六日目② 「トイレですみません」編
ソシャゲの日課をしているとモンストのジョジョコラボの電話イベントで驚くことになる。
このイベントは配布キャラとアイテムが貰えるが次に電話できるのは24時間後というイベントである。その電話する相手が増えているのである。
物は試しに新しい選択肢で電話すると高難易度クエストの超究極が始まってしまう。それも20分でクリアしろと言う。
───えー。超究極追加されてる。もうコラボは終わるから追加はないと思ってたのに……。
入院後、辛かったり慌ただしかったりしてソシャゲの情報は見てなかったのでこれには驚いた。
試しに一戦やってみるととても難しい。
───あー。これクソゲーだわ。入院中にやるものじゃないわー。諦めるかなあ。
はい、クソゲー!と言いながら肺炎おじさんはもう一回挑戦するもサクッと負けたので今度は本当にスマホを閉じたのであった。
午後は土曜だけあって予定がなく、こんな感じでソシャゲをいじったり、リハビリの運動を多めにやったりして過ごした。
午後の抗生剤があまり流れず、看護師がいじっていると点滴が漏れ出すという軽い事故が起きる。
最終的に手の甲をやめて新しくルートを取ることになった。
このルートは肘を曲げると点滴が流れづらくなるので昼の抗生剤を入れる時は手を曲げないよう気をつけることになった。
このときの看護師は普段肺炎おじさんは見かけない年配の女性であった。
夜にパルスオキシメーターを外してトイレをしていると夜勤の女看護師がやってくる。
「〇〇さーん(肺炎おじさんの名前)、すみませーん。あっトイレかな。」
病室に入った後、トイレの中を見て女看護師は一旦下がる。
肺炎おじさんはトイレの扉を少し開けてお通じをしていたが、これは開けっ放しの癖があるのではなく、鼻酸素や点滴のコードがあるからである。
「トイレですみません。何か用ですか?話してもらって大丈夫です。」
肺炎おじさんは申し訳無さそうに返事をする。
「失礼しますねー。」
女看護師はそう言ってトイレの前までやって来て軽く扉を開ける。
肺炎おじさんは少し驚いたが、「看護師をしているとおっさんのトイレなどもう気にしないのかもしれない。」と思った。
「指に挟むやつ外れてないですか?」
と続けて言う。
「トイレ中なので一旦外してます。」
「ずっと付けてて欲しいものなので、とりあえず付けてもらっていいですかぁ?」
そう言って女看護師はトイレの中に入って指に強引にパルスオキシメーターをつける。
「あー。トイレ終わったらつけるんで一旦外していいですか。」
そう言って肺炎おじさんは外す。
「いやーずっと付けてて欲しいんですよね。」
「他の看護師さんはトイレ中は外していいと言ってましたよ。」
女看護師も折れないが肺炎おじさんも折れない。
「本当ですかー?うーん、他の看護師が本当にそう言ったのなら合わせますけどねえ。」
「はい、言ってました。」
「じゃあ後で必ず付けてくださいねー。」
そう言って女看護師は去っていった。
肺炎おじさんは口論自体は気にしなかったが、トイレの中に入ってきて強引につけるとは思わなかったので驚いた。
この女看護師はこの時初めて会った看護師である。
この女看護師もまた小柄な若い女性だった。トイレに座っていたこともあってあまり顔を見れていないが、肺炎おじさんが見た中では1番美人の女看護師であった。
しかし初印象があまり良くないので「若い美人看護師」とはあまり呼びたくない。
フランクな話し方をする人だったので、「フランクな女看護師」と呼ぶことにする。
ちなみにこの女看護師は夜勤だったようで消灯の際に病室の電気を消すかどうかでも少し揉めた。
肺炎おじさんの病室は個室で消灯時間後も抗生剤の入れ替えがあったり、肺炎おじさん自体が咳が酷く寝れていなかったからか、電気が消されることの方が稀だった。
珍しく消しますよと言われて、まだ寝れないなと思った肺炎おじさんがまだ大丈夫と言ってしまったせいで揉めたのである。
最終的に点滴の終わった抗生剤を回収するまでは付けてもらうことになったが、1日の夜の間に同じ相手と2回も口論するとは思わなかった。
別にこのフランクな女看護師は間違っていない。
しかし肺炎おじさんは他の看護師に比べて随分ルールに厳しいなと感じた。
これが物語であればツンデレヒロイン、またはルールに厳しいヒロインの登場なのかもしれないが、もちろん現実が原作なのでそんな雰囲気は微塵もない。
その後、電気を消す際に氷枕を貰い、肺炎おじさんは目を閉じる。
今日の熱は解熱剤なしで37.6度であり、昨日よりは低い。
肺炎おじさんはすんなり寝ることが出来たが、夜中に咳と尿意で目が覚める。
お茶を飲み、トイレをして30分程寝ると再び寝れた。