57 スパイダーモードの壁突撃
ギシギシ――ッ!耳障りな金属音が頭上から響いた。ワイヤーで吊るされたパペットジョーカーの巨体が、不気味に歪み変形し始めた!
腕や脚、全てのパーツが分解され再構築されたように、最後には…俺たちの足元のステージを狙った巨大なキャノン砲へと姿を変えた!
「な、なんだあれは……ッ!」俺は思わず声を漏らした。
隣のハンスも驚き顔で、「おい、大谷、あれはマジでヤバそうだぞ!」と言った。
砲口の中心がキラキラと光り、どんどん明るさを増す!嫌な予感が全身を駆け巡り、ゲーマーとしての第六感が猛烈に警告を発していた!
これは間違いなく…ステージ全体への即死攻撃だ!
「全員、ステージの隅っこに走れ――ッ!!」俺は喉が張り裂けんばかりに叫んだ。
声が響き終わるか終わらないかのうちに、巨大な砲口がギュンッと収縮し、次の瞬間――ドゴォォォン!
目も眩む光の球が、凄まじいスピードで砲口から射出され、ステージのど真ん中にズドン!と叩きつけられた!
光球は着弾後すぐには爆発せず、風船のようにみるみるうちに広がった!エネルギーの光が触れた場所は、ステージ床に散らばった木屑や金属片、破片が、一瞬でジュワッと蒸発した!
「うわあああああ――ッ!」
プレイヤーたちは悲鳴を上げ、俺が叫んだステージ隅を目指して死に物狂いで突っ走った!
俺も必死に走った。視界の端に、すぐ後ろのカレンが見えた。あいつ、どうやら一歩遅れたようで…
あいつ、丸ごと…急速に膨らむ光球に追いつかれ、そのまま…ゴクリと飲み込まれた。悲鳴を上げる暇さえなく、破壊的な光の中に消えていったんだ…
ちくしょう!カレンめ!あの死のジェットコースターで、あいつのパチンコの神業がなけりゃ、ジョーカーが投げた爆弾を吹っ飛ばせず、俺たちあの時全滅してたかもしれないんだぞ!
ハンスも一瞬反応が遅れたが、光球が踵に触れそうになった瞬間、思いっきり前方へダイブして転がった!
ゴオオオォォ――ッ!光球の端っこが、あいつの背中を紙一重で掠めた!
「はぁ…はぁ…くそっ…マジで逝くところだったぜ…」ハンスは地面に突っ伏し、全身を震わせて顔面蒼白。九死に一生を得た顔だった。
破壊的な光球は、ステージ全体を覆い尽くすほどに広がった後、エネルギーが尽きてシュンッて感じで消えた。元々瓦礫だらけだったステージ大部分は一掃されたが、俺たちはかろうじて隅に身を寄せていた。
そして、元凶のパペットジョーカーは空中で元八本腕メカアーム形態に戻ると、ワイヤー吊るされたまま、ゆっくりと下方のステージへ降りてきた。
ドンッ――!そいつのデカい足裏がステージ床に接地し、重々しい音を響かせた。
その直後――バチン!バチン!頭上でそいつを吊ってたワイヤーが弾けるように切れた!
生き残った俺たち五人は顔を見合わせ、慎重に警戒を続けた。
濛々と立ち込める土煙の中、パペットジョーカーがまた狂ったようにピョンピョン跳ね回り始め、八本のメカアームについた武器でめちゃくちゃに攻撃してきた!ドリル、巨大ハンマー、レーザーガン…さっきと同じ、いや、前よりもっとイカれてる!
俺は死に物狂いで右左とかわしまくったが、あいつの攻撃は嵐みたいだった!前に右足弱点をぶっ壊したから、今は左足首にある光点だけがピカピカ光ってる!
っていうか、あいつ片足しかないのに、どうバランス取ってあんなに元気に跳ね回ってんだよ?!全然科学的じゃないだろ!これは超弩級のバグだぞ!
もう、そんなこと考えてる場合じゃない!このままじゃ、じわじわ削られてやられちまうだけだ!
「ガード反撃」…使えるのはあと二回。
俺は大きく息を吸い込み、あいつの左足にガンをつけた。もう賭けるしかない!あいつがジャンプした、その瞬間を狙うんだ…!
チャンス到来!パペットジョーカーがまた高く跳び上がり、破壊的な踏みつけ攻撃を仕掛けようとしてる!あの落下威力、見てるだけで頭の皮がビリビリするぜ!
今だッ!
