58 最後のガード反撃
「な、なんだってんだよ!?こいつ、いきなり壁に頭突きだと!?いわゆる『頭突き攻撃』ってやつか!?むちゃくちゃすぎだろ!」
俺がまだ呆然としてる間に、ハンスのやつがもう雄叫びをあげて突っ込んでいった!
「うおおおおお――!」
あいつは改造ボクシンググローブを振り回し、パペットジョーカーの少し壊れかけた胸の横板に思いっきり叩きつけた!ドンッ!と鈍い音がして、板が音を立てて砕け、でっかい穴が空いたんだ!
「なんだと!?空っぽだと!?」ハンスが信じられないって感じで叫んだ。
俺も目を凝らして見ると、そのぶち破られた穴の奥は、真っ暗でマジで何もなかった!くそっ!弱点は胸の中じゃなかったのかよ!?
ギギ…ガガ…!
パペットジョーカーはまったくダメージを気にしてないみたいで、八本の金属製の長い脚をガチャガチャ動かして、また攻撃してきそうな気配だった!ハンスのやつはチッと舌打ちして、すぐに後ろへ飛びのいて、とっさに退避した。
次の瞬間、そいつはまた狂った牛みたいに、でっかい木の頭で俺たちに向かって猛突進してきた!
「うわっ!」
俺たちはわたわたと左右に避けるしかなかった!こいつの頭、どんだけ硬ぇんだよ?!こんなにガンガンぶつかって壊れないのか?しかもこの化け物の「頭突き攻撃」はまったく予測不能で、右へ左へ、しかもどんどん速くなってやがる!このままじゃ、避けるだけで体力が尽きちまうぞ!
「あ、あの…!頭の、中に…ひ、光が…ちらっと…!」
混乱の中、雪ちゃんがパニック気味の切羽詰まった声で叫んだ!
頭?俺はすぐに意識を集中して、パペットジョーカーのデカい頭をじっくり観察した。連続でぶつかったせいで、あいつの滑稽なジョーカーフェイスは確かにヒビだらけで、その中の一番大きな割れ目の奥…かすかに、本当に弱い光が漏れてるっぽかった!
なるほど!弱点はあの頭の中に隠されてたのか!
だけど…「ガード反撃」…これがマジで、本当に最後のチャンスだ!絶対に!絶対にここで無駄にはできねぇ!
「おーい!このバカクモ!こっち見やがれ!」
俺はゴルフクラブを振り回して、必死に大声で挑発したけど、やつはまるで聞こえてないみたいに、相変わらず他のプレイヤーを追いかけてガンガンぶつかってた!エミリーとイ・ユンチョルが追われてマジでヤバそうだった!
くそっ!こんな時に限って俺を無視かよ!?このままじゃ、他のやつらがもたねぇぞ!
ピコーンと閃いて、俺は一番近くにいた雪ちゃんの方へダッシュした!
「雪ちゃん!もう一回だけ頼む!あいつをこっちに引きつけてくれ!」
雪ちゃんの華奢な体がブルッと震えた。顔にはまだちょっぴり恐怖の色が浮かんでたけど、それでもマシュマロ杖をギュッと握りしめていた。
「う、うん!わ、私…やってみる…よ!」
雪ちゃんはコクンと力強く頷いた。今回は前みたいにオロオロしてなかった。たくさんの戦いを経験して、彼女もかなり成長したみたいだな。
その時、パペットジョーカーがとんでもないスピードでエミリーの方へ一直線に突っ込んでいった!エミリーは顔面蒼白で、もう避けきれないって感じだった!
「きゃあああ――!」エミリーは絶望的な悲鳴を上げた!
もうダメだ…!
だけど、エミリーがぶつかられる寸前、パペットジョーカーのデカい体が、なんと彼女の数十センチ手前でギリギリ急停止したんだ!金属の長い脚が地面をキーッと引っ掻いて、耳障りな音を立てた!
続いて、そいつはグルンと百八十度ターンすると、虚ろな眼窩が、マシュマロ杖を掲げたばかりの雪ちゃんを瞬時にロックオン!そして、八本の脚が再び地面を蹴って、目標を雪ちゃんに定めて猛ダッシュで突っ込んできた!
「よくやった、雪ちゃん――!!」俺は叫んだ。
俺は息を殺し、パペットジョーカーが突っ込んでくる瞬間を見計らって、最速でそいつと雪ちゃんの間に割って入った!やつのでっかい影が俺の視界でグングン大きくなって、死のプレッシャーで息が詰まりそうだった!
今だ!これが最後、全てを賭けた…「ガード反撃」――!!!
