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夜の散歩でやったこと

作者: 山吹弓美

 その晩ね、アタシはいつものように散歩に出たのよ。

 日課よ。昼間は眩しくて暑いから出たくないけど、一日中閉じこもってるのもやになるしね。それにまあ、お仕事でもあるもの。

 でまあ、近くの公爵家のお屋敷に行ったわけ。その晩はパーティやっててね、シャンデリアの明かりくらいなら平気だから近寄ってみたの。招待状なんてないけど、アタシなら窓の外からホールを見ることなんて造作もないわ。


「お前との婚約は、この場で破棄する」


 あら。

 パーティに招待された主賓のはずの馬鹿王子殿下、何やらおかしなこと言ってるわねえ。三男ていう事もあって、このお屋敷のご令嬢に婿入りするはずだったんだけど、いいのかしら。

 それに、馬鹿息子が腕にぶら下げてるのは何よ。おっぱいの先っぽ見えそうな、襟ぐり広すぎるドレス着たエロ娘。足も胸もびろーんと露出するなんて、その手のお仕事する人のお衣装じゃないのかしら。顔はどこぞの伯爵家の娘なんだけど。

 それに引き換え、変なこと言われて涙目のご令嬢のなんと清楚なこと。露出度の低い、質の高い布を幾重にも重ねられたドレスが良いわねえ。結い上げられたうなじから醸し出される、ちょいエロな感じもいいじゃない。


「わたくしは、その方には何もしておりません」


 ……ただ、その台詞は違うでしょう。清楚なのは見た目だけ、ってことをアタシは知ってるわ。

 ほら、アタシの日課、夜の散歩じゃない? よく立ち寄るお屋敷の一つがここ、ご令嬢の実家のお屋敷なんだけどさ。最上階の自分の部屋で彼女ってば、夜な夜なすごい顔してるのよ。


『うふふ。あの馬鹿王子め、エロ女に騙されるなんて覚えてらっしゃい。あの女を殺して、惚れ薬でわたくしに振り向かせて差し上げるんだからふふふ』


 とか何とか言って、こう黒呪術の本めくって必死に魔法陣書き写したり、薬物調合したりしてるわけ。

 高層階のお部屋で、お付きもグルらしいから誰にもバレないとか思ってるんでしょうけど残念ね。アタシに高さ、関係ないもの。

 そう、このご令嬢、何もしてないわけじゃない。黒呪術で呪い殺そうとしてるとか、王族に惚れ薬とかって違法なわけよ。よそのお国は知らんけど、この国ではそうなの。

 なので、ちょうどいいわ。アンタの部屋からくすねた魔法陣の写しとか薬物の一部とか、放り込んであげましょうぽいぽいっとな。


「み、見ろ! こ、これが証拠だ!」


「どうして! ちゃんと隠していたはずなのにっ!」


 うふ、楽しいことになってるわあ。

 まあ、ご令嬢もそうなんだけどエロ娘の方もね。そのおっぱいの上に輝くネックレス、魅了効果持ちじゃないのさ。

 だめよお? 一国の王子殿下に魅了なんてかけちゃ。遠距離攻撃で鎖を切って、効果も切っちゃえ。えいっ。


「きゃあああああ! あたしのネックレス、ってぎゃああああああ!」


「……あ、あれ? ち、痴女だあああああ!」


 あのネックレスの魅了効果が切れたことでぽかんとなった王子殿下、慌ててエロ娘の腕を振りほどいた。勢い余っておっぱいぽろん、とかなっちゃってるけど、それはそんなドレス着たアンタが悪いのよ? 痴女扱いされてるし。

 あはは、混乱しまくって楽しーい。おっと、馬鹿殿下に黒呪術かまそうとしたご令嬢も動けないようにしておいて、アタシは退散しちゃいましょ。


 さ、馬鹿王子の馬鹿ご両親にご注進申し上げないとね。公爵家のご令嬢がやらかしたことと、伯爵家のご令嬢が以下略も報告しなくちゃならないもの。

 これがアタシ、いわゆる『王家の影』のお仕事であり日課なのよ。張り付くお役目ならともかく、アタシみたいに外回り担当は大変なのよねえ、もう。

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