51 十二人の決死隊
「こ、これ、どうすりゃいいんだよ?」チャカベの声は明らかに震えていて、顔もこわばりまくってた。「ま、まさか…俺たち三十人以上、全員でかかんのか?」
あいつが言うまではまだマシだったけど、口に出した途端、周りのプレイヤーたちの顔色も「サーッ」と一層青白くなった。恐怖と戸惑いがごちゃ混ぜになったその表情は、まるで世界の終わりが突然やってきたみたいだった。
ちっ、こいつら、ほんとヘタレだな。
「そこまではいらねぇだろ」俺はわざと軽く肩をすくめた。「せいぜい十数人いりゃ十分だ。人数が多すぎるとかえって邪魔だし、それで死傷者続出なんてなったら、それこそ無駄ってもんだろ」
なんて言ってみたものの、内心じゃ全然自信なかった。だって目の前のこいつ、体のデカさだけでも、前のタコのボスより何回りもデカいんだからな。
「そ、それじゃあ…誰かが先に行かないとだよね?」カイナの声は蚊の鳴くみたいに小さくて、ちょっと震えてた。「け、決死隊とか…」
その言葉が出た途端、みんなは互いに顔を見合わせ、視線はあちこち泳いで、誰も一番槍になりたがらなかった。空気は一瞬で氷点下まで気まずくなった。当たり前だ、誰が最初に死にに行くなんてごめんだ!
「あ、あのさ…やっぱり強い人が先に行った方がいいんじゃないかな?」誰かが小声でそう呟いた。
突然、誰かが藁にもすがる思いで叫んだ。「白狼様!」
シャッ――!
次の瞬間、全員の視線が、まるでサーチライトみたいに、一斉に俺に集中した。
顔がちょっと熱くなった気がした。おいおいおい、お前ら、どういうつもりだよ!そんな風に責任転嫁すんなって!
「ちっ、しょーがねーな、お前らは」俺はため息をついて、数歩前に出ると、腰からゴルフクラブを引き抜いた。名指しされちまった以上、ここで引っ込むのもカッコ悪いだろ。
「フッフン、先陣を切るってんなら、このハンス様を忘れちゃ困るぜ!俺様の活躍、とくと見やがれ!」ハンスの野郎は、相変わらずカッコつけるチャンスを逃さない。シュタッと俺の隣に飛び出してきて、得意げに改造ボクシンググローブを振り回した。「この最新改良型『高圧スチームインパクトグローブMAX Turbo版』は伊達じゃねえんだ!見てろよ、あいつを木っ端微塵にしてやるぜ!」
こいつは相変わらずだけど、まあ、いると確かに少しは安心できる。
「なら俺も入れてくれよ」トーマスがおもちゃのダーツを数枚ジャグリングしながら、クールに言って前に出てきた。
カレンも続いてやって来て、手にしたパチンコをいじりながら言った。「連射は特訓したからな。四連射くらいなら問題ないはずだ」
「あ、あの…白狼様…わ、私も、お手伝いしたい、です…」
おどおどした声が隣から聞こえた。雪ちゃんだ。
ちょこちょこと俺のそばに駆け寄ってきて、うるんだ大きな瞳は緊張で少し震えてて、小さな手で自分のイメージにぴったりのマシュマロ杖をぎゅっと握りしめていた。
はぁ、この子は本当に…でも、昨日の特訓とあの強力な素早さバフがあるし、たぶん…いけるか?
