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0579:大蛇さまとの約束。

2022.11.13投稿 3/4回目

沼から顔を出している大蛇。


 大猪の意志を継ぐと言ったけれど、飲み込めなかったことで感動話がとんでもない方向へとなってしまったが。キレた私から漏れた魔力により、勝手に吸収した大蛇は勝手に大きくなって、しれっと大猪を飲み込んだ。大猪の意志を継いで長く生きると宣言したので、島の治安を守って頂きたいものである。

 亜人連合国の方々が移り住んだことに対しては、気にしていないそうだ。共存できればいいし、淘汰されるならばそれでもかまわないとのこと。自然に生きる者だから、そのあたりはシビアな考えを持っている。


 『お主らはいつまでこの島に滞在しておるのだ?』


 大蛇にいろいろと質問されたので粗方答えておいた。嘘を吐く意味もなく、興味本位の質問なのは理解している為に、正直ベースでだ。


 「一ヶ月ほどは。少々騒がしくなりましょうが、お許しいただけると幸いでございます。あと――」


 島の調査の為に探検隊が組まれていることや、亜人連合国の方々が村を形成しようと作業中だ。ついでだし怪我を負った動物や病気の子らがいるならば、私の滞在期間限定だけれど治す約束も取り付けよう。確認を取っておいた方が良いものと私が考えていることを告げる。元々は彼らの居場所なのだから、共存できるように努力をしないと。


 『構わぬよ。むしろ前は静かすぎたからな。この島は古き時代から存在している島。探せば面白いものが出てこよう。危険な生き物も居らぬから非力な人間でも対応できようて』


 襲う魔物ならば対処してよいとのこと。考え方の根幹が亜人連合国の方々に似通っているな。自然と共に生きるからだろうけれど、こうも穏やかだと妙な人間が現れた時に困ったことになりそう。人間より先に島には亜人の方々が住まうことになりそうだから、大丈夫だろうけどね。


 「では、この島にあるものは頂いてもよろしいのですか?」


 持って帰りたいものがあった場合に後から許可を取れとか言われても困るから、先手を打っておかないとね。


 『うむ。我々生き物や植物の生態に影響がないならば、という条件付きであればな。我々と人間や亜人では興味のあるもの、欲しい物は違うかもしれんが……』


 あ、そうだ。この島の主というならばディアンさまたちと顔合わせも済ませた方が良いだろう。亜人の皆さまは寿命が人間より長いので、島の方たちと長い付き合いになるだろうし。でも島に居付いた妖精さんたちとか、大蛇の存在に気づきそうなものだけれど。お互いに不干渉でも貫いていたのだろうか。 


 『突然に魔素が増えて、島には妖精や竜が増えた。環境が良い証拠だよ。この島の主として誇らしいことだからな。――なに、島に移住してきた者たちの代表との顔合わせも願いたいとな?』


 えへんと顔を高々に掲げた大蛇は、ディアンさまたちとの挨拶願いに何度か目を開けたり閉じたりして忙しそうだった。


 「はい。事情を知らぬ故に遅くなってしまいましたが、共存するならば必要なことかと」


 『分かった! 私が出向いてもいいのだが、この巨体だからなあ。すまぬがここまでの案内を頼んでよいか? 時間や日時は特に指定はないし、この場に留まっているからそちらの都合の良い時で構わない』


 大蛇は沼がねぐらで、この場所から離れることもないそうだ。ならばこの一ヶ月間のどこかのタイミングでお伺いしますと告げる。

 戻ったらディアンさまたちにもこの話を伝えないと。竜の皆さまはダークエルフさんたちの集落をつくる為に、荷運びや力仕事に精を出している。ディアンさまとベリルさまも指揮役として、この一ヶ月間は島に留まるとのことだから、好きな時間に訪れていいと許可を取れたのは僥倖だった。


 「では失礼いたします」


 『ああ、また遊びにおいで。私を怖がらぬ者は珍しいし、友人ができたようで嬉しいぞ』


 大蛇に頭を下げて沼を去る。――ふと沼に生えているものが目に入って、興味をそそられるけれど小竜の方たちが前を進むので、置いていかれないようにと後を付いていく。草が均されている場所に戻ると、どうするのかと小竜の方々が振り返る。


 「時間も時間だから拠点にもどろうか」


 小竜の方がこくりと頷いて元来た道を歩き始めた。リンは機嫌よさげに私の隣を歩いている。


 幼子と何度も口にしなければ、大蛇とは更に友好な関係を築けた気がするけれど。まあ、根に持っても仕方ないし、謝って貰ったのだから水に流そう。島にあるものは生態や環境に影響がない限り、持ち帰って良いと許可を頂いたから大進歩じゃないかな。しかし、大蛇が『古き時代から存在している』という言葉。