俺はゴルフクラブを渾身の力で前方に突き出し、ありったけの力で、やつの頭部めがけてブチかました!
ガキィィン――ドドドドド――ン!!!
ゴルフクラブは見事ど真ん中に命中!次の瞬間、パペットジョーカーの体全体が、頭から、まるで点火された打ち上げ花火みたいに、ズドンと激しく爆発四散した!無数の木片、金属パーツ、歯車やバネがバーン!と四方八方に吹き飛んだ!
ふぅ…ふぅ…
強烈な衝撃波で俺は後ろによろよろと数歩後ずさった。ふと、飛び散ったパーツの残骸の中に、腕の関節みたいな部品があって、そこに「T-2306」みてぇな番号が刻まれてるのがチラッと見えた。
はぁ…はぁ…
強烈な脱力感がドッと押し寄せてきて、俺は膝からガクッと崩れ落ち、そのまま地面にへたり込んだ。激しい息遣いで、肺が張り裂けそうなくらいゼェゼェして、目の前がチカチカするほどだった。
これで…今度こそ、今度こそ…本当に完全に終わった…んだよな?
ステージを見渡すと、そこはもうめちゃくちゃだった。元々ボス戦に参加してた十二人のうち、今も立っていられるのは、俺の他に、雪ちゃん、ハンス、エミリー、イ・ユンチョル…たったの五人だけ。七人も…こうして犠牲になっちまったのか。
その時、半透明のシステムUIメッセージが、いきなり俺たちの目の前にポンと表示された。
「G-13グループクリア成功。残りプレイヤー数:43」
「ダンジョンは60秒後に閉鎖されます。」
…四十三人か。あれだけ大勢いた百人以上のプレイヤーが、ほんの数日間の「フィルター」で、まさかこれっぽっちになっちまうなんてな。とてつもない喪失感と悲しみ、それに生き残ったっていうハイな喜びと安心感がごちゃ混ぜになって、複雑な感情が胸の中でグルグル渦巻いて、マジで息が苦しくなるほどだった。
「うおおおおおおおおお――!!!!」
「白狼様――バンザーイ――!!!」
「勝ったぞー!!俺たち勝ったんだー!!!」
観客席の方から、いきなり雷みてぇな大歓声と喝采がドカーンと巻き起こって、マジで会場全体がひっくり返るかと思ったぜ!チラッと見たら、あの石田正弘ってやつとか、その周りの連中が、まるでキマっちゃったみたいに、拳を突き上げたり、太ももをバンバン叩いたりしながら、「白狼様最強!白狼様無敵!」みてぇなスローガンを熱狂的に叫んでて、とんでもねぇ盛り上がりようだった!
そしたら、その連中…なんと七、八メートルもある観客席からいきなり飛び降りてきやがった!?マジかよ命知らずどもめ!そのまま津波みてぇにドッとこっちに押し寄せてきたんだ!
「はぁ…はぁ…雪ちゃん」俺はゼェハァ息を切らして、ろくに言葉も出てこねぇくらいだったけど、隣で同じように肩で息をしてる雪ちゃんに言った。「こ、今回の…雪ちゃんの活躍…マジで…まるで別人みたいだったぜ!す…すげかった!」
雪ちゃんのちっちゃい顔も真っ赤っかで、はぁはぁと大きく息をしながら、ぶんぶん首を横に振った。「ち、違うの!ぜ、全部…白狼様が…はぁ…い、一番…すごいんだもん!」
雪ちゃんが言い終わるか終わらないかのうちに、あの石田正弘が一陣の突風みてぇに俺の目の前に突進してきて――「白狼様――!!」って叫ぶなり、いきなり超絶熱いハグをかましてきた!
「うわっぷ!」俺は思いっきり後ろにのけぞって、マジでぶっ倒れるかと思ったぜ!と、突然すぎだろ!?お、重い!肋骨が…!
続いて、カルテルとか、他の大勢のプレイヤーもワァッと押し寄せてきて、あっという間に俺たち生き残り組をわちゃわちゃ取り囲んだ!俺は完全に人混みに揉みくちゃにされて、もうてんやわんやだった!
「きゃっ!や、やだぁ――!」雪ちゃんは、いきなり飛びかかってきた何人かの女子プレイヤーに抱きつかれて、可愛い悲鳴を上げて、顔をカァッと赤らめてた。
「おい!何やってんだ、お前ら!」ハンスも興奮したプレイヤー数人に絡まれて、不意打ちくらったみたいに叫んでた。
俺たちが熱狂的すぎる群衆に囲まれて、どうしようもなくてわたわたしてた時、目の前が、不意に強烈な真っ白い光にブワッと飲み込まれた。