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41 血染めの訣別ネックレス

俺はみんなを引き連れて、城の入り口へ飛び込んだ。マジでこんなクソみたいな場所には戻りたくなかったけど、今はもう腹を括って突っ込むしかない。


後ろからはプレイヤーたちがぞろぞろと続いてきた。俺たちが城のロビーに足を踏み入れてすぐ、ドタドタという足音と耳障りなチェーンソーの轟音が追ってきた――数十体のチェーンソー・ジョーカーが、すぐ後を追って突っ込んできたんだ!


こうなったら、城の中にあるワケのわからん仕掛けを使って、あいつらを足止めするしかない!


その時だった――


ゴゴゴゴゴ――


背後から重々しい石の擦れる音が響いた。振り返ると、俺たちが入ってきたばかりの入口に、鋭い棘がびっしり生えた巨大な壁が、地面からゆっくりとせり上がってきていた!


「おいおい!マジかよ?!」隣にいた石田正弘が叫んだ。


やっぱり、城の仕掛が作動した!しかも、前にここから逃げた時とは様子が違う…?今度は後ろからか?


「逃げろ!」俺は叫ぶと、先頭を切ってロビーの奥へと駆け出した。


だが、たいして進まないうちに――ゴンッ!


冷たい壁に思いっきりぶつかった。行き止まりか?!


いや、違う!ハッと顔を上げると、その「壁」に、なんと上に向かって伸びる階段が見えた!


この光景は…あの重力方向が変わるクソ面倒な場所か!考えてる暇なんてない!


俺は数歩下がり、勢いをつけてダッシュ!壁にぶつかる寸前、精神を集中し、頭の中で強く念じた――目の前の『壁』は『床』だ!と。同時に、力いっぱい前へ跳躍した!


次の瞬間、足裏にしっかりと地面を踏む感触が伝わってきた。俺は、さっきまで垂直だったはずの壁面の上に、ちゃんと立っていた!元の床は、今や俺の目の前にある「壁」だ!


「早くこっちへ跳べ!」俺は、下でまだポカンとしている連中に叫んだ。


プレイヤーたちは俺の真似をして、重力変換を試み始めた。何人かは身のこなしが良くてすぐに成功して跳び乗ってきたけど、ほとんどのやつはそうもいかず、急な重力変化にバランスを崩してバタバタと転んでいた。雪ちゃんも「ゴンッ」と『新しい床』にぶつかって、おでこを押さえながら、うるうるした瞳で俺を見上げてきた。


一方、俺たちのすぐ後ろを追ってきていたチェーンソー・ジョーカーどもは、そこまで『賢く』はなかったらしい。


ゴン!ゴン!ゴン!


先頭を突っ走ってきた数体が、前方の『壁』なんてお構いなしに、真正面から激突した。そいつらは顔を上げ、虚ろな目で『壁』の上に立つ俺たちを見上げていた。


その直後――


ゴゴゴゴゴゴ――!!!


やつらの背後から迫っていた棘壁が、容赦なく襲いかかった!


鈍い衝突音とチェーンソーの耳障りな悲鳴が響き渡り、壁に激突した第一陣のチェーンソー・ジョーカーは、一瞬にしてぐっちゃぐちゃの鉄クズとパーツの塊になった!赤いペンキがそこら中に飛び散る!


棘壁が完全に迫り切るその瞬間、予想外のことが起こった――反応が速かったチェーンソー・ジョーカーが数体、なんと俺たちの動きを真似て、体を奇妙にくねらせると、「タンッ」と、俺たちがいるこの『壁』の上に見事に着地したのだ!


そいつらは体から火花と黒煙を散らし、部品をガチャガチャ言わせながらも、その目はしっかりと俺たちを捉えていた。そして、よろよろと起き上がると、再びチェーンソーを構えた!


「嘘だろ?!こいつら、重力ターンができるのかよ?!」チャカベが信じられない、とばかりに叫んだ。


「ぼさっとするな!逃げろ!」俺はすぐに踵を返し、『壁』の上にある階段へと駆け出した。


みんなもビビりまくって、慌てて後に続いた。


俺たちは、ねじくれた城の構造の中を必死に走り続けた。足元の『地面』はしょっちゅう『壁』になり、『天井』になった。周りの景色は前に逃げ出した時と似ているようで、でもどこか微妙に違和感があった。


「し、白狼様…こっちで、本当に合ってるの…?」雪ちゃんが、はあはあと息を切らしながら、半泣きの声で尋ねてきた。


「今はそんなこと考えてる場合か!いいから走るんだよ!」俺は怒鳴り返した。


重力ターンが変わるたびに、ぐらっと眩暈が襲ってきた。何度も、とんでもない方向から鋭い棘が突然突き出してきて、俺たちは必死でそれをかわした。


さらにヤバいことに、後ろから追いかけてくるチェーンソー・ジョーカーの数は、減るどころかむしろ増えていた!さっき重力ターンを覚えたやつらだけじゃない。なんと、俺たちの背後、上の『壁面』から、そのまま落下してくるジョーカーまでいやがった。「ドンッ!」と鈍い音を立てて、すぐ近くに落下してきた!


