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たけよがよけた

何かが飛んできた。

たけよに向かって何かが飛んできた。

たけよはよけた。

何かが飛んできたら、とにかくよけることにしていた。

だからその時も、たけよはよけた。

たけよがよけた〝それ〟は、勢いよく飛んでいった。

たけよのそばを飛んでゆき、たけよの後ろへ飛んでゆき

たけよの後ろの壁に当たったところで止まった。

たけよは振り返って、後ろへ飛んでいった〝それ〟を確認することにした。

少しずつ近づいていく。

壁に当たって動かなくなっているものは人の形をしていた。

だからそれは人だと

普通の人はそう思うだろうけれど、たけよはそうは思わなかった。

それは人の形をしているけれど、人ではない。

たけよはそう思った。

それは悪魔か天使のどちらかだ、とたけよは思った。

そしてやっぱりと思った。

やっぱりおじいちゃんの言う通りだ、とたけよは思った。

たけよが高校を辞めたいとおじいちゃんに相談したのは昨日のことだった。

おじいちゃんはたけよの目をじっと見て言った。

「明日お前に向かって飛んでくるものがある。それは悪魔か天使か。そのどちらかだ」

たけよはやれやれと思った。

いつものことだけれど、おじいちゃんには話が通じない。

話がかみ合わない。

それはおじいちゃんがぼけているからなのだけれど

でもたけよにとってはおじいちゃんは唯一無二の相談相手なのだから、仕方ない。

自分の話を聞いてくれるのはおじいちゃんだけなのだから

ぼけてるとかぼけてないとか、そんなのは問題ではなかった

自分の話を聞いてくれるというそのことが何よりも重要なのだ。

「明日お前目掛けて飛んでくるものがある。それは悪魔か。天使か」

ぼけてるから仕方ないけど、いつものことだけど、何言ってるの? 

でもたけよは気にしない

「え? 悪魔? え? 天使? あのさ、僕、高校辞めたいんだけど」

「悪魔か天使かそのどちらかだ」

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