番外編 彼の好きな話
最近体調を崩しておりまして、特に頭痛が酷く、なかなか上手くストーリをまとめられない状態が続いていまして……。
なので大変申し訳ないのですが、今回は頭を使わずノリと勢いだけで書いた番外編でご容赦下さい。
来週中には本編の方も更新したいと思います。
(雫がトリッキー過ぎて、上手くまとめるのに知恵熱が出てるのかも?)
休み時間、教室から出て行く晴翔を目で追った私は、さっきまで彼と話をしていた赤城君の席に近づいた。
「ねぇねぇ赤城君」
「ん? どしたの東條さん?」
赤城君はにこやかに笑いながら、私の方を向いてくれる。
「あのね。実は晴翔の好きな話題を教えて欲しくて」
「ハルの好きな話題?」
「うん」
晴翔と付き合い始めて、さらに同じ家で暮らすようになって、毎日彼と会話を交わしている。
けど、私はふと気付いてしまった。
会話の内容は、いつも晴翔が私に合わせてくれてるなって。
晴翔とお話ししていると、すごく楽しくて時間があっという間に過ぎちゃう。
なんでこんなに楽しいのかなって考えた時に、話の内容が私好みのものばかりだってことに気がついた。
もちろん、彼との会話が楽しいのはそれ以外の要因も大きいんだけど。
晴翔が私と目を合わせてくれる事に胸がドキドキしたり、優しく相槌を打ってくれる事にキュンとしたり……。
でも、晴翔が私に話を合わせてくれているのは事実だから、今度は私が晴翔に合わせた話をしたい。
そう説明すると、赤城君は「なるほどね」って頷いてくれた。
「いやぁ、東條さんは健気だね。ハルのやつめ、羨ましいぞ!」
彼はそんなことを言いながらも、晴翔の好きな話題について考えてくれる。
「ハルの好きな話題かぁ〜そうだなぁ。あいつ料理するから、その話とかはどう?」
「あ、料理の話はね。最近一緒に朝ごはんとかを作ってるから、その時に結構話してて……できればもう少し新鮮味のある話題があれば、嬉しいのですけど……」
私は「わがままなこと言ってごめんね」と赤城君に手を合わせる。
彼は「そっか、それじゃあ」と嫌な顔をしないで考えてくれる。
晴翔と付き合う前は、赤城君ともまったく接点がなくて、私は勝手に彼のことを『ウェイウェイしてる軽い感じの人』って思っていた。
けど、実際に話してみると、面白くて、でもちゃんと誠実に対応してくれる人だってことがわかった。
私は密かに、咲とお似合いなんじゃないかなって思ってる。
この話をすると、きっと咲は「いや、ないない!」って否定すると思うけど。
「ハルが東條さんと盛り上がれる話題は……あ! そうだ!」
私が赤城君と咲の関係について考えてると、彼が何か思いついたように、ポンって手を叩いた。
そして、ニヤって笑いながら私に教えてくれる。
「東條さんがドン引きするくらい、ハルがノリノリになる話題を教えてあげるよ」
そして私は、赤城君から取って置きの話題を教授された。
ー•ー•ー•ー•ー•ー•ー•ー•ー•ー•ー•ー
夕食も食べ終わり、お風呂にも入って歯も磨いて、あとは寝るだけとなった私は、そっと晴翔の部屋の前に立つ。
そして、赤城君から教えてもらった話題を晴翔に振ると、どんな反応が見られるのかワクワクしながら扉をノックした。
「晴翔、入ってもいい?」
すると、少しだけ間を空けてから返事が返ってくる。
「どうぞ」
私は扉を開けて部屋の中に入る。
晴翔は寝る前の習慣である勉強をしていたみたい。
「ちょっとね、寝る前に晴翔とお話ししたいなって思って。いいかな?」
「うん、もちろん。おいで」
晴翔は机からベッドに移動すると、私を招き入れてくれる。
嬉しくなっちゃった私は、小走りで彼の隣まで行く。
「で? なんの話をしたいの? もしかして、前に綾香が買おうか迷ってた服の話?」
「ううん、今日はね、晴翔にちょっと聞きたいことがあって」
「聞きたいこと?」
早速私に話を合わせようとしてくれる彼に、口元がニヤけてしまうのを感じつつ、私は赤城君が教えてくれた話題を晴翔に提供する。
「あのね。太陽が寿命を迎えると、ブラックホールになるって本当?」
「え?」
私の質問に、晴翔は小さく目を見開いてキョトンとした顔をする。
ちょっと待って、今の晴翔の表情とても可愛いんだけど! 写真撮りたい!!
