦える体じゃない。」

と言われ鉄也は、


「しゃーないなぁー ほな、逃げさせてもらいまっせ…」


と言い逃げていった。


桜井さんは通り魔に日本刀を構えて、「翔君は隠れて…」と言い突っ込んで行った。



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