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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

右手が疼くその勇者はまた異世界を救うそうです。

作者: あきのもと

「うぉぉぉぉ!」


幾戦の戦いを経てたどり着いたこの場所。多くの仲間たちと共にここを目指し結局最後にたどり着くことができたのはたった4人。そのうち、自分を除く三人は大地に倒れている。魔王やその側近たちに挑み皆倒れてしまった。生きているものもいるかもしれないが生きていたとしても重傷ですぐには動けないだろう。側近はもういない。


死んで塵に帰った。


だが魔王だけはいまだに笑みを浮かべながら立っているのだ、向こうもすでに満身創痍であるはずなのに。


俺は不気味に思いながらも最後の力を振り絞り、右手に宿った最後のマナの塊を魔王に叩きつける。


「絶対に負けられねえ!負けられねえんだよ!」


血を吐きながら叩き込まれたその一撃は見事魔王の急所に直撃した。


「クソ!小癪なガキめ、、!だがこれでは終わらんぞ!」


勇者、誠は力を使い果たし薄れゆく意識の中で確かに見たのだ。急所を突かれ首から下を失った魔王の姿を。


その姿をを見た瞬間、勝ちを確信した誠は笑みを浮かべて徐々に力が抜いていった。


(誰かが走ってくる気配がする。)


だがもう目を開けることもできない誠はそれが仲間であることを祈り意識を離した。



____________________________________


次に目を覚ました時に見たのは汚い石造りの地面であった。周りを見渡すと薄暗く汚い部屋に倒れているのが分かった。


(縛られている、、やはり最後に駆けつけてきたのは仲間じゃなかったか。)


だがおかしい。。この部屋は昔見た”あの”部屋によく似ている。


ガチャ!


ドアが開いた。


「おい出ろ罪人!何故お前がここにいるか理解しているか!」


俺はそいつを見て夢でも見ているのかと思った。何故ならこの男はとっくの昔に死んでいるからだ。


(どうなっている)


そういえば自分の体もおかしい。急に体が縮んだように感じるしマナの操作がうまく出来ない。挙句には右手が疼くのだ。


ありえない。


この右手は昔とあるダンジョンで途轍もなく強い呪いを受け疼くようになってしまったのだが、その後いくつかの偶然が重なり、ついに呪いを解くことに成功していたからだ。


(ほんとにどうなっているんだ、まるで時間が巻き戻ってしまったかのような、、いやまさかそんなことが、、)


返答をしない自分を苛立たしく思ったのかのっそりと歩きながら自分をきつく睨みつけすぐそばまで来るといきなり殴ってきた。


「っっ」


殴られた意味から男に意識を向けると入ってきた男は鼻で笑いながら


「はっ!まったく。どうしてこの俺様がガキの輸送なんてしなけりゃならんのだ。いっそ殺してしまうか。」


そういうと腰につけている剣を引き抜こうとする


「おい何をしている。早く囚人を連れてこい」


他の兵士の怒鳴り声を聞き、舌打ちをしながら急いで俺を連れて部屋を出ていこうとする。しかし、ゆっくりとした動作でそのまま部屋の出口付近まで来たところで別の部屋から大きな叫び声が聞こえたことで、兵士は俺を部屋に突き飛ばして鍵をかけ、急ぎ仲間の応援に向かってしまった。


突き飛ばされた俺はただ茫然としながら状況を整理しようと懸命に頭を働かせていた。10分ほどすると別の兵士がきて


「さっさと行くぞ」


と言いながら自分を縛る縄を切ってきた。事情がよく分からないがどうやら偽物の兵士がたすけてくれるようだ。さっさと縄を外すと急いで外の廊下を出て走っていると何度か兵士と遭遇しそうになったが偽兵士の機転で何とかやり過ごす事ができた。そして廊下を出るとついに自分がよく知るあの場所にいるのだと理解した。


そこには巨大な魔法陣が書かれていた。


自分はこの魔法陣が何なのかよく知っていた、なぜならば自分はこの魔法陣で召喚されたのだから。


ここに召喚の魔法陣があるということはかなりまずい。ここはおそらくあの古代遺跡だ。だとすると、、


(間違いなく奴らがいる!)


とにかく急ぎ外に出なければならない。偽兵士に導かれながら今まで以上に必死に走り、ようやく古代遺跡を離れ木々あふれる外に出ることができたのだが、この囚人服はいくら何でも目立ちすぎる。偽兵士もそれはわかっていたのか


「ちょっと待ってろ」


と言い近くの茂みの中から粗末な目立たないような服を出してきた。おそらく隠しておいたのだろうその服をありがたく着させてもらい、急いで古代遺跡から距離をとるため、また走り出した。


ちらりと後ろを振り向くとやはりあの自分を召喚するのに使われた忌まわしい古代遺跡であった。

だがどうして魔王と戦っていたのに目が覚めるとあの遺跡にいたのだろうか。しかも、体が縮んでいるし死んだ者も生きているし。どう考えても時間が巻き戻ったように思うのだがそのような魔法聞いたこともない。謎は深まるばかりである。


古代遺跡を後にしてだいぶ離れたところに民家がポツポツとみられるようになるとその一つに偽兵士は近づいてなにやら住人と話をし始め、終わると中に入ってしまった。状況も分からなかったのでとりあえず偽兵士の後に続いて入ろうとする。するとその住人は誠の行く手を遮ろうとした


「そいつはいいんだ」


偽兵士は家の中から住人に声をかけ中に入るように促してきた。


中に入るとすぐに


「助けてくれてありがとう」


と頭を下げた。すると偽兵士は困った顔で


「いやいや、単なる偶然さ。あそこで囚われている仲間を何人かを脱出させようとしていたところに君を見かけて、子供を置いていくのも忍びないので連れてきたんだよ」


「子供?俺はもうすぐ25になるのですが」


「またまた。よくて12、3くらに見えるけど?もしかして俺何か疑われてる?まぁ確かにあのタイミングで現れたら警戒するか。」


「!!、、ちょっと待っててもらえますか?」


そういうと近くにテーブルに置いてあった手鏡を見つけ自分の顔を見た。


(明らかに若返ってる!)


驚愕する自分をよそに偽兵士はなぜこんなことになったのかをゆっくりと話始めた。


「知ってるかもしれんが、魔王を倒すために勇者を召喚する魔法陣を起動させる。そのために何万何十万という多くの人間の生贄が必要なんだと。だが犯罪奴隷もそこまで用意できない。じゃあどうするか。簡単な話だ。罪を捏造したり微罪だろうが片っ端から犯罪奴隷に落としていくのさ。まぁ魔王が強すぎるて成す術がないからやむを得ず勇者召喚をするんだろうが市民からしたらたまったもんじゃない。まだ魔王に殺された方がマシじゃないかっていう奴らもいるくらいさ。俺たちは勇者召喚に罪のない、もしくは少ない奴らの命を使うな!って考えてる活動家たちの集まりなのさ。まぁ重罪人たちを使うんなら勝手にしたらいいがね。」


途中から熱のこもり始めた演説のような説明を聞いて、自分が責められているように感じてしまった。


「そういえば、自己紹介がまだだったな、俺はカシスってんだ。よろしく」


「俺は誠。清水誠だ。よろしく。」


誠はそういうと握手をしながら


(もしかしてまた魔王倒さなきゃいけないのか。)


はぁ、と内心溜息をついた。


まだ誠の魔王討伐は始まってもいない。


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