「えっと……綾香は、それが気になるの?」
「うん。今日ネットでそんな記事を見て、本当なのかなぁって」
赤城君から教えてもらった晴翔がノリノリになる話題。
それは宇宙に関する話。
彼の話によると、宇宙の事になると晴翔は目の色を変えてグイグイと話をしてくるみたい。
「ねぇ、晴翔。太陽はいつかブラックホールになっちゃうの?」
「あぁ……それは、その話……本当に聞きたい?」
「うん! 聞きたい!」
「そっか……結論から言うと、太陽はブラックホールにはならないよ」
「あれ? そうなの?」
「うん。太陽がブラックホールになるには、あまりにも小さすぎるんだよ」
「太陽って小さいの?」
「ブラックホールになるような恒星を基準にすると、だけどね」
「そうなんだ。じゃあ太陽は寿命を迎えるとどうなるの? そもそも太陽の寿命ってなに?」
私は、頭に浮かんだ疑問を投げかける。
すると、晴翔の目の色が明らかに変わる。まるで、ヒーローショー開幕直前の小ちゃな子供みたいなキラキラ輝く目になってる。
可愛い……。
「太陽や恒星の寿命っていうのはね、中心核での核融合を行える期間のことだよ」
「か、核融合……」
事前に赤城君から「でも、ハルに宇宙の話をしたら、知恵熱が出るくらい難しい話をマシンガントークされるから、覚悟しといた方がいいよ?」って忠告されていた。
でも、こんなにワクワクして話す晴翔は貴重だし、もっと見ていたい……。
もう、覚悟は決まってる! 綾香、行きます……!!
「か、核融合ってなに?」
私の質問に、晴翔の瞳がさらに輝く。
「核融合っていうのは、簡単に言うと軽い原子核がくっついて重たい原子核になることだよ」
「原子核が重たくなるとどうなるの?」
「エネルギーが発生するよ。実際に太陽の中心では水素が核融合反応してヘリウムになってる。この時、質量の一部がエネルギーに変換されてるんだ」
「質量の一部がエネルギー?」
質量って重さのことだよね? 重さの一部がエネルギーになってるってこと?
「簡単に説明するとね。水素の原子核の重さが1だとすると、その原子核が2つ合わさってヘリウムの原子核になる。つまり、1+1でヘリウムの原子核の重さは2になると思うでしょ? でも、実際にヘリウムの原子核の重さは1.8くらいになるんだ」
え? 1+1が1.8? 全然意味がわからない……。
「残りの0.2は?」
「それがエネルギーになるんだよ。質量はエネルギーなんだ。これは特殊相対性理論で、世界一有名な方程式って言われてるE = mc2で証明されてる」
「特殊相対性理論……あ、でもE = mc2はなんか聞いたことある。その公式って凄いの?」
「凄いよ! この方程式のEはエネルギーを表していて、mは質量、cはただの定数なんだ。つまり、これはエネルギーと質量が変換可能ってことを表しているんだよ!」
あ、晴翔のテンションが一段階上がった!
