体育祭には3割増しの魔法がある
「キャー! 御厨く〜ん!!」
ハートマークが飛び交うグラウンド。
たった今クラス対抗リレーで走る彼らに、黄色い声援が送られています。
そう、体育祭で活躍する彼らには、推定3割増しにイケメンに見える魔法がかかるらしい(私調べ)。
普段の制服では計り知ることの出来ない、彼らの筋肉とかスタイルとかその運動能力が! 私達女子の目の前に余すことなく晒される!
御厨君は校内一運動神経が良くスタイルも良い男子。
しかし私が気になっているのは……、山本君。
普段は静かな文系男子なのに、意外なあの筋肉と運動能力! 結構着痩せするタイプなのかなぁ。細マッチョってやつだよね。そしてあの長い手脚も素敵ー。
「はぁ〜、素敵よねぇ……」
そして私は友人に宣言する。
「私! 体育祭が終わったら絶対に山本君に告白する!」
友人は大して驚くことなく、
「ふーん。ま、頑張って」
と、そう言った。
私は友人のそのそっけない態度にもめげず、大興奮の体育祭の1日は終わった。
――3日後。
日常に戻った私達。
廊下を歩いていると、クラスの違う山本君とすれ違う。
……悲しいかな、体育祭の時の彼の素敵オーラは消え失せていた。
「そーいえば。告白するの? 山本君に」
友人からの質問に、
「あー…、ううん。なんか、よく分かんないけど、もういいかなって……」
私が戸惑いながらそう答えると、友人は分かってた、とばかりに頷いた。
「……だろうね。だって、去年の体育祭でも球技大会の時にも言ってたから。多分体育祭が終わったら、またいつもみたいに熱が冷めるんだろうなーって思ってた」
友人のその悟りきった言葉に私は驚く。
「え! そうなの!?」
私は衝撃を受けた。
「――ま、誰に迷惑をかける訳でもないからいいんじゃない?」
友人はそう言って慰めてくれた。
「う……。そうなのかなぁ、……やっぱり、『3割り増しの魔法』にかかっちゃってたんだよね、私。そして体育祭が終われば魔法はきっちり解けちゃうのかぁ……」
「ナニソレ」
と友人は笑ったが、私の『3割り増し魔法』の研究結果を話すと、
「うーん、確かにそういうところはあるかも。ただ人によって魔法にかかる対象や種類は違うかもね」
と、概ねその話に同意してくれた。
――そうして、私の体育祭は終わった。
しかし、また次の体育祭には魔法にかかるんだろう。
……いや、その前に球技大会かな?






