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0515:【②】催しが続く予定。

2022.10.16投稿 1/2回目

 学院がお休みの日。ジークとリンと私、そしてクロたちと子爵邸の庭で家庭菜園の様子を伺っていると、セレスティアさまがやって来た。いつもとは違った雰囲気を醸し出しており、なにかあったなと直ぐに分かった。


 ――辺境伯領の大木が成長している。


 なんでそんなことになっているんだろう。辺境伯領の大木は一年生の長期休暇中に約一週間で巨木となって、それから目に見えた成長はしていなかったはずなのに。竜と天馬、魔素が濃い場所を好む生き物が増えているという報告を受けていたが、本当に何故今になって成長をするのだろう。


 「ナイ、無意識で魔力を注ぎ込みましたか?」


 「いえ。辺境伯領へ赴いていないので物理的に無理