あなたは女の子
「では、ムツミさん。わたくしがこれからコハルさんについて語りますので、その正誤をお答えください。コハルさんとムツミさんは幼馴染ですね」
「うん、合ってるかな」
「おふたりは男女の仲ですね」
「それは……違うかな? 多分、イヨちゃんが想像してるような仲ではないかな」
「では、おふたりは口づけを交わし合ったことがありますね」
「それも無い……あれ、あったかな……? 本当に小さい頃の記憶は判然としないけど、少なくともボクの認識では無いかな」
すらすらと躊躇無く小陽との関係を暴露していく睦美。そのやり取りは小陽にとって気恥ずかしい物ではあったが、それだけだった。
睦美はあくまでイヨの言葉の正誤を答えているに過ぎない。このやり方で秘密を暴露させるには秘密に合わせた質問が必要であり、そんなのは秘密を知っていないとできないことだ。当てずっぽうで小陽の秘密に辿り着けるとは思えなかった。
(どういうつもり……? 昨日の夜からずっと睦美は僕といっしょに居たから、イヨ君に秘密を聞き出す隙は無かったはず――っ!?)
小陽は己の勘違いに気付き、そしてもう全てが手遅れであることまで理解してしまった。
昨夜、イヨは素直というキーワードで弥生に久野絵の秘密を暴露させた。それを受けた小陽は睦美に張り付き、先んじて素直という言葉を使用することで秘密の暴露を防いだ……つもりになっていた。
しかし、この対策は不完全だ。不完全どころか、無意味にも等しい。イヨが素直というキーワードに気付いたのが昨日よりも前であったのなら、その時点で小陽は詰んでいたのだ。
『ムツミさん、少しお時間を頂戴してもよろしいでしょうか?』
それは、二日目の自由時間のことだ。イヨが睦美とふたりきりになれた時間が、確かに存在してしまっていた。
(嘘……でしょ……? まさか、そんな……二日目の時点で、もう……?)
イヨは小陽よりも遥か先に、他者を蹴落とす覚悟を固めて行動に移していた。出遅れた時点で、小陽の敗北は決定していたのだ。
「――って……ま、待ってっ……待ってよっ――」
からからに乾いた喉が張り付いて、擦れた声しか出なかった。それでも、必死に声を挙げた。
イヨに喋らせるわけにはいかない。何をしてでも、その口は封じなければならない。もっと早くにそんな覚悟を決めていたのなら、もう少しは足掻けただろうに。
小陽は全てにおいて遅すぎた。勝者たるイヨは優雅に、余裕を持って、はっきりと小陽の秘密を暴露した。
「朝比奈小陽は二重人格であり、生来の人格は女の子ですね」




