54 デカい足の致命的な踏みつけ
ラマールのやつ…ちくしょう!確か前回、みんなで行き止まりに追い詰められた時も、あいつが目ざとく、あの歪んだ鏡をタイミングよく見つけてくれたおかげで、チェーンソー・ジョーカーの追撃から逃げられたんだ!なのに、あんな…
俺がそんなことを思い出していた、その時だった。ギギギィィィ――!
甲高い金属の擦れる音が、突然、頭の上から響いてきた。パペットジョーカーの八本ある腕の一本――その先端に鈍い光を放つ巨大なドリルが、マジかよってくらいのスピードで俺の頭めがけて振り下ろされたんだ!
やべっ!速すぎて反応できねぇ!脳裏に「ガード反撃」のスキルがチラついた。残り使用回数は四回!ちくしょう、もうどうでもいいや!
「ガード反撃!」
俺はとっさに心の中でスキル名を叫び、ゴルフクラブを力いっぱい振り上げた!クラブとドリルの先端が激しくぶつかった瞬間、強烈なカウンターが炸裂し、高速回転していたドリルが、アームごと木っ端微塵に吹き飛んだ!金属パーツが花火みたいにキラキラと飛び散った。
ふぅ…助かった。でも、これで「ガード反撃」を一回使っちまったのは、なんか勿体ない気がするぜ!
パペットジョーカーの別のアームについてる砲口が、もうこっちを向いていた!
ドゴォォン!
黒煙を引きずる灼熱の砲弾が、俺たちに向かって飛んできた!俺はすぐに、みっともなく転がるようにして避けた。砲弾は頭皮をカスるみたいにギリギリで飛んでいき、すぐそこの地面にデカい穴を開け、砕けた石ころと火薬の匂いがブワッと広がった。
その瞬間、パペットジョーカーの巨大なチェーンソーが振り回され、頭のてっぺんがゾクゾクするようなチェーンの回転音を響かせながら、少し離れたところにいたハンスに向かって薙ぎ払われた!
「ハンス、危ねぇ!」俺は声を張り上げて叫んだ。
「うおおっ!」
ハンスは逆に闘志満々で、勢いよく迫ってくるチェーンソーを前にしても、引かずにむしろ前に出て、気合一発、改造ボクシンググローブを構えて迎え撃った!
ガキィィン――キンッ!
耳をつんざくような衝突音のあと、パリンと何かが砕ける音が響いた。頑丈そうに見えた巨大なチェーンソーが、なんとハンスの一撃で真ん中から叩き割られたんだ!ブチ切れたチェーンと刃がバラバラと飛び散った。
ハンスだけじゃない、他のプレイヤーたちも次々と動き出した。ナパッタポーンが水鉄砲を構え、パペットジョーカーの別のアームについてるレーザーガンに狙いをつけた。「プシューッ!」って音と共に、強烈な水圧の水柱がほとばしり出て、レーザーガンに直撃!バシャッ!レーザーガンは水柱の勢いでバラバラに砕け、パーツが飛び散った!
おおっ!どうやら俺だけじゃなく、みんなもコツを掴み始めて、あのクソ忌々しいメカアームに反撃できるようになったみたいだ!
俺はパペットジョーカーのデカい体を素早く目で追い、新しい弱点を探した。あった!木の幹みたいにぶっとい足首の関節部分に、前に手首にあったのと同じような光点があるっぽい!間違いなく弱点だ!
俺はゴルフクラブを握りしめ、パペットジョーカーの右足首めがけて突っ込んでいった。
ところが、パペットジョーカーのクソデカい足が、何の予兆もなく持ち上がったかと思うと――俺がいる場所に、思いっきり踏み下ろしてきた!
嘘だろ?!なんだよその技は?!俺の頭は真っ白になった!
巨大な影が一瞬で俺を覆い尽くし、死のプレッシャーで息が詰まりそうだった!足裏の攻撃範囲がデカすぎるし、しかもビビるくらい速い!
「うおおおお――!」
俺はありったけの力を振り絞り、火事場のクソ力ってやつで、最後の最後で横に思いっきり飛びのいた!
ズゥゥゥン――!
地震みたいな轟音が耳元で炸裂し、足がさっきまで俺がいた場所を思いっきり踏みつけ、ステージ全体がグラグラ揺れた。俺はなんとかペシャンコにされるのは避けたけど、強烈な衝撃波をまともに食らっちまった!
