四日目① 「今日の昼から食事が出ます」編
四日目
7月28日木曜日。肺炎おじさんは初めて朝方に看護師に起こされた。
熱と血圧と血中酸素濃度を測るらしい。
───今6時過ぎだ。1時間半くらい寝れたかな?
肺炎おじさんは左手の氷枕に感謝する。今日の夜も借りよう。
「今日はレントゲンがあるので呼び出しが来たら行きましょう。日中の担当がやると思います。」
男看護師が日程について話して去っていく。
朝の抗生剤が点滴される。
しばらく時間が経って午前10時頃におばちゃん看護師がやってくる。
「レントゲンに呼ばれたのでいきますよぉ。」
おばちゃん看護師は車椅子担当なのだろうか。昨日に続き、今日も車椅子で運んでくれるようだ。
車椅子でレントゲン室に向かい、正面と横から1枚ずつレントゲンを取る。
レントゲンを撮るだけなので昨日の心臓エコーとは異なり、すぐに終わる。
病室に戻るとおばちゃん看護師から一つ提案を受ける。
「入院してから髪洗ってないですよねえ。洗髪に行きませんか?」
「確かに洗ってないですね。」
仰るとおり、肺炎おじさんは髪を洗っていない。
「ベッドにお湯を持ってきて洗うという方法もあるけど、車椅子に乗れるなら洗髪室があるのでそこまで行く方が洗いやすいので、洗髪室でいいですか?」
おばちゃん看護師によると髪を洗うための場所があるようだ。
「おまかせします。」
肺炎おじさんがそういうと洗髪室に向かうことに決まった。
再び車椅子に乗り、今度はエレベーターで7階を目指す。
6階には洗髪室がないが7階にはあるらしい。
洗髪室につくとそこは大きめの椅子とシャンプーを入れた籠と美容室ほどではないが頭を洗いやすそうな洗面台があった。
おばちゃん看護師は大きめの椅子を中央から端にやり、車椅子を洗面台の前まで押していく。
「濡れないようにタオルと美容室で使うようなクロスを掛けますね。でも多分濡れます。ほほほほっ。」
おばちゃん看護師はシャンプークロスを肺炎おじさんにかけて首にタオルを巻く。
「濡れるのは大丈夫ですよ。」
髪を洗ってもらえるだけでありがたい。
「じゃあ顔を下に向けて洗面台に向かって頭を出して下さい。あと目を瞑って下さい。」
「こんな感じでいいですか?」
「はーい。じゃあ濡らしていきます。お湯加減どうですか?」
おばちゃん看護師はそういうとシャワーを頭に掛ける。
「ちょうどいいです。」
少し熱かったがむしろそれが心地よかった。
「じゃあ一度軽くシャンプーしますね。油を流します。」
そういうと肺炎おじさんの頭に馴染ませるようにシャンプーが練り込まれていく。
そして全体にいきわたったらすぐにシャンプーが落とされた。
「では洗っていきますね。痒いところがあれば言って下さい。」
次は本格的に洗ってくれるようだ。
「頭の上部の後ろの中央あたりが痒いです。」
丁寧にそこそこ力を入れて洗ってくれるので気持ちがよい。痒い場所も素直に言うことにした。
「ここですねー?」
「はい、そこです!」
そして頭全体を洗うとシャワーでシャンプーが落とされた。
「はい、終わりです。タオルを渡すので前の方を拭いてください。」
おばちゃん看護師はそう言うと肺炎おじさんの首にかけていたタオルで頭の後方を拭いてくれている。
「ありがとうございます。とてもスッキリしました。」
肺炎おじさんは洗髪が気持ちよかったのか、自然と笑顔になった。
「じゃあ帰りにドライヤー貰っていくので病室についたら乾かして下さい。」
そういって車椅子は動き出す。
「そういえばあまり濡れませんでしたね。」
「たまたま上手くいっただけですよ。濡れることの方が多いんです。」
おばちゃん看護師はこう返してきたが、洗髪も気持ちよかったし、おばちゃんなだけあって経験を積み重ねているんだろうなと肺炎おじさんは思った。
病室に着いてドライヤーで髪を乾かす。
おばちゃん看護師に使い終わったドライヤーを渡すとおばちゃん看護師は病室を出ていった。
入れ違いのように主治医の女医がやってくる。
「まず、今日の昼から食事が出ます。お試しですね。全部食べなくてもいいので、ゆっくり食べて下さい。肺炎が酷くならなければ夜も出ます。」
今日が四日目なので三日振りの食事となる。肺炎おじさんは女医の話を聞きながらお腹が鳴った気がした。
「わかりました。無理せず食べます。」
「それと明日は検査がいっぱいあります。心不全は他の器官に悪影響を与えることがあって、特に一部の菌が原因の時は目と皮膚に影響が出ます。なので眼科と皮膚科の先生に相談して明日見てもらうことになりました。また心臓エコーと同じ要領で腎臓エコーをします。明日は忙しいと思いますががんばって下さい。」
女医は明日の予定について話す。盛りだくさんのようだ。
「了解しました。」
肺炎おじさんが頷くと女医は病室から出ていった。




