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二日目④ 「氷枕!ああっ氷枕もらえるんですねえ!」編

時間が経ち、病院は消灯時間を迎える。

肺炎おじさんの部屋は個室だからか、様々な治療を受けているからか、部屋の電気は特に消されていない。


そんな中、肺炎おじさんはゴホゴホしていた。

咳き込んではいるものの、昨日よりは楽である。

まず、既に書いたとおり、咳の回数が減っており、この数時間で痰の量も減った。

「寝る」という意味では咳の回数よりも痰の量の方が大切である。


しかし肺炎おじさんは寢れない。

もうずっと暑いのだ。

昨日は部屋の中が寒くて随分と冷やしている病院だなと思ったが、今日はまるでサウナの中にいるかのような暑さである。

しかもこの大病院の空調は消灯時間を過ぎて1時間もすると切れたかのように弱くなる。エアコン機能は停止して空気の入れ替えだけをやっているかのようだ。


空調が止まると肺炎おじさんはますます暑くなる。汗もかく。

肺炎おじさんはこの咳が始まってから微熱を出すことはあったが、本格的な熱を出すことはなかった。

このため意識していなかったが、この暑さの原因は「熱」だった。


遡ること数時間前。

18時頃に女看護師が熱、血圧、血中酸素濃度を測りに来る。

その時の熱が38.9度。


「熱高いですねー。解熱剤出しましょうか?」


「抗生物質や心臓に溜まった水を尿に変える薬とか使ってますが、解熱剤を使っても大丈夫ですか?」

肺炎おじさんは念の為確認した。


「大丈夫ですよー。」


「じゃあ下さい。」


こうして肺炎おじさんは解熱剤をもらい飲んだのだ。


そして消灯前に再度、熱、血圧、血中酸素濃度を測る。

その時の熱は解熱剤を飲んでいるにも関わらす38.0度だった。


「解熱剤出しましょうか?」

この時測りに来た女看護師は先程の女看護師とは違う人物であったため、再度、解熱剤を勧められる。


「実は18時頃にもらいまして……。」

肺炎おじさんは既に飲んでいることを告げる。


「あらら。そうなんですね。じゃあちょっと様子見しましょうか。なにかあったらナースコールして下さい。」

そう言って女看護師は去っていく。


そして空調が切れた今、部屋の中がとても暑く感じるのだ。

もちろん実際に部屋の中の温度がサウナの温度なのではない。

意識朦朧としてきている肺炎おじさんは熱の熱さを部屋の暑さとごっちゃにして感じてしまっているのだ。


咳と痰も昨日ほどではないが出る。

唯一の幸いは呼吸がとてもしやすいこと。

咳と痰が減った分熱が高いだけならプラスマイナスゼロだが、呼吸がしやすいならそれは大きなプラスだ。


しかし例え呼吸が出来てもこれだけ暑いと寢れない。

今なら寝ている間に痰に溺れて死ぬことはなさそうだが、今度は暑くて寝れないのだ。


そうこうしているうちに熱で朦朧としている肺炎おじさんの脳が再びよく分からない妄想を初めてしまう。


しかし今回はマジでぐちゃぐちゃで意味不明なので、肺炎おじさんもよく覚えていない。

断片的に覚えているのは肺炎邪教の壊滅、なぜか脳内主人公が悪役令嬢のようなイメージになり、少女漫画のようなやり取りが増える、暗躍する王子様は肺炎の手下といった感じだったと思う。

入院前に見た漫画かなにかの影響でも受けているのだろうか、でも最後に見たその手の漫画は出来が良くなくてつまらなかった気がする……。


しかし肺炎おじさんは頭に浮かぶ意味不明な妄想にも、うんうんそうだよね、それなら仕方ないよね、そんなことしたらヤバイよと意識朦朧の中で相槌を打ったり、展開にツッコんでいた。


いっそ変な妄想を見るくらい意識朦朧なら寝れるのではないかと思うが、肺炎おじさんは寢れない。

部屋も身体も暑くて寝れないのだ。

なので頭に次々浮かぶ妄想に対話していく。


暑いのでお茶は飲んでいる。そしてむせて咳をする。


夜中になっても肺炎おじさんは寝れなかった。


───暑いなあ。空調って入らないのかなあ。これだけ暑かったら看護師に相談した方がいいのかなぁ?


肺炎おじさんはナースコールを押すことにした。 


「どうされました?」

壁から声がする。これは幻覚ではない。ナースコールのコードは通話装置につながっているのだ。


「余りに暑くて寝れませんでして。空調って調整してもらえたりできるんですか?」


「一度お伺いしますね。」


そして女看護師がやってきた。


「空調の相談でしたっけ?」


「はい。暑くて寝れませんでして。」


「夜中になると空調弱くなるんです。これは一回の管理室でまとめて管理していて個別に強くするとかはできないんです。」

女看護師は空調のシステムについて説明する。

肺炎おじさんはそれとなく予想していたが、余りに暑かったためショックを受けた。


「無理ですかー。暑く眠れないのでなんとかならないかと。」

肺炎おじさんはうなだれる。


「じゃあアイスノンを出しましょうか?氷枕です。少しは涼しくなりますよ。」

女看護師が提案する。


「氷枕!ああっ氷枕もらえるんですねえ!」

肺炎おじさんは想像してなかった提案に喜ぶ。はしゃいだと言ってもよい。


女看護師は一度病室を出てタオルで巻いたアイスノンを持ってきた。肺炎おじさんの枕の上に置いてくれる。


「あああっ……冷たいです!ありがとうございます!」

これでどれだけ熱が下がり、体感温度が落ちるのかはわからないが、肺炎おじさんは最初のひんやりした感触に歓喜した。


氷枕のおかげで肺炎おじさんは少し楽になった。こころなしか妄想も落ち着いて来た気がする。


しかしこの日肺炎おじさんは寝れなかった。


氷枕を貰った直後、涼しさで一瞬寝るが、それでもかき消せない暑さですぐ目が冷めた。

氷枕で涼み、熱が少し引いただけでは暑さで汗をかき、ベッドの上で寝返りを繰り返す肺炎おじさんに寝る余裕は与えられなかったのである。


とはいえ明け方までもう少し。氷枕のおかげで多少涼しんで明け方を迎えることが出来た。

初回投稿分はここまでです。

続きは1日分単位で書き上げ次第投稿したいと考えています。

できれば現在の肺炎おじさんに追いついてリアルタイム更新したいところですが、細かなところを書いていると文量が多くなってしまったので難しいかもしれません。

残りの日々もお付き合いいただけると幸いです。

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