「ぐはっ!」
言葉にできないくらいの激痛が一瞬で全身を貫き、内臓が全部ズレたみてぇに、痛すぎて息も止まりそうだった。
「HP:35/100」
そんな冷たいシステムメッセージが脳裏をよぎった。やっべ!HPがいきなり半分以下になったぞ!このままじゃ、マジで死ぬ!
あまりの痛みに、俺はしばらく地面に突っ伏したままピクリとも動けず、視界もだんだん霞んできた。
その時、視界の端っこに、ちっちゃな影が映ったんだ。俺がさっき命がけで避けた場所のすぐ近くだ。雪ちゃんだ!
雪ちゃんは、なんていうか…人間の反応速度を完全に超えちゃってるような軽い身のこなしで、あのヤバい衝撃波がブワッと広がった瞬間、まるで羽みたいに、全然慣性の影響を受けない感じでフワッと後ろに大きく飛んで、ぜーんぶのダメージを完璧に避けてた!
す…すごすぎでしょ、雪ちゃん!俺だって反応は速い方だと思うけど、それでも避けきれなかったのに、あんなキレイに避けちゃうなんて!もしかして、ルーレットでゲットした素早さアップのバフを、あそこまで使いこなしてるってことか?!
「大谷!」
ちょっと焦った感じの女の声が、ステージの外の方から聞こえてきた。エミリーだ!
すぐに、シュッ――!水の玉みたいなのが飛んできて、俺の体で「パンッ」て弾けた。メロンみたいな甘い香りのする、サッパリした液体が飛び散った。
これって…回復アイテムか?
あったかい感じが体に染み込んできて、あの胸をえぐられるような痛みが、嘘みたいにスッと軽くなった。
「HP:40/100」
「HP:45/100」
……
HPが回復していくメッセージが脳裏に次々と表示されて、「HP:85/100」でやっと止まった。助かったぜ!エミリー、マジで命の恩人だ!
「サンキュー、エミリー!」俺は彼女に向かってお礼を叫び、奥歯をグッと噛みしめ、まだ残ってる痛みをこらえて、素早く地面から起き上がった。
あのクソッタレのパペットジョーカーは、俺に息つく暇もくれやしない。またデカい足を持ち上げたかと思うと、一発、二発と、立て続けに俺たちめがけて踏みつけ攻撃を仕掛けてきた!
ズン!ズン!ズン!
ステージ全体がぶっ壊れそうなくらい、悲鳴を上げ続けていた。俺たちは舞い上がる土煙と激しい揺れの中、ギリギリの回避を続けるしかなかった。
「キャアアアア――!」
女の甲高い悲鳴が、めちゃくちゃな戦場に切り裂くように響いた。
ヤスミンだ!あの女プレイヤーは避けきれなかったらしく、死ぬ間際に、持ってた傘を無意識に広げてガードしようとしてたけど…パペットジョーカーの山が崩れるみてぇな踏みつけの前じゃ、紙切れみたいにペラッペラだった…
また一人、プレイヤーがやられた…ちくしょう!
泣きっ面に蜂で、もう一方じゃ、プレイヤーのカレンが、踏みつけの衝撃波を食らったみたいで、脚を押さえて苦しそうに地面に倒れてるのが見えた。どう見ても重傷だ。
このままじゃダメだ!なんとかあいつの動きを止めねぇと!
俺がめちゃくちゃ焦ってるときに、また頭の上から、あの気味の悪い「ギギギギ」って音が聞こえてきた。
また天井かよ!また来るのか?!
ボト!ボト!ボトボトボト!
数えきれないくらいの小型ジョーカーが、雨みてぇに空から降ってきて、ただでさえメチャクチャなステージに、バラバラと叩きつけられた。今回落ちてきた数は、見た感じ少なくとも三十体はいる。
小型ジョーカーの群れがユラユラと迫ってきたその時、雪ちゃんがスッと動いたの!マシュマロ杖を振って、その杖の先を小型ジョーカーの群れに向けたんだ。そしたら、小型ジョーカーの大群が、見えない力に引っぱられたみたいに、みんな雪ちゃんの方に向かって一斉に突進していった!雪ちゃんはクルッと身をかわして、やつらをパペットジョーカーがまた踏みつけようとしてるデカい足の真下に、うまく誘導したんだよ!
ズドォォォン――!
パペットジョーカーの足が容赦なくドスンと落ちて、歯が浮くようなミシミシバキバキって砕ける音と一緒に、おびき寄せられた小型ジョーカーの群れは、一瞬でそこら中に木っ端微塵にされて転がってた!
こ、この立ち回り…神すぎでしょ、雪ちゃん!これぞまさに漁夫の利ってやつじゃん!