あのデカい影がジャンプ頂点に達し、まさに落ちてこようってその瞬間――俺は弾丸みてぇに、やつの左足真下目掛けて猛ダッシュしたんだ!
来いッ!ぶっ壊れろ!「ガード反撃――ッ!!!」
俺は手に持ったゴルフクラブを、ありったけの力で、思いっきり斜め上に向かってブンッ!と振り抜いた!
カキィィィン――ッ!!!
ゴルフクラブがパペットジョーカーの足裏に当たった瞬間、とんでもねぇ反動がクラブ伝って、俺全身にズシンッ!ときやがった!直後、山が崩れ落ちるみたいな、メキメキメキッ!っていう凄まじい破壊音が響いたんだ!
パペットジョーカーのデカい下半身が…足首から上、胴体ほとんどの部分まで、なんと俺一撃でバラバラに砕け散ったんだ!そして、残ったボロボロの上半身が…あのとんでもない反動力で、そのまま斜め上の空へズドドドドン!と吹っ飛んでいった!
こ、この威力…マジで鬼がかってる!たかがガード反撃一発で、あんなバカでかい図体のやつをこんなにしちまうなんてな?!どうやら、受け止めた力がデカければデカいほど、そっくりそのまま跳ね返すってわけか!なるほどな!
俺たちは慌てて後ろに飛び退いた!
パペットジョーカーの上半身だけの残骸が空中で大きな弧を描いて、鉄クズみたいにステージ地面へ――ドッゴオオオオォォン!!!と耳を劈く轟音立てて激しく叩きつけられ、もうもうと土煙巻き上げたんだ。
そして…ピクリとも動かなくなった。
俺はぜぇぜぇと肩で息をし、心臓がドクンドクンと激しく高鳴っていた。
「す、すごすぎます!はぁ…はぁ…白狼様!」雪ちゃんも息を切らし、顔を真っ赤にしながらも、瞳はキラキラと憧れの光で輝いていた。
「勝ったああああ――ッ!」
「やったぜ、白狼!」
観客席からまた地鳴りのような大歓声が沸き上がった!石田の野郎がまた高いところから興奮気味に拳をブンブン振り回し、「見たかァ!これが白狼様の真の実力よ――ッ!白狼様最強――ッ!無敵――ッ!万歳――ッ!」とか大声でわめき散らしてる。
うっさいな!あの野郎、さっきから熱狂的なファンみたいで、テンション高すぎだろ!
生き残ったプレイヤーたちは恐る恐る顔を見合わせ、ゆっくりとパペットジョーカーが墜落した場所へ近づいていった。
だが、これで万事休す、全て終わったと俺たちが思った、まさにその時だった――
ギ…ギギギ…
あのパペットジョーカーのぶっ壊れた上半身残骸が…なんと、またしてもブルブルと震え始めたじゃねぇか!しかも、その震えはどんどんデカくなっていく!
う、嘘だろ?!まだ終わりじゃねぇのかよ?!この化け物…一体いつまで俺たちに付き纏う気だ?!勘弁してくれよ!マジで、無理だっ…!
「ま、まだ来るのかよぉ?!」ハンスも半泣きみてぇな声で叫んだ。「こいつ、不死身のゴキブリか何かかよ?!」
「総員、退避――ッ!!!」俺はまだポカンとしてる奴らに、喉を引き裂く勢いで叫んだ。
俺が叫んだのとほぼ同時に、パペットジョーカーのかろうじて残っていたボロボロの上半身が、ギシギシ、ガシャガシャと耳障りな駆動音立て、再び変化したのだ!
八本のメカアームがメキメキと音を立てながら捩じれ、伸び上がり、そのボロボロの胴体を支える長い脚へと変わった。そして、あのデカいパペット頭もそれに合わせて角度を変え、前方をロックオンした!これは…スパイダーモードに変形したのか?!
ギギギギ――ガガガガ――!
あいつ八本の金属製長い脚が、地面上でザワザワと不穏に蠢いて、パペット頭がこっちグワッ!と向いた!次の瞬間、あのデカい体がブオン!と一回転し、禍々しい風を巻き起こすと、八本脚使って、黒い稲妻みてぇな猛スピードで、俺たち方へ突っ込んできたんだ!
俺は全身バネ使って、思いっきり横っ飛びして避けた!
そいつは、俺がさっきまでいた場所をヒュン!と風を切って通り過ぎたけど、スピード速すぎて全然方向転換できず、「ゴッッッッッ!!!」という凄まじい音立てて、俺たち後ろあった壁に頭から思いっきり激突したのだった!