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瀬戸川妖怪物語  作者: ZeroSt
Chapter1
12/20

授かりし弓と矢


どうやら、神気は神術を覚えるごとに無意識に出せるものだという。そんな簡単に行くものかね…と私はため息を吐くが、アーサはもうちょっと出始めてるよ。と嬉しそうに言った。


「え、マジ?」

「うん、マジ。というか、そんな短時間でもう神術5割くらい覚えちゃったの?もうそれ第56条くらいに進んでるじゃん」

「人間は力は弱いけど、ここはいいんだよ」と私は己の頭を指した。我ながら自分で言うのもどうかと思う。しかし、物覚えはいい方だ。理解力は乏しいが。

アーサは関心したような、驚いたような顔をして樹里のことを見ていた。


「2週間で全部覚えるっていうのも樹里なら可能かもな」

「出来るか出来ないかじゃなくて、やるんだよ」

「うっひゃー、そんなところもおばば様にそっくり!ホント、同じ血が流れてるんじゃないのって思うくらい」

「おばば様の血は流れてないけど…あの方は私の母親そのものだよ。私は本当の母や父を覚えていないしね」


私は生まれながらにして孤児だ。誰かから生まれはしたものの、堕とされた子ってだけ。愛情を注がれたことはない。そんな私を拾ってくれたのが、おばば様だ。おばば様は何に対しても命の恩人であり、感謝すべき人物なのだ。

だから私はその恩をこの神社で返したい。おばば様が死んでしまった今、それしかないというのが本心だけど。


「頑張ったね、樹里」

「…ありがと」

その一言が心に染みる。

優しく頭を撫でてくるアーサに私は頬が緩んだ。愛されるってこういうことを言うのだろうか?ちょっと私にはわからないな。


そしてアーサが妖界へと友人を連れに行き、凪と峰木爺も他の仲間達を呼んで行った。

現在、私のみ社に居るわけだが…。ちょっと不安だ。

すでに私は上級妖怪と渡り合えるくらいの力を持っていることは確かだが、それでも不安だ。特に大妖怪は。

以前大妖怪探知機に反応していたあの大妖怪…。


奴は一体何者だったのか、何が目的でここに来たのか、全然わからなかった。

念の為にと、一応大妖怪探知機を持っている。今は緑だ。つまりはこの人間界には大妖怪は存在していないと。


この世界にも来る時があると言っていたが、それは日常茶飯事なようで、寧ろ大妖怪というのは神と同一視されることが多いので、出雲大社にも出席しているし、実際に妖界に神は多く居るというのだから、別に現れたところで驚くことではないのだろう。


驚くべきところは、この何もない町に大妖怪がやってくることで、以前の状況はそれに値するものだった。

ここに神に相応しい神社があるならばともかく、ここは本当に何もない。

ただ妖怪が多く生息するという町なだけでそれ以外は何もないど田舎だ。



「弓…」

そういえば、おばば様から授かった大妖怪対策の弓のことをすっかり忘れていた。

自室へ行き、その弓を取り出す。…やはり、手にとった瞬間に不思議な力が体中を駆け回るようだ。これが古代の力と言うものなのだろうか。


一緒にあった弓矢を使うのは惜しいので、普通の弓矢を取り出し、的を狙って弓矢を放つ。その瞬間に眩い光を弓矢に宿しながら的に当たる。当たった瞬間、その光が線香花火のようにバチバチと音を立てて散った。


ただの弓矢でこれほどの威力とは…。


「確か、弓矢に御札を貼り付けて放つと効果的だっておばば様言ってたっけ」

そして覚えたばかりの神術を呪文を唱えつつ矢を放てば、先程よりも眩く大きなものとなり、何と的を壊してしまった。


すごい。の一言に尽きる。

私がすごいのではなく、この弓がすごいのだろう。手に持つだけで神気が溢れてくるようだ。このような代物が、私の手にあっていいものだろうかと遠慮がちになるが、おばば様から授かったものだ。大切にしないとと、私は弓を抱きしめる。


ふと視線を上げれば、何か影のようなものが神社の門の外に居ることに気がついた。

その影の後ろから尾のようなものがゆらゆらと揺れている。そのとき、大妖怪探知機が悲鳴を上げるかのように激しく燃え上がった。


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