 古き時代=珍しいor大層凄い物という認識なのだけれど。古代魔術や帝国の飛空艇のイメージがあるので、そういうものも見つかるのかな。面白いものがあればいいと思う反面、管理が大変なものが見つかるとややこしくなるしなあ。うーん、うーんと唸っていると、私の肩に乗っているクロが声を上げた。


 『ナイ、島を大きくしたのはナイって教えなくて良かったの?』


 大蛇に伝えようか迷ったけれど、大きくなった後だから今更知っても仕方ない気がするし、元に戻せなんていわれた日には困る訳で。


 「勘が良いなら気付いているんじゃないかな。私の魔力が満ちたから、感知系に優れているなら気付くだろうしね」


 下手をすれば魔力を吸収したことで気付いているのかもしれない。大蛇は自分で魔力に敏感だと告げていたし。ちょっと間抜けだけれど、島の未来を考えられる蛇だった。何も言わなかったのは大蛇なりの気遣いなのかもしれないな。デリカシーは欠片もなかったけれど。


 『取り敢えず代表たちに話をしないとだね』


 「うん。応じてくれるといいけれど」


 私が勝手に決めた話だし、色よい返事が貰えるとは限らない。こちらにやってきてからお手伝いで忙しそうだけれど。大蛇と話をするくらいなら大丈夫なはずと思いたい。


 『大丈夫だよ。島の主と共存できるように話をつけるのは当然の務めだから』


 「だといいけれど。取り敢えず、ディアンさまたちを見つけないとね。ダークエルフさんたちの集落がどこにあるのか知らないし」


 エルフさんなので森の奥に作っているのだろうか。浜辺周辺ではないことは確かで、ダークエルフの代表さんたちしか見たことない。他の方も移住していると聞いているから、一人二人の規模ではないはずなのだ。


 『戻ったら遅い時間だろうし、明日だね』


 「あ、これで明日の予定は埋まったかな。決めてないからゆっくりする時間もあっても良いけれど、やることはさっさと済ませておかないと」


 私だから忘れる自信がある。下手をすれば子爵邸に戻って『あ!』と言いかねないから。道なき森の中をみんなで進んで、浜辺近くの拠点に戻る。時刻は陽が沈む頃合い。夜ごはんが楽しみだけれど、海で泳いだことと森の中を歩いて随分と気持ちが悪い。

 以前訪れた温水が湧いている場所に行こうとリンを誘い、ひょっこりと顔をだしたアリアさまとロザリンデさまを誘う。銭湯セットじゃないけれど、必要なものを取りそろえると気さくな竜の方の背に乗って、温水が湧き出る場所を目指し辿り着く。


 周囲に誰もいないことは分かっているけれど、島には男性が居るので周囲に結界を張って侵入されないようにと魔術を行使。

 これでなんの心配は必要ないだろう。覗く気はなくとも事故でロザリンデさまの裸を見たとあれば問題になって、首と胴体がおさらばすることもあるだろうし。アリアさまだって知らない男性に肌を見せたくないだろう。


 「わあ! ナイさま凄いです!」


 「結界は聖女の専売特許みたいなものですからね」


 凄くはないかも。周囲に結界を展開しているだけなので、そんなに感嘆されると照れ臭い。私が張ったものは男性だけは侵入できないという特殊なもので、教会で男子禁制の場所で使われているものらしい。

 限定的だから使う機会なんてないと馬鹿にしていたが、覚えておいて良かった。仕込んでくれたシスター・ジルとシスター・リズには感謝しないと。

 

 「私はこんなに上手く維持できません。ナイさまが羨ましいです。障壁展開よりも治癒を施す方が、魔力の消費が少なく使いやすいですから」


 「わたくしも、障壁や治癒よりも攻撃力の方に長けていますので、羨ましく思います」


 アリアさまは治癒に特化、ロザリンデさまは治癒や障壁を張るよりも攻撃魔術を放つ方が得意のようだ。結界は聖女の専売特許であるが、やはり個人差があるか。

 魔力量が多ければ、城の魔術陣に魔力を補填できるのだから問題は少ないような。ロザリンデさまは治癒院だと少々苦労しそうだが、魔力の多さで他の聖女さまより優れているだろうし。リンも一緒に来ているけれど、護衛役になってしまうので私の横で黙ったままだった。私の服の裾を掴んでいる辺り、普段とは違うけれど。

 

 兎にも角にも一日の汗を落とそうと、簡易的な脱衣所に足を踏み入れた。


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[一言] 〉ひょっこりと顔をだしたアリアさまとロザリンデさま   ∧_∧ ヒョッコリ  (`・ω・´)ミ ┳∪┳―┳∪┳―┳―┐ ┻┳┻┳┻┳┻┳┻┳┨ ┳┻┳┻┳┻┳┻┳┻┨ ┻┳┻┳┻┳┻┳┻…
[気になる点] 大聖女様は得意分野何なんだろ? アリサは範囲回復が出来るから、回復なのだろうけど
[一言] リンちゃん可愛いなあ
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