こいつら…数に任せて俺たちを潰す気か?!しかも、あんな高さから落ちてきてピンピンしてるだと?!プレイヤーだったら、即死じゃなくても重傷は免れないだろうに!


まるで疲れを知らない機械みたいに、ダメージなんてお構いなしで、しつこく追ってきた!チェーンソーの轟音が、この歪んだ空間に反響して、俺の神経をギリギリとすり減らしていく!


まさにその時だった――


「きゃっ!」


短い悲鳴が、隊列の後ろの方から聞こえた!


俺はハッと振り返る。心臓がドクンと跳ねた!


見ると、女性プレイヤーのソフィアが、さっきの重力ターンで足を滑らせたのか、隊列の一番後ろに取り残されていた!そして彼女の周りには、凶悪な形相のチェーンソー・ジョーカーが三体。すでにブォンブォンと唸りを上げるチェーンソーを振りかざし、彼女に飛びかかろうとしていた!


ヤバい!


「ソフィア!」


隊列の前の方にいた彼女の恋人、カルロスが、魂を絞り出すような絶叫を上げると、なんと猛然と踵を返し、すべてをかなぐり捨てるようにして、遅れたソフィアのもとへ突っ込んでいった!


「おい!カルロス!危ない!」俺が止めようとしたが、もう遅かった!


カルロスの身のこなしはなかなか素早い。やつはチェーンソーが振り下ろされるよりも早く、ソフィアの腕を掴むと、ありったけの力で、彼女を俺たちのいる方向へ突き飛ばした!


「きゃあっ――!」


ソフィアはその勢いでたたらを踏み、地面に倒れ込んだ。


だが、カルロス自身は、チェーンソー・ジョーカーの攻撃範囲に身を晒すことになってしまった!


ブシャァッ――!!


生々しい、肉が断ち切られる音が響き、一番近くにいたチェーンソー・ジョーカーが振り下ろした凶刃が、無慈悲にもカルロスの脇腹に深々と食い込んだ!鮮血が一気に噴き出す!


「カルロス――――!!!!」


ソフィアはその光景を目にして、瞬時に瞳孔が見開かれ、顔面からサッと血の気が引いた。彼女はへなへなとその場に崩れ落ち、両足はガクガクと震え、もう立ち上がる気力もないようだった。ただ、絶望的な悲鳴を上げることしかできなかった!


「ぐっ…ぁ…」カルロスは苦痛に呻き、体がふらついた。彼は最後の力を振り絞り、震える手で懐から血にまみれた銀色のネックレスを取り出すと、ソフィアに向かって懸命に投げた。


「ソフィア…これ…現実で…渡し…そびれた…やつ…なんだ…」彼の声は、途切れ途切れだった。


ソフィアは震える手を伸ばし、無意識のうちにそのネックレスを受け取ると、手のひらで強く握りしめた。涙が、まるで堰を切った洪水のように、とめどなく溢れ出した。


その一部始終を目の当たりにして、俺の心臓はギュッと締め付けられるようだった。クソっ…これが、いわゆる崇高な愛ってやつか?愛する人を守るためなら、自分の命さえも顧みない…こんな絶望的なゲームの中で、まさかこんな輝きを目にするなんて…悲壮だが、確かに、胸が痛くなるほど眩しいものだった。


だが、感傷に浸っている場合じゃない!新たなチェーンソー・ジョーカーが一体、倒れたカルロスを回り込み、チェーンソーを振り上げながら、地面にへたり込んでいるソフィアに襲いかかろうとしていた!


「まだ終わってねぇ!走れ!」


俺は叫ぶと同時に駆け出し、ゴルフクラブを振り抜いた!


ガキンッ!


迫るチェーンソーをゴルフクラブで受け止め、そのままいなし、弾かれたチェーンソーがジョーカー自身の頭に思い切り叩きつけられた!


「いつまで呆けてやがる!死にてえのか?!」俺は、魂が抜けたようになっているソフィアに怒鳴りつけた。


そして、素早く手を伸ばして彼女の手首を掴むと、無理やり引き起こし、前方の通路へと必死に走り出した!

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