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プロローグ
月が静かに輝く夜のことだった。
「だああああぁぁぁ!」
ひとりの女が、自室のベッドに倒れこんだ。
彼女は桜井里菜。今年で24歳になる。大学を中退し、去年から自宅の階下で親が経営する会社に勤めている。
「やっぱ親が上司だと、仕事の愚痴は吐けないし、定時で上がろうとするとぶつぶつ嫌味言われるし、ストレス溜まるよぉ。転職するにしたってあたし学歴ないし、今以上朝早く起きることになるのは嫌だし……」
近くに置いてあったぬいぐるみを抱き寄せて、話しかけるように里菜は続ける。
「いいなぁ。毎日ゴロゴロ寝てて。あたしも少しでいいから、そんな生活したいよ」
そのまま里菜は、疲れて眠ってしまった。