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瀬戸川妖怪物語  作者: ZeroSt
Chapter1
16/20

黒猫と愉快な上級妖怪たち

「おかえり、樹里。凪と峰木爺は居ないよ」


「あれ、アーサ?いつ帰って来てたの?」


社から出てきたのはアーサだった。夕日に照らされ美しい黒髪が紅く映え、黄金の瞳が穏やかに細められた。


「ついさっきね…それより、ちゃんと連れてきたよ」


木の”影”から黒い物体たちが地面から生えてくるように姿を現した。


邪悪な、派手な印象を持つストライプ柄のような尻尾をゆらゆらと揺らし、大きな耳にはピアスが何個かついていて、色だけでなく、容姿も派手な猫や、黒い美しい六尾の尻尾と黒い耳、それとは正反対な濁りのない澄んだ青い目の六尾狐、他にも綺麗な暗黒の翼を持つ烏天狗や黒い虎など何だかダークだった。全てにおいて。



「何か悪友っていうか、闇族だなオイ」

っていうか、結構な上級妖怪たちじゃないのか?アーサってそんなに上の妖怪たちとつるんでるの?

神社に邪悪な魔気を入れないでほしいんですけど、内側から結界壊されちゃうんですけど。


私の顔を見て苦笑しながら困ったように「非常に迷惑極まりないみたいな顔してるね」と言うアーサに私は、「いや、極まりないよ。迷惑だよ」と言った。

そもそも闇族たちをこの神聖な神社に堂々と上がり込んでくるのも問題だと思うの。がんがん魔気出しながら神社に入るのもどうかって思うの。



「何だこのチビ」


チビだって?!

そう言ったのは多分黒虎だ。失礼な奴だな、いや私も初対面でコイツら迷惑だよと言う顔はしたが、そもそもそちらが悪いんじゃないか。



「とりあえず、皆さん。そのビンビンに出してる魔気しまってくれませんか?」


神社の結界壊れるから。






その後、社に皆さんを入れるに茶菓子とお茶を卓袱台に置いて、静かに正座する。

アーサとその他の妖怪さんたちは、尾や耳はしまってはくれていないものの、人型になって魔気を見事にしまってくれたようだ。話の通じる方々で助かる。いや、通じない方々を連れて来られても困るのだが。



「で、おじょーちゃん。何?」


唐突。



それはこちらの台詞だと言わんばかりに私は目を細めた。派手な猫はケラケラと愉快そうに笑いながら再度、私に同じ事を問うた。それに私はアーサを横目で見るに、首を傾げた。


「え?いや…アーサに聞いてませんか?」

「うん、神社の祀りをやるんでしょ?オレは暇だったし、暇つぶし程度で来たつもりなんだけど何で人間の女の子が独自に祀りをやるのかなって」

ここにも人間の女だと思ってる奴だ居た。いや、でも学校帰りで神気は完全に封じてるし今の私は完全にただの田舎の女子高生にしか見えないのは仕方ないような…。


ギロッという効果音が付きそうなくらいの勢いであからさまに説明不足なアーサを睨めつけると、ビクッとなった。どうやら自覚症状がおありで。

「ゴメンゴメン、皆のとこ周るので精一杯でさー手伝ってとしか言ってないんだよね」


それでよくついてきたな、こいつら。



「まあ、暇だったし」

「俺も同じや」

「ワタシもです」

「俺も」

皆暇なのかよ。妖界本当に危機的状況なの?平和じゃないの?


「おじょーちゃんに自己紹介してなかったわ。オレ、チェシャ猫のカルト。よろしくー!」

「カルトさん、来る国間違えてませんか?」

チェシャ猫って…どうみたって異国のものだろう。何故日本に居るのか。


「ジャパンで言うと妖怪みたいなもんだろー?」

「やっぱり来る国間違えてるんじゃないですか!!」

「いーんだよ、アリスんとこのチェシャ猫代役居るし」

「適当だな!ってか代役居るのかよ!」


何かおかしな奴が来た。

妖界に観光に来る魔物たちも居るんだなぁ…って関心のようなものが湧いてきたけど。


他に、六尾狐さんは彗って言うらしく、関西弁なのはしばらく関西の方に居たからだそうだ。それにしてはぎこちない。色々混ざって似非完成弁になってしまっているのだろう。本人曰く、「本場のたこ焼きよりも、都会のたこ焼きの方が旨かったっちゅーのがホンマに残念やわ」とかなりショックを受けていた。地味にリアルな話をしているなこの狐。


黒虎さんは魁さんと言うらしい。彼は北海道の方から来たらしく、ここの冬はとても暖かいらしい。妖怪に暑いも寒いもあるかとは思うのだが、暖かいと言うくらいなのだから人並みに温度を感じる事が出来るのだろう。


そして烏天狗さんは、恭と言うらしい。

ふと、疑問が湧いた。烏天狗は妖界で日本でいう警察みたいな治安を守る仕事をするのが任務だと聞く。普通に妖界では妖怪警察署と呼ばれているらしいが、烏天狗といえば妖怪警察署というイコールである。


何故この恭さんとやらは、暇をしているのか意味がわからない。


「恭さん、妖界での勤務はどうしたんです?妖怪警察の方ではないんですか?」と、私が疑問に思ったことを直球に聞けば、ああ。と頷いてニコリと笑った。







「辞めました」


「辞めたの!?何で!?」


烏天狗が辞職するとかすでに印象を捨てるようなものではないか。それなのに恭さんは平然と言ってのける。それに対し、痺れない憧れない。



「最近治安悪くてですね、仕事が多くなるもんだから面倒くさくなって辞めました」

「治安悪いから守るんですよね!?面倒くさいって何!?」

「前は平和だったから仕事が無くて楽だからやってました。でも仕事が多くなったので辞めました」

「実に簡潔的な言い方だけどそれ最悪ですよ!?」


「恭ちゃん面倒くさがりやなんだよー」


しかも筋金入りですよね、これどう見ても。




「面倒くさがり屋には自信があります」

グッと無表情でガッツポーズ決めるけど、日本語になってないよ。何、面倒くさがり屋に自信あるって。


「恭ちゃん日本語まだ慣れてないんだよね」

「えっ、それはどういう…」

「ワタシ異国の者です」

「貴方も!?」


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