初めての話し合い、初めての告発
夕食として用意された仕出し弁当を食堂で食べた後、生徒たちは再び教室に集まっていた。
えるの指示で机を英語のCの形に並べ、それぞれが向き合える形で机の前に立つ。イヨ、ジジ、ミコト、小陽、睦美、菜々緒、弥生、久野絵、桃莉の順で、桃莉とイヨの間が空いていた。
榎戸は相変わらず隅でスマホを眺めており、ディスプレイ上ではえるが真っ黒なガウン型の法服を着て椅子に座っていた。手には木槌を持っており、さながら裁判長のような風体だった。
「皆準備はできたかな? それじゃあ、これからディスカッションを始めるよ。テーマは自分の女の子らしいと思うところ。人は誰しもが男女の両方の要素を持っているものなんだ。まずはその事実を受け入れるところから始めようね。もちろん、自分だけじゃなくて、他の人に言及するのも良いからね。皆で認め合って、仲良しになっていこう!」
自白か、もしくは告発か。この9人の中から女の子だと疑わしい人間を挙げろ、それが出来なければ自身を女の子だと認めろ。小陽はえるの言葉をそう受け取った。
小陽以外の全員も大きくは変わらない解釈をしたのだろう。互いを見遣る視線には多かれ少なかれ疑念が含まれており、出方を窺っている様子だった。フレンドリーな雰囲気なんて欠片も存在していない。
肩に重くのしかかるような沈黙。視線が突き刺さる音が聴こえるほどの静寂。そんな中で堂々と手を挙げた弥生の姿は、小陽の目には頼もしく見えた。
「提案なのですが、議論のテーマを変更しませんか? 私たちはまだ初対面も同然の仲ですし、皆も緊張している様子です。初日はもっと軽い雑談のようなテーマが相応しいと私は思います」
それは小陽にとっては願っても無い提案だった。自身が女の子だなんて到底受け入れられないが、誰かに女の子を押し付ける覚悟も決まっていない。弥生の提案はその場しのぎではあったが、これ以上の険悪な雰囲気に耐えられる自信も無かった。
周囲を見れば、ミコトと睦美は小陽と同様に弥生を肯定している様子だった。イヨ、ジジ、菜々緒、桃莉は肯定こそしていないものの、否定も見受けられず、どちらでも良いという様子だった。
明確に反対しているのはただ一人……久野絵は噛みつくように弥生の提案を否定した。
「ふざけてんのか? オレはこんなところに何日も拘束される気はねえ。如月の言う差し障りのねえ仲良しごっこも、くそAIの言う相互理解もお断りだ。第一、女なんて探すまでもねえだろうが……昼は有耶無耶にされたが、今度は逃げられねえぞ桜」
久野絵は菜々緒を睨みつけながら告発した。桜菜々緒こそが女の子であると。




