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第61話 ラウンド3

「ぎひひ、よく、来たな」


「……」


 シェルターを想起する広い空間。


 そこでバニーハートと鷹守幽(たかもり ゆう)は対峙した。


「ここは旧日本軍の、実験施設のひとつ、だったそうだ」


 そんなことは知っている。


 ウサギ少年の言葉に、黒衣の暗殺者はそんなしぐさをした。


「鷹守幽、ここがおまえの、墓場になる」


 それはこっちのセリフだ。


 今度はそんなふうにほほえんで見せる。


「ぎひ、たっぷりと、切りきざんでやるぞ」


 お互いの口角がきしりとゆがんだ。


 両者、前方へ歩み出し、じわじわと間合いを詰めていく。


 そしてついに、制空権が触れた。


「どうした? かかって、こないのか?」


「……」


 相手の「起こり」を狙おうと、探りあっているのだ。


「ぎひ、そのきれいな顔を八つ裂きに――」


「バニーハート」


 ここではじめて、バニーハートに対し、鷹守幽は言葉を発した。


 ウサギ少年は内心、びっくりしている。


「なんだ、おまえ……口が、利けたのか」


 グッと身を寄せて、黒衣の暗殺者はささやく。


「愛してる」


「……」


 バニーハートの顔面に、拳がめり込んだ。


「ぶぎゃっ――」


 後方へ吹き飛ぶも、トンボ返りをして着地する。


「ぎひ……」


 自分としたことが迂闊だった。


 まさかこんな機先の制し方があったとは……


 鼻が折れているな。


 しかし、そんなことはどうでもいい。


 屈辱、屈辱だ。


 この僕が、こんなやつにまんまと乗せられ、遅れを取るなど……


 鷹守幽はニヤニヤと笑っている。


「かわいい、ウサちゃん」


 断片的なセリフが恐怖をあおる。


「ぎふ、許さないぞ? 僕にこんな真似をして」


 バニーハートは鼻を戻し、袖で血をふいた。


「僕は、人形」


 腰の両サイドにくくりつけてある、対のジャックナイフを抜く。


「おまえも、人形」


 両手をクロスさせ、姿勢を落とし、かまえを取る。


「どっちも、人形」


「何が、言いたいんだ?」


 クスリと笑う。


「どっちの人形が、強いかな?」


「……」


 得体の知れないやつ。


 怪人・バニーハートをして、そう思わせた。


 彼も負けじと、袖からアイアン・クロウを露出させる。


「この僕が、おまえなんかに、負けるとでも?」


 ウサギの爪が大きく広げられる。


「みんな、そう言っていた。僕に、負けたやつらは」


 このセリフには、いやおうなく火がつけられた。


「なめくさりやがって……今度こそ、八つ裂きにしてやる……!」


「おいで、ウサちゃん」


「幽うううううっ――!」


「――っ!」


 バニーハートと鷹守幽。


 宿命にも似た彼らのラウンド3は、このようにしてその幕を開けた。

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