全然、話にはピンとこないけど、グイグイくる晴翔はもっと見たいから、もっと質問しちゃお。
「その、エネルギーと質量が変換できると、何かすごいことが起きるの?」
「うん! さっきcはただの定数って言ったけど、これは光の速さを表していて、その光の速さは約30万㎞/sなんだ。それの2乗だから、質量がエネルギーに変換されると、莫大なエネルギーになる。実際に、原子力発電はウランの核分裂によって質量が減少する。その減少した質量がエネルギーに変換されているんだよ。ちなみに、減少する質量は元の質量の0.1%くらいだったかな?」
すごい活き活きと話をしてくれる!
晴翔がマシンガントークをしてる!
「さらにE = mc2の凄いところは、エネルギーさえあれば、そこから物質を生み出せるってことなんだ! 実際に人類は実験でエネルギーから物質を作り出す事に成功してる!」
「へ、ヘェ! 凄いね! その……その実験で何がわかるの?」
全然凄さがわからない……。
けど、晴翔がこんなにも興奮してるって事は、きっと凄い事なんだろうな。
「この実験でわかることはね、ビックバン直後の宇宙の状態を知ることができるんだよ」
「ビックバン直後の宇宙……」
「うんうん! その頃の宇宙は、超高温かつ超高圧で物質もエネルギーの状態だったらしいんだ。でも、宇宙が急速に膨張したおかげで、密度と温度が下がってエネルギーは粒子へと変換されるようになった。ここでさらに、ヒッグス粒子っていう物質に質量を与える素粒子の働きで、電子やクォークが動きにくさを得て結合してハドロンを形成するようになったんだ」
ヒッグス? 質量を与える? クォーク? ハドロン? だ、ダメだ……晴翔がなにを言ってるのか全くわからなくなっちゃった……。
話を私でも理解できるところに戻そう……。
「す、すごいねハドロン! と、ところで、核融合と太陽の寿命の関係の話なんだけど……」
「あ、ごめん話が逸れてたね。えーと、太陽が潰れずに形を保てているのは、核融合のおかげなんだよ」
ふぅ、まだギリギリ私の理解できる範囲に話を戻せた……。
て、え? 太陽が潰れる? どういうこと?
「太陽って潰れるの?」
「そうだよ。太陽は質量が大きいからね。太陽系における太陽の質量の割合は99.86%もあるから、重力が強すぎて潰れちゃうんだよ。でもこれに、さっきの核融合のエネルギーが反発して、潰れずに済んでるんだ」
「じゃあその核融合が出来なくなったら、太陽の寿命がきて潰れて終わるってこと?」
「まぁ、大体そんな感じ。その前に赤色巨星っていう状態になるけどね。それから白色矮星っていう余熱だけで光る星になるよ」
なるほど……色々と疑問が浮かぶけど、一つ一つ質問してたら頭から湯気が出そうだから、今日は取り敢えずスルーしておこう。
「じゃあ、私がネットで見た太陽がブラックホールになるっていうのは嘘だったってことだね」
「そうだね。でも恒星がブラックホールになるのは本当だよ? 太陽よりも25倍くらい質量があると、その星はブラックホールになる」
「太陽の25倍……想像もつかないね」
「だよね。理論的にはこれより小さくてもブラックホールになる可能性はあるけど、やっぱり25倍くらいが、中性子星とブラックホールの境目になるみたいだよ」
「中性子星?」
なんだろ? 初めて聞く単語だ……あ、晴翔の目がいまキラーンて光った!
