去勢済み
少年には才能がありました。
繊細な音を奏でる喉。万人の目を惹く容姿。常人には持ちえない感性。
その才は人々に神様の御使いを思わせ、養親は少年に才に伴う責任を説きました。
神様から多くを与えられた人は、その多くを他の人に与えなければいけない。
幼き時分の少年に、その言葉のどれだけが理解できたでしょうか。しかし、そんなことは重要では無いのかもしれません。
うん、わかった。
それじゃあ、ジジは全部を捧げるね。
重要なのは、少年がその子胤を永遠に失ったということだけです。養親の身なりが急に華美になったことなんて、些事に過ぎません。
養親に言われるがままに聖歌隊に入った少年は瞬く間に頭角を現し、養親の教え通りに多くを与えることになりました。
神様にその歌を捧げて。
大人たちからの賛辞にその身を捧げて。
子供たちからの妬みにその心を捧げて。
恵まれた立場にある自分は、恵まれなかった人たちに多くを捧げなければならない。少年は養親からの教えだけを胸に、全てを捧げ続けました。
いいよ、全部あげる。
ジジの全部をあげるから。
だから代わりに、たくさん喜んで欲しいな。
これまでに失った物の価値も、意味も、少年は十全には理解できていません。
それは少女になっても変わらずに、本質を理解しないままに捧げ続けることでしょう。




