同性愛者
少年には好きな男の子が居ました。
最初は好きという自覚もありませんでしたが、少年は恋というものを知ったのです。
男の子は女の子を好きになるのが普通らしい。
お父さんとお母さんもそうだった。
それなら、自分のこの想いは恋では無いのかな。
……違う。これはきっと、特別な恋なんだ。
他の人とは違う恋。少年と彼だけの特別な関係。自らの感情をそう定義した少年の恋心は、益々募っていきました。
そして想いが膨らんでいく程に、少年は彼と距離を取るようになったのです。
特別だと思っているのが自分だけだったらどうしよう。
この想いが一方通行だったらどうしよう。
嫌われて拒絶されたらどうしよう。
少年は彼を遠巻きに見つめる日々を過ごしました。彼の近くに居るよりも、特別な恋を否定されたくなかったのです。
たまに視線が合っても、少年が一方的に笑むばかり。彼は特に気にしてもいない様子でしたが、視線が交差しただけでも少年にとっては十分でした。
少年の特別な恋心は、彼から離れていても膨らみ続けていました……遠くへ引っ越すことになっても、伝えられなくなってしまう程に。
最期まで、少年は待ち続けていました。
きっと、想いを告げに来てくれると信じていました。
しかし、彼は来てはくれませんでした。
それでもやっぱり、少年にとってその恋は特別なままでした。
だって、こんなにも想っている自分が会いに行かなかったのだから。
彼も同じ想いを抱いているのなら、会いに来ないのは当然だ。
だからこれは、同じくらいに想い合っている証明なんだ。
遠く離れて見つめることすらできなくなっても、少年は彼を想い続けていました。
同性愛という概念を知っても、少年の恋は特別で在り続けました。
しかし会えない時間が積もっていくと、次第に不安も増していったのです。
わたくしはまだ、特別なままでしょうか……?
少年は同性との刹那的な恋に耽り、自分が異性には惹かれない特別であることを確認しました。
あぁ、良かった……。
わたくしのあの方への想いは、本当に唯一なのでしょうか……?
少年は心惹かれた同性と肌を重ねて、それでも幼いままの彼の顔を忘れないことを確認しました。
あぁ、良かった……。
身と心を爛れさせて愛を得ることで、少年は安堵できました。
少年は安心したくて、愛を求めて身と心を爛れさせました。
そんな退廃的な確認も、もう必要ありません。
特別な恋に縋っていた少年は、特別でありたいだけの少女だったのです。
異性に惹かれるのは普通のこと。何処にでも溢れていて、普遍的で、特別な要素なんて少しもありません。
ずっと大事にしてきた想いがそんな凡庸で、平凡な恋心だと知った少女には、もう彼の顔を思い出すことも出来ません。
特別な恋に焦がれた少女に残ったのは、爛れてしまった心と身体だけなのでした。




