0585:【前】遺跡探索。
2022.12.01投稿 1/2回目
――翌日。
探検組が見つけたという古い遺跡っぽいもの。遺跡の調査を行う為に興味のあるメンバーが集まって、遺跡の中を調べるとのこと。危険があるかもしれないというのに、捜索メンバーは結構な数となっていた。初期の捜索組であるソフィーアさまとセレスティアさま。
アリアさまとロザリンデさま、ダリア姉さんとアイリス姉さんにダークエルフのお姉さん二名。で、昨日捜索に加わったクレイグとサフィールとジーク、ロゼさんとヴァナル。お姉さんズに誘われたリンとクロと私が加わった。好奇心の高い小型竜の方も参加するそうで、大所帯となってしまっている。
島の主である大蛇さまにも報告して許可を頂いているから問題はないだろう。あとは何か見つかった時にどうするかで揉めなきゃいいけれど、大蛇さまは『好きにすればいい』と言い、亜人連合国の皆さまは『見つけた者勝ち、欲しければ交渉・相談』なのだとか。
アルバトロス勢は興味本位の参加と国からの調査依頼ということで基本は辞退。欲しい物があれば亜人連合国の方と交渉・相談となるって。私は興味本位の参加だから、興味のあるものが見つかれば交渉・相談するけれど。
出発前の浜辺でみんなが集まって、冒険道具や鞄の確認。あと携帯食料と水にと割と本格的。ダークエルフさんなんて弓を背負っているし、ダリア姉さんとアイリス姉さんは何かあった時は魔術をブッパするって。
「クレイグ、サフィール。無茶しないでね」
王都からほとんど出たことのないクレイグとサフィールに声を掛ける。ジークとリンと私は討伐遠征に参加して森の中を歩くことや魔物との遭遇には耐性があるけれど、二人は全くない。
昨日は魔物との遭遇はなかったそうで、ひたすら捜索していたそうだ。歩きすぎて筋肉痛だと二人は言っていた。魔術を掛けるか迷ったが、筋肉痛ならば放っておいたほうがいいと判断してそのままだ。理由も二人には伝えてある。
「無茶をするのはナイだろうに。ま、お荷物にはならねーようにするさ」
「足を引っ張らないように頑張るよ」
ふ、と笑うクレイグと苦笑いを浮かべるサフィール。二人のフォローにはジークとリンが付くからあまり心配はしていない。道が悪い場所もあるだろうし、魔物がでるかもしれないが五人一緒なら大丈夫だ。
「さ、行きましょう」
「行こう、行こう~」
探検隊の指揮はお姉さんズが執るみたい。空を飛んでの移動もできるけれど、木々が生い茂る森の中での着陸は大変なので、徒歩での移動なのだそうだ。
そうして探検隊は森の中へと入り、遺跡の場所を目指す。遺跡は苔に覆われて、森と同化しており見つけ辛かったとのこと。昨日、印をつけておいたとのことで、探すことはないだろうって。木々から落ちた葉を踏みしめ、森の中を進む。鬱蒼と茂った木々に囲まれたけもの道は、湿気の所為か足元が少しゆるい。何度か小休止を取りつつ、三時間ほどで目的地に辿り着いた。
「ここよ」
ダリア姉さんが立ち止まって声を上げた。聞いた通り人工物に苔が生えて、かなり分かり辛い。良く見つけたなと感心していると、ぽっかりと空いた穴をダリア姉さんが指さした。人が一人通れるくらいの穴を抜ければ、背の高いジークやディアンさまでも普通に歩けるくらいの高さが確保できるそうだ。ちなみに地下へと続いているらしい。
ダークエルフのお姉さん二人が先行して穴へと入る。そうしてダリア姉さんとアイリス姉さん、ソフィーアさまとセレスティアさま。ロザリンデさまが慎重に降りて行き、アリアさまが怖がりつつもサクサク降りていった。次にリンが先に降りてクレイグ、サフィールと続く。
幼馴染たちの後に私が穴の中に入って、脚が付かずリンに助けられる羽目になる。ジークがひょいっと降りてきて、最後にディアンさまとベリルさまが。ディアンさまは縦に角が伸びているので問題なかったようだが、ベリルさまは横方向に角が伸びていた所為で降りるのに少々手間取っていた。最後に私の影の中からロゼさんとヴァナルが現れたのだった。
「暗いわね」
「灯り付けよう~」
