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九日目① 「あれ?酸素の供給は終わりましたよ?」編

九日目


8月2日火曜日。朝方、廊下が少し騒がしくて目が覚める。

他の病室の患者が午前すぐに手術をするらしくその相談をしているようだ。


少しすると男看護師がやってくる。

熱、血圧、血中酸素濃度を測りに来たようだ。

36度、110台、96と概ね悪くない数値だ。


「血中酸素濃度が安定してきましたね!〇〇さん(肺炎おじさんの名前)は息苦しいとかありますか?」

男看護師がハキハキとした声で尋ねる。


「特に息苦しいとかはないですね。」


「じゃあ酸素供給を下げましょうか!それとも試しに終わりでもいいかな?ちょっといじりますね。」

男看護師が酸素供給の装置をいじる。


この男看護師はナースコールをするとたまに対応してくれる人で、昨日の夜勤の担当でもあった。

脇用の氷枕を提案した男看護師とはまた別の人である。ハキハキ喋る人で質問をした際の説明も分かりやすい。

初日の救急室の男看護師がサッカー系のイケメンというイメージであればこちらは野球系のスポーツマンという男らしい印象を受ける。

彼らが本当にスポーツをやっているかは分からないので、あくまで見た目のイメージだ。


「ではとりあえずこれで様子を見ましょう!」

男看護師はそう言うと去っていった。


この日の朝の食事は味のしないハムが入った煮込み料理がメインだったのだが……これがとてつもなくまずかった。

以前に酷評した塩の掛かってない白身の焼き魚と双璧を成すまずさである。


───もしアンケートがあったらこの料理は出すのをやめた方がよいと書きたい。


肺炎おじさんはそこまで思ったが、なんとか食べきった。


9時過ぎに女医が来る。


「既に看護師から聞いたかもしれませんが、造影剤MRIの検査は明後日になりました。ガリウムシンチグラフィのガリウムがある状態で造影剤を入れるのはよくない可能性があるので、ガリウムシンチグラフィから1日置いてからMRIをやります。」


「初耳です。了解しました。」

ガリウムと造影剤を一緒にして万が一後遺症の確率が上ったら怖いので肺炎おじさんは納得した。


後は肺炎おじさんの体調について尋ねて女医は去っていった。


いつもなら9時〜10時の間にその日の担当が熱、血圧、血中酸素濃度を測りにくるが、この日は来なかった。


昼の食事の前におばちゃん看護師が来る。


「リハビリで少し歩きましょうか。50メートル程。」

断る理由はないので肺炎おじさんは頷く。


肺炎おじさんは鼻酸素チューブを外してマスクをする。

初めて車椅子なしで病室を出る。

通路には10m間隔で10mと書かれた紙の標識が壁に貼ってあり、これを25m進んで戻ってくると言う。

特に問題なく肺炎おじさんは歩いて往復して病室に戻った。


病室に戻るとマスクを外してベッドに座る。

おばちゃん看護師が数字で楽かどうかを聞くので11の楽だったを選ぶ。


「50メートル歩くのは問題なさそうですねぇ。慣れてきたら距離が伸びますよ。」

肺炎おじさんはおばちゃん看護師の言葉に頷きながら鼻酸素のチューブをつける。


「あれ?酸素の供給は終わりましたよ?」

おばちゃん看護師は肺炎おじさんの顔を見ながら言う。


「えっそうなんですか!?確かにシューッていってなかったかも!」

酸素供給が終わっているのに鼻にチューブを付けていたとはギャグである。


「今日の朝止めたみたいですね。回収しましょうか。」

おばちゃん看護師はチューブを取ってベッドの近くの部屋の装置に掛けた。


酸素を止めたのにチューブを外し忘れるとはスポーツマン風の男看護師もたまにはミスをするらしい。

そう言えば男看護師だけではなく日中の担当の人は熱を測りに来なかったし、MRI検査の延期も看護師からは伝えられなかった。

朝方に手術がどうこうと廊下で騒いでいた声が聞こえたので、他の人の対応で忙しかったのかもしれない。

普段の対応に不満はないので肺炎おじさんはこの件について考えるのは止めた。

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