表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/84

第28話 ひと時

 鬼堂龍門(きどう りゅうもん)とのやり取りから一夜が明け、月曜日の午後となった。


 週の始めとは憂鬱なもの。


 それもあいまって、ウツロは思索部の部室で物思いにふけっていた。


 聖川清人(ひじりかわ きよと)古河登志彦(ふるかわ としひこ)教諭に呼ばれ、先ほど席をはずした。


 万城目日和(まきめ ひより)、いまは柿崎景太(かきざき けいた)の姿をしているが、彼女の存在が気になる。


 どんな気持ちでいるだろう?


 あんなことになって……


 きっと傷ついている。


 俺が何か、声をかけてあげなければ。


 そんなふうに思って、うしろのほうへさりげなく視線を移した。


「うわ――」


 目の前に彼女の顔があった。


 化けているかっこうだとだいぶ雰囲気は違うが、ウツロのほうをじっと見つめている。


「なあ、ウツロ」


「な、なんだ?」


「ふふっ」


 万城目日和はほくそ笑む。


「昨日はうれしかったぜ? おまえ、見かけによらずだいたんなのな」


「悪いかよ」


「やっぱ最高だよ、ウツロ」


「ん……」


 唇がとがっている。


 ウツロは生唾を飲み込んだ。


「俺のこと、心配してくれてただろ?」


「当たり前だろう?」


「おまえだって、へこんでるクセによ」


「へこんださ、そりゃ」


「なんで過去形?」


「おまえと、その……」


「そんなによかった? 俺」


「……すごく」


「わ~お、うれしいねえ。な、な、龍子(りょうこ)とどっちがよかった?」


「無体だな、日和。比べられるものじゃないだろう?」


「ふうん、やさしいんだな」


「近いぞ、誰かが来たら……」


「どうだっていいじゃん、そんなこと……」


「ん……」


「かわいい、ウツロ……」


「あ……」


 キリィっと、部室のドアが軋んだ。


「……」


 真田龍子(さなだ りょうこ)が絡まる二人をのぞき込んでいる。


 世にもおぞましいものを見ているような形相だ。


「あ、いや、これは……」


 ウツロは青い顔になって弁明をしようとしたが、


「死ね」


 少女は制服をひるがえして去っていった。


「ああ、終わった……」


 ひざが震える。


「あ~あ、でも、これでウツロは俺のものな。だろ?」


 万城目日和はますますしな垂れかかってくる。


「龍子、待ってくれ! これには深い理由が――」


 ウツロは彼女をおしのけて、真田龍子の背中を追った。


「ちぇ~」


 万城目日和はがっかりしたが、ウツロとのなれそめを思い出して、少し顔が赤らんだ。


 時間が時間だったから、彼の荷物もまとめて、早々に部屋を去った。


「トイレ、寄ってくか」


 ズタズタにされていたトカゲ少女の心は、だいぶ楽になっていたのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