「中性子星はブラックホール一歩手前の天体で、宇宙一重たい天体でもある。角砂糖一個分で数億トンとかの重さがある究極の天体だよ」
「へ、へぇ……凄いね! それも太陽みたいな星が寿命を迎えるとできるの?」
「その通り! 中性子星は超新星爆発で生まれる」
「あ、その超新星爆発は私も聞いたことあるよ! 凄い爆発のことでしょ?」
「そうだね。さっきも言ったけど、恒星は自身の重力で常に潰れようとしてる。これに抗うのが核融合のエネルギーなんだけど、質量の重たい恒星は太陽と違って水素以外にもヘリウムや炭素、酸素なんかも核融合できちゃうんだ。そして最終的に鉄が出来る。で、鉄は最も安定した原子核を持つからそれ以上核融合できない。つまり恒星を支えるエネルギーがなくなるんだ。その瞬間、恒星は中心のコアに向かって物凄い速さで収縮する。その時、中心の鉄で出来たコアは物凄い圧力で潰されて電子が原子核にくっついちゃう。すると陽子が電子を捕獲して中性子になるんだ。で、中性子にはこれ以上潰れない縮退圧があるから、潰れた恒星はコアで跳ね返されて宇宙空間に吹き飛ばされる。これが超新星爆発の仕組みだよ」
「ワァ! スゴイネ!」
ゼンゼンイミガワカリマセン。
ヨウシガデンシヲホカク? チュウセイシノシュクタイアツ? ウチュウハスゴイデスネ。
「それで、この絶対に潰れない中性子星がさらに潰れるとできるのがブラックホールってわけ」
「え? そのチュウセイシセイ? は絶対に潰れないのに、潰れちゃうの?」
「そうなんだよ。中性子星が潰れないのは、パウリの排他原理によるものなんだけど、これはフェルミ粒子は同じ状態だと同一の空間に存在できないって原理なんだ。だからフェルミ粒子はグラスマン数っていうちょっと特殊な数字で表されている。さらにここには、ハイゼンベルグの不確定性原理も絡んでいてその原理を数式で表すとΔx•Δp ≧ħ/2 になるんだけど、これは位置を正確に把握すればするほど運動量が増すってことなんだよね。それで、中性子の塊である中性子星は、より正確に中性子の位置を観測しているって事になるから、ハイゼンベルグの不確定性原理によって運動量が跳ね上がるんだ。簡単に言うと、中性子星という空間に押し込められた中性子が滅茶苦茶に暴れたがっている状態かな? で、これらの力が縮退圧になって重力に抗っているんだけど、それでも質量が大きすぎると、縮退圧が負けて潰れちゃうんだ」
「ナルホドネ。ウンウン、ジュウリョクッテスゴインダネ」
パウリの排他原理……駅前にできるパン屋さんの名前かな? ハイゼンベルグはコーヒーショップかも。なんか美味しそうだなぁ……。
「えーっと、その潰れない星が潰れたらどうなるの?」
私がオーバーヒートしそうな頭を振り絞って質問をすると、晴翔の表情がとても嬉しそうに輝く。
あぁ……この笑顔が見れただけで私は幸せだぁ……。
「それは誰にもわからない。ブラックホールに崩壊した中性子星の周りには事象の地平線っていう、光さえも脱出不可能な領域があるんだ。その事象の地平線の内側と外側では、相互作用が一切ないから観測のしようがない。一般相対性理論によると、特異点と呼ばれる点に無限大の密度が詰まっている箇所があるとされているけど、実際にはわからない。ブラックホールの中は現在の物理法則が崩壊してしまう領域なんだよ」
「そうなんだ……凄いねブラックホール」
「うん。でも、一般相対性理論と量子理論が統一されて量子重力理論が確立されたら、ワープとかも出来るようになるかもしれないよ?」
「え? ワープ? それ本当?」
なんか、話がいきなりSFに飛んだ? 私からかわれてる?
そう思って晴翔の目を覗き込むけど、彼の目は至って真面目なものだった。それどころか、まるで虫取りカゴと虫取り網を持った少年みたいな目をしてる……。
可愛い……。
「本当だよ。わかりやすく説明すると……」
晴翔はテーブルの上に一枚の紙を用意して、そこに二つ点を書いて、片方をAもう片方にBって書き込んだ。
「A地点からB地点に普通に行こうとすると、紙の上をこうやって水平に移動するしかない」
晴翔はA点から一本の線を引いてB点に繋げる。
「でもね。この紙をこうやって折り曲げれば……」
晴翔はそう言いながら、紙を折り曲げてA点とB点をくっ付けちゃう。
「A地点とB地点がくっついて、一瞬で移動できる。これがアインシュタイン-ローゼン橋ってやつだよ」
「……う〜ん。理屈はわかるけど……それって可能なの?」
「理論的には破綻していないから、可能ではある。空間を曲げるのも、一般相対性理論では、空間は滑らかな幾何学上の舞台として扱って、それは物質と相互作用して歪むから、曲げること自体は可能ではあるんだ。でもね、人類がこの原理でワープするのには大きな問題が幾つもある」
ま、また出た一般相対性理論!!
