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522/1475

0522:戴冠式の前。

2022.10.21投稿 1/2回目

リーム王国へと足を運ぶ前に、ロザリンデさまとアリアさまとも合流する。お二人は教会で準備を済ませてから、王城へと足を運んだそうな。二人はリームの聖樹に魔力を注いだことを理由に、教会経由で招待状が送られていたそうだ。

 統括官が同道するらしく、ロザリンデさまもアリアさまも緊張した様子を見せている。アリアさまが机の上に置かれた花瓶の黒薔薇と、みんなの胸ポケットを興味深そうに視線を行き来させていた。

 暫くすると、彼女はむーっと口を伸ばして何か考え事をしているようで。どうしたのか聞いてみると、胸ポケットの黒薔薇が羨ましいそうだ。


 アリアさまは聖女の服を纏っているので、薔薇を指す場所がない。悩んでいると部屋付きの侍女さんがソフィーアさまに耳打ちして『髪に飾るのはどうか?』と教えてくれたそうだ。

 花は余っているから問題ないし、アリアさまには子爵家の関係者だと思われても良いかだけは確認して、小さめの黒薔薇を髪に差す。

 明るい髪色だから割と目立つけれど、似合っているから羨ましい。ロザリンデさまもアピールしているから、確認を取るとお願いしますとのこと。 リヒター侯爵家のご当主さま、お父上には私との縁を強くしておけと告げられているので、なんら問題はないのだそうだ。

 逆に利用したければ利用して良いとも伝えられた。うーん。こうして繋がりが増えるということは、お貴族さまとしての道を着実に歩んでいる気がする。何故だろうか……。


 「失礼する! 用意ができたと聞き、馳せ参じた!」


 入室の許可を得たギド殿下が顔を出した。アルバトロスからの参加者はギド殿下と一緒にリーム王国へ赴く……のだけれど、凄く緊張しているようで動きがぎこちない。というかガッチガチ。一番緊張しているのはリーム王国の陛下となる王太子殿下だと思うのだけれど、今からこの調子で彼は大丈夫だろうか。


 「ギド殿下。本日はよろしくお願いいたします」


 私は戴冠式に参加するだけなので、式を見ているだけの気楽なもの。各国の要人を招待して晩餐会が開催されるそうだけれど、面倒だし妙な人に絡まれるのが嫌だから、不参加とさせて頂いている。

 アルバトロスからは第一王子殿下――年齢が近いので陛下の名代――と外務卿さまが参加する。次の日にリーム王国の身内だけで催す昼食会には顔を出す予定。あと聖樹の妖精さんの所にも顔を出す。

 

 「聖女殿、此度の参加、感激の極みっ!」


 やはり妙なテンションのギド殿下。まあ実のお兄さんの戴冠式だから緊張も仕方ないのかな。新学期が始まってから、落ち着きがなかったから。本当は断りたかったけれど、リームの聖樹を枯らした後ろめたさがある上に、聖樹の妖精さんが元気か気になるから、良い機会と言わんばかりに妖精さんと会わせて頂けるならと伝えると二つ返事だった。

 贈り物は私たちと一緒に持って行って、適度なタイミングで渡す予定。こういうことに詳しくないので、外務卿さまからアドバイスを頂いた次第。目録を付けるなんて知らなかったので、恥をかかずに済んだ。長剣三本、短剣一本、反物と書いておいた。他の国からの来賓の方々がどんなものを贈るのかは知らない。

 子爵家当主兼聖女として贈れる最大級の物を用意したつもりだけれど……。ドワーフさんとエルフの方々の腕は疑っていないし、そんじょそこらにあるものとは違うのは分かる。けど、来賓者ってお金持ち兼権力者。そういう人たちがお金を掛けて贈ったものだから、敵うはずはないし。


 「いえ。気になることもありますし、わたくしの願いを聞き届けて頂き、ありがとうございます」


 挨拶の応酬は適当に済ませて、第一王子殿下も待っているから、転移魔術陣へ移動しようとなった。そうしてみんなを引き連れて、アルバトロス城の廊下を歩く。ギド殿下が前を歩いて、私が彼の後ろを歩くのだけれど……一番後ろが良いなあ。本当に立場というか身分が変わったなあと実感する。

 去年の今頃であれば、高位貴族の高慢ちきな方たちには睨みつけられていたものなあ。懐かしいと歩いていると、転移魔術陣が施されている部屋へと辿り着く。先に第一王子殿下方が待っており、急いで頭を下げる。


 「殿下、お待たせいたしました」


 「聖女殿、久方ぶりだ。今日から二日間、よろしく頼む」


 私たちが遅れて辿り着いたことをさして気にした様子はないまま、にこやかに挨拶を交わす。アルバトロスの第一王子殿下と会うのは久方ぶり。お城で顔は時々見ていたものの、直接話す機会なんて滅多にない。

 彼の婚約者さまであるツェツィーリアさまもご一緒で、二人は改めてお礼を述べていた。


 ――魔術陣の上に立つ。


 魔力を注いで少し待っていると術が発動して、リーム王国の王城に辿り着いた。なんだか懐かしいなあとキョロキョロしていると、王太子殿下の姿が。

 

 どうやら待ち構えていたらしく、私たちの姿を見るや否や笑みを浮かべて迎え入れてくれたのだった。王太子妃さまも控えていらっしゃるし、王妃さまに第二王子殿下の姿も。リーム王国上層部勢揃い。


 アルバトロスの第一王子殿下とリームの王太子殿下が挨拶をし、外務卿さま、私の順に挨拶を終える。

 贈り物とかいつ渡せば良いのだろうとソワソワしていると、外務卿さまに促されて王太子殿下方へと渡った。私が贈り物を用意していると思っていなかったのか、少し驚いた様子を見せたけれど直ぐになりを潜めたのは流石。


 戴冠式が始まるのがお昼丁度。まだ少し時間があるからと、控室へと案内された私たちだった。


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― 新着の感想 ―
国をあげての戴冠式への贈り物よりも数倍貴重な一個人の贈り物………………ww
[一言] いよいよですねー! 頼りきってた過去とは違う未来をと、決意表明してたのが随分前の様に感じますよ…
[一言] ギド殿下はロザリンデとフラグがあったからなあ
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