五日目② 「左目に緑内障の疑いがあります」編
病室に着いてニトログリセリンの点滴を交換する。
交換から5分も経たないうちにおばちゃん看護師が「眼科に呼ばれたので行くよー。」と言う。
先ほどまでの小柄な看護師ではなく今度はおばちゃん看護師が対応するのだろうか。
「〇〇さん(おばちゃん看護師の名前)は他の用事があるので私が案内しますね。」
実際に車椅子を持ってきたのはおばちゃん看護師でも先程の小柄な女看護師でもなくまた別の女看護師だった。
先程の小柄な女看護師も若くて小柄だったが、今回の看護師も若くて小柄な女看護師だった。
この時点では把握する余裕がなかったが、この大病院の6階の女看護師は小柄な人が多いようだった。
なので小柄な女看護師と呼ぶと名前が被りまくってしまう。
今回の新しい小柄な看護師は「新人の女看護師」と呼ぶことにする。
なぜならおばちゃん看護師が「◯◯さん(新人の女看護師の名前)に任せちゃった。」と最初の小柄な看護師に話しながら隣の病室に入っていったり、複数の女看護師が新人看護師の周りに集まって「大丈夫?〇〇行くんだよー。」とアドバイスしていたからである。
新人の女看護師はベッドから車椅子に移動する時も点滴の移動や鼻酸素チューブの移動に少し手間取っていた。
そしてエレベーターでは他の看護師と違って段差に引っかかった。
肺炎おじさんが少し立って出やすいように動いた。
こうして再び眼科に着いた。
瞳孔を開く目薬に関しては思っていたよりも眩しくは感じなかった。
眼科につくと再び眼科の女看護師とバトンタッチする。
「診察の前に目の奥の検査をしますね。」
そう言われて2つの検査をする。機械の中の絵を焦点が合うまで見るような検査と小さな光を見る検査だ。
その後、眼科の優しそうな女医から再度診察を受ける。
機械から光が当てられ、言われた方向に目を動かす。これはかなり眩しかった。
「先程、目を正面、側面から診て、今回は目の奥を診ましたが、肺炎の影響による菌はでていないように見えますね。時間差で出てくる可能性もゼロではないですが、疑われている病気の可能性は低いと思います。」
女医は心不全の影響が出ていない旨を話す。ここでいう疑われている病気とは心不全そのものを指しているわけではなく、心不全の原因となった病気のことであり、心不全そのものが否定されたわけではない。
「それと左目に緑内障の疑いがあります。現時点では緑内障だったとしても軽微なものですね。診察が数ヶ月遅れても予後に影響はありません。なので肺炎と心不全の治療が落ち着いたら、ここでも他の病院の眼科でもよいので診察を受けることを勧めます。通いやすい病院でよいと思います。」
女医は別の病気に触れる。
「緑内障ですか。視野が狭くなる病気ですよね。頭に留めておきます。ありがとうございました。」
肺炎おじさんは冷静にお礼を言うが内心は驚いていた。
───病気が増えていくなあ。
その後は新人の女看護師と病室に戻る。
途中でまたエレベーターで引っかかりそうになり、肺炎おじさんが一つのことに気づく。
エレベーターの扉の段差の右端に四角い穴があり、ここに引っかかっているように見えたからだ。
「もしかしてなんですけど、あの右端の穴に引っかかっているのでは?他の看護師さんはもう少し真ん中を通っていた気がします。」
「あーあの穴ですか!もしかしたらそうかもしれませんね!次気をつけてみます。」
新人の女看護師だけあってこんなおじさんの気付きにも耳を傾けてくれるようだ。
これでもう引っかからなくなればよいのだが。
病室に戻ると一息つく。しかし30分もすると女看護師から「腎臓エコーの時間が来たので行きますねー。」と話しかけられる。
この女看護師も若くて小柄な看護師だった。
最初に眼科に連れて行ってくれた小柄な看護師とも新人の女看護師とも別の女性である。
この女看護師は賢蔵エコーの行き帰りに話した印象だとうんうんと頷いて話を聞いてくれるタイプの人だったので、「聞き上手な女看護師」と呼ぶことにしよう。
ちなみに聞いてもらったのは眼科の検査には変わった検査が多かった、特にジェルは辛かったという眼科の検査の愚痴である。
こんな短期間に小柄な女看護師を3人も登場させるとは何を考えているのか?と言われそうだが、実際にそうだったのだから仕方ない。
問題は聞き上手な女看護師ではなく腎臓エコーの方であった。