この単語が出ると、晴翔の目の輝きが増す気がするんだよね!!
「その問題ってなんなの?」
「まず一つ目は、空間を曲げるのに必要なエネルギーが信じられないくらい膨大ってこと。でもこのワームホールは自然界にも存在している可能性があって、そこがブラックホールの中の特異点だっていう科学者もいる。でもブラックホールはさっき言ったみたいに事象の地平線があって、入ったら最後、2度と戻ってこれない。それどころか、化け物級の潮汐力で一瞬にして素粒子レベルに分解されてしまうんだ」
「それじゃあワープは無理だね」
「そうなんだ。さらに、空間は時間とも密接に関係していて、空間が歪むと時間も歪む、つまり時間の流れる速さが遅くなる。もし人間が潮汐力とかの問題をクリアしてワームホールを通過しても、ワープした瞬間、その先は1万年後の世界でした。みたいな事が起きるかもしれない」
「それじゃあワープする意味がないね」
「だよね。もし実際に人類がワームホールを作るとしたら、重力を操作する技術と、あともう一つ重要なのが、負のエネルギーを扱えるようになるってこと。でもこの負のエネルギーはまだ少ししか観測されてなくて、実用化するのは夢のまた夢の話なんだよね」
「そっかぁ、人類がワープする未来はまだまだ先だね」
「うん。でも理論だけの話なら、ワームホール以外にも光速を超えて移動する手段があって、それがアルクビエレドライブって言うんだけど、これは宇宙のすべての領域が膨張していて、それは光速を超えているっていうところから着想を得ているんだけど、まず宇宙船を泡みたいな膜で覆って、その後方の空間を……って、ごめん! なんか俺夢中になって話してた。こんな話、綾香は面白くないよね?」
晴翔はハッとした表情をすると、少し恥ずかしそうに頬を赤らめて話を中断しちゃう。
あぁ……凄く楽しそうに話す晴翔を眺めていたのに。
もっとずっと、今の晴翔を眺めてたい!
「ううん! いまの話すっごく面白いよ! もっと聞かせて!」
「ほ、本当に?」
「ウンウン! もっと晴翔の宇宙の話聞きたいっ!」
「じゃ、じゃあ……」
晴翔は遠慮するような顔をしつつも、誘惑には勝てなかったみたいで、私の表情を窺いながらまたゆっくりと話し出す。
ヤバいかも……いまの晴翔が新鮮すぎて、胸のトキメキが止まらない! 晴翔に宇宙の話をしてもらうの、癖になっちゃいそう!
「アルクビエレドライブは一般相対性理論の基本原理の一つである光速度不変の原理に反することなく、光速を超えられる画期的な理論なんだけど、とても厄介な副作用もあって……」
私は、その後も夜遅くまで宇宙について語る晴翔をうっとりと眺め続けた。
「東條さん、ハルとは話できた?」
「うん! いっぱい話せたよ! ありがとう赤城君!」
「それは良かった。で? 話は理解できた?」
「ぜんっぜん! でもね、私もちょっとは賢くなったよ?」
「お? そうなの?」
「うん。あのね、E=mc2はね、正しくはE=γmc2で、このγはローレンツ因子って言ってね……」
「あ、ごめん東條さん。俺ちょっと職員室に用事があって、その話は後で聞きます! じゃ!」
「あ、待って! ローレンツ因子は光速度不変の原理に深く関わっていて!」
「ハルのやつ! なに東條さんを洗脳してんだよ! 少しは加減しろ宇宙オタクめ!!」
「物体は光速に近づくと重くなって、長さも縮むんだって!」