「うん、それじゃあ頼むな、雪ちゃん」俺はできるだけ頼りになりそうな声色で言った。 雪ちゃんは俺の言葉を聞いて、ぱあっと目を輝かせて、こくこくと力強く頷いた。頬が可愛らしく赤らんでる。「はい!わ、私、足を引っ張らないように頑張りますっ!」
続いて、イ・ユンチョルの野郎が、相変わらずの無口さで、見るからに強力そうな花火筒を手に、黙って隊列の前に進み出て、俺にだけ頷いてみせた。
「こういう場面じゃ、俺も数合わせくらいにはなるだろ。俺の気流攻撃も、少しは役に立つかもしれん」ラマールは手に持った箒の重さを確かめるようにして、落ち着いた口調で言って、仲間に加わった。
「みんなの治療は、私が全力でサポートします」エミリーの冷静な声が響き、手元の医療バッグを軽く叩いて、落ち着いた足取りでスタスタと前に進んだ。
「俺の水鉄砲は高圧水流が出せるから、役に立てるはずだぜ」ナパッタポーンが手に持ったおもちゃの水鉄砲をブラブラと揺らしながら、ついてきた。
「わ、私のロープスリング…た、たぶん、役に立てると思う…」カイナがおどおどしながら肩掛けカバンから、小石を縛り付けたロープを取り出し、ちょこちょこと列に加わった。
「お、俺のビリヤードキューなら、突き攻撃は…た、たぶん大丈夫だ!」チャカベもようやく勇気を振り絞って前に出てきた。ピカピカに磨かれたビリヤードキューを固く握りしめ、額には汗がびっしょりだったけど、声はなんとか落ち着かせようとしていた。
最後に加わったのはヤスミンだった。彼女は見たところ普通の長傘を恐る恐る掲げ、ほとんど聞こえないくらいの小声で言った。「わ、私これ…エネルギー攻撃なら防げる、はず…たぶん…」
よし、俺を入れて全部で十二人。たぶん…足りるだろ?
後ろを振り返ると、前に出てこなかったけど、同じように緊張した顔つきのプレイヤーたちがいた。
カルテルが俺に頷いた。「大谷、頼んだぞ」
石田正弘が緊張した面持ちで叫んだ。「白狼様、頑張ってください!」
ん、わーってるよ。余計なプレッシャーかけんなって。
「それじゃ、行くぞ」
俺は向き直り、視線を再びステージ中央の巨大なパペットジョーカーに向けた。
クソッ、見れば見るほど気味が悪ぃ。あの表情のない木の仮面と、虚ろな両目は、まるで魂を吸い込まれそうだった。ギロッと睨みつけられているようで、心臓がドクドクと鳴り、手のひらに汗がにじむ。頼むから足がすくむなよ!
俺たち十二人は一列になって、ステージ右側の階段を、一歩一歩慎重に上っていった。階段はそんなに広くなくて、めちゃくちゃ気を使った。
一段上るごとに、目に見えないプレッシャーがさらに重くのしかかってくる。周りは不気味なほど静かで、聞こえるのは俺たちの足音と、あちこちから聞こえる、ちょっと荒い息遣いだけだった。
クソ、この感じ、まるで自分からモンスターのデカい口の中に飛び込んでるみたいだ。胃がキリキリ痛み始めた。
俺たちがステージに上がり、あのパペットジョーカーまであと十数メートルってところまで来た、その時――
シュバッ! そいつは、まるでその瞬間に命を吹き込まれたみたいだった!
さっきまで虚ろで無表情だったそいつの顔が、突然ゆっくりと動き、二つの巨大な木の目が、まるで獲物をロックオンしたみたいに、まっすぐに俺たちを睨みつけてきた!
マジかよ?!この反応速度!
次の瞬間、ステージに置かれていたそいつの巨大な両手が、ゴッと持ち上がった!ギギギッと木がこすれる音が、やけに耳障りだった!
やべっ!来るぞ!
「避けろ――ッ!」
俺はほとんど本能で叫びながら、格好なんて気にしてる場合じゃなく、ありったけの力で、みっともなく前方のスペースに飛び込んだ!
ゴゴゴゴ――ン!!!
耳をつんざくような轟音とともに、パペットジョーカーの左のデカい手が、さっきまで俺たちがいた場所に叩きつけられた!ステージ全体がガクンと揺れて、むせるような土煙が舞い上がった!
クソッ!このステージの幅、狭すぎだろ!まともに立ち回れるスペースが全然ねぇ! 幸い、間一髪のところで、ハンスや雪ちゃんたちも反応して、跳んだり転がったりして、ギリッギリでこの致命的な一撃をかわした。みんなの顔には、九死に一生を得たって感じの恐怖が浮かんでいた。
はぁ…はぁ…
俺は地面に突っ伏して、激しく息を切らしていた。心臓が胸から飛び出しそうだった。さっきの大声で喉がヒリヒリ痛む。
だけど、俺たちがホッと一息ついて、体勢を立て直す間もなく――
ヒュン!
パペットジョーカーの右のデカい手が、風を切る音を立てながら、また猛烈な勢いで俺たちに襲いかかってきた!巨大な影が一瞬で俺たちの視界を覆い尽くし、俺は恐怖で息が止まりそうになった!
クソッ!こいつの攻撃、速すぎだろ!息つく暇も与えてくれねぇのかよ!




