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初期掌編

木馬

作者: 高槻全壱
掲載日:2026/08/02

最近俺は、誰かに付き纏われている気がする。いや、気がするんじゃなくて間違いなく付き纏われているだろう。俺は自意識過剰なわけでもない。被害妄想があるわけでもない。確実にストーキングをされているのだ。


いつからだろう……

そう、始まりは確か半年ほど前だった。玄関のドアの隙間に手紙が挟んであった。その手紙にはこう書かれていた。


〈スキナノニ〉


見た瞬間に気味悪いなぁって思った。それから同じ内容の手紙は、俺が帰宅する度にドアに挟んであった。俺は深く考えないタイプだし、被害も手紙だけだから「またか」って感じで、一ヶ月もすると手紙を捨てるのに慣れてきた。


そんな頃、第二の異変が起き始めた。

その日もいつも通り家に帰ると、手紙がドアに挟まってない事に気付いた。諦めたのかなぁ、なんて呑気に思いながら洗面台の前に立つと、朝キチンと置いたはずの歯ブラシがいつもの場所に無い。潔癖症で几帳面な俺が、元に戻してないはずがない。少し探したら見つかったけど、どうも納得がいかなかった。


その日を境に、部屋での異常は毎日起きた。と言うより、俺がいない時間帯をあたかも熟知しているかのように起こっている。

漫画の並び方が変わっていたり、ハンガーに掛けてあった服がたたんであったり、更には風呂場が濡れていて明らかに俺以外の奴が入った形跡があったりした。


どんなに呑気な俺でもさすがに一人でいるのが怖くなり、元カノのジュンコにたまに来てもらうようになった。今日俺は仕事だが、ジュンコは朝から俺ん家に来ている。

毎日、仕事帰りに考えている。なんでストーカーの奴は家に入り込めるんだろう? 鍵は俺しか持っていないはずなのに、って。


そうこうしているうちに家に着いた。

「おかえり~」

ジュンコが出迎えてくれた。

「何もなかったか?」

「うん、大丈夫だったよ」


こんなやりとりをしていると、昔ジュンコとここで同棲していた事を思い出した。

一方的に俺からフって、ジュンコは恨みつらみを泣きながら喚いていたっけか。あの時は悪い事したなぁ、ホント。


ん……まてよ……

そういやぁ、ジュンコは当時スペアキーを持っていたな……

カギはまだ返してもらって……ない……


寝室で服を脱ぎながら固まっていると、姿見の隅の方に俺を見つめて満面の笑みを浮かべたジュンコが佇んでいた。

2008/8

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