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君が女の子  作者: papporopueeee
2日目

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37/83

嫉妬/羨望

 少年は母親に憧れていました。

 大きな舞台に立って、たくさんの人に囲まれながら堂々と歌う母親。

 父親はそんな母親を心から誇っており、歌劇団の大人たちも口々に褒め称えていました。

 幼い少年を育んだ環境は、その幼い憧憬を助長するのに十分過ぎたのです。


 オレもお母さんみたいに舞台に立ちたい!

 たくさんの人の前で堂々と歌劇がしたい!

 そうしたら、お父さんとお母さんも褒めてくれる?


 目をキラキラと輝かせる少年に対し、両親は頭を撫でながら優しく教え諭します。


 桃莉は無理してお母さんの真似をしなくてもいいんだよ?

 世の中には他にもたくさん素敵なことがあるから、色々とやってみよう?

 お父さんとお母さんは、桃莉が本当にしたいことをして欲しいからね?


 その声は我が子への思い遣りに溢れていて――

 その微笑みには親としての優しさが込められていて――

 ――それは、少年の求めていたものではありませんでした。


 ふたりは、オレに舞台に立って欲しくないんだ。

 オレは、舞台を目指しちゃいけないんだ。

 それならオレは、何をすれば褒めてもらえるんだろう?


 ピアノを始めてみました。両親も褒めてくれました。しかし、その声からは熱意が感じられませんでした。

 モデルにスカウトされました。両親も驚いてくれました。しかし、その瞳からは期待が感じられませんでした。


 少年が何をしようとも、両親からの反応はどれも空虚でした。その頃にはもう、少年には妹が居たのです。

 幼い妹は少年の膝に頭を預けて、涙声でお兄ちゃんに甘えます。


 お父さんとお母さんは、どうして私にばっかり厳しいの?

 ふたりとも、お兄ちゃんには優しいのに。

 お兄ちゃんが羨ましいなぁ……私が男の子だったら良かったのに。


 妹の頭を撫でながら、少年は妹に同調します。妹の心を慰める為に。己の醜い嫉妬心を慰撫する為に。

 そんな長い苦しみの時間を耐えて、少年はめでたく少女になれました。これでもう、嫉妬に狂ってしまうこともありません。


 舞台に立つことは叶わないけれども、少女は誰もが認める女の子なのですから。同じ女の子である妹に嫉妬する理由がありません。

 悪いのは全て、その身体で生まれついてしまった自分自身。運が悪かっただけなのですから、大人しく諦めることができますね。

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