ダリア姉さんとアイリス姉さんが魔法を使って周囲を照らしてくれた。アリアさまとロザリンデさまも魔術で明かりを灯す。魔力の消費は少ないので、夜にはとても重宝する魔術だ。私もみんなに倣って明かりを灯した。中は石造りの壁が奥へと続いていた。時折、灯している火が揺れるので、空気はどこからか入ってきているようだった。
ダークエルフのお姉さんが先行して奥へ奥へと進んで行き、順番にその後を歩いていく。しん、と静かな通路。時折、しみ込んだ水が天井から落ちる音が聞こえて、不思議な空気を醸し出していた。
「変わらないわね」
「小部屋があっても空振りだね~面白くなーい」
ダリア姉さんとアイリス姉さんの声が上がった。歩くこと三十分。景色は変わらず、石造りの壁がずっと奥に続いているだけ。
エルフの方たちは宝石が見つかると嬉しいのだとか。質が良ければ魔石替わりになる為、魔力を込めて使用するのだとか。質が悪くてもドワーフの方たちに宝石細工の加工をお願いして着飾るそうだ。
「ダリア、アイリス。少し休まないか?」
ディアンさまが唐突に口を開いた。どうやら疲れている人がいると判断してくれたようだ。クレイグとサフィールは黙っているが、疲れが出てきている。私がディアンさまへ小さく頭を下げると、彼は横に首を振った。
「そうね。一度休憩しましょうか」
「そうしよう。お水飲みたい~」
ディアンさまの声に同意したお姉さんズ。各々、持参していた水や薄めたワインを飲んで、水分補給をしていた。
クレイグとサフィールは腰を下ろし壁に背を預けてお水を飲んでいる。大丈夫かなと二人に声を掛けようと、水袋を手に持って歩いているとつるんと足が滑った。無意識で壁に左手を突いて難を避け、安堵の息を吐く。
――ガコン。
大きな低い音が響いた後、左手で触れている部分の壁が一センチ程度凹み。
「え?」
私の立っていた場所の床が抜けた。下に落ちた後すぐにスロープ状になった筒の中を、勝手に体が滑っていく。お尻が冷たくなっているので、水を流して滑りやすくしているのだろうか。
「っ!!」
一体何処まで滑っていくのかと首を傾げていると、真っ暗だったスロープの筒が途切れて明かりが差し込んだ。べちん、と尻餅を付いて大きい部屋へと辿り……着いた、と言っていいのだろうか。誰もいない苔が生えた部屋の中は湿気が凄く高い。
「クロ、大丈夫?」
とりあえず、私の肩に止まっていたクロに声を掛けた。肩に乗っていた所為で一緒に巻き込まれてしまったから謝らないと。
『ボクは大丈夫。ナイは?』
「お尻を打ってちょっと痛い」
お尻を抑えながら天井を見ると少し陽が差し込んでいた。スロープを下ってきたというのに、なぜ光が差し込んでいるのかと首を傾げる。
「ナイ!」
私の名前を呼ぶ、聞きなれた声が背中から聞こえて振り向く。そこには見慣れた赤髪で背の高いジークが焦った顔を浮かべながら、私の下へ走ってきた。
「――大丈夫か?」
はあと息を吐いたジークはいつもの顔に戻っていた。スロープ状のあの道は、結構狭かったから背の高いジークにはキツいはず。私と同じく足とお尻はずぶ濡れ。申し訳ないことをしたなあと『大丈夫』と返した。
「ナイ!!」
また私を呼ぶ聞きなれた声が聞こえてそちらを向くとリンが走って私の下に辿り着く。むぎゅーと抱きしめられて、彼女の背中を何度かタップするとようやく離してくれたのだった。何事も無くて良かったと安堵するジークとリンと私。私になにかあると護衛の二人に責任が回るときがあるから、休暇中とはいえ本当に良かった。
そうして次々、みんなが下りてくる。広い大部屋に全員が揃う。クレイグとサフィールが呆れた顔で私を見ながらも、この部屋になにかないかとキョロキョロしていた。他の方たちも捜索続行中だから、私も部屋の中を探す。仕掛けがあったということは、他にも仕掛けがあるかもしれない。
「ここも空振りかしら?」
「なにもないね~」
ダリア姉さんとアイリス姉さんが声を上げたその時。
「え?」
一緒に探していたアリアさまが声を上げて、立ちすくんでいる姿を見る私だった。
お待たせしました、連載再開です! また更新を止めることがあるかもしれませんが、その時はごめんなさい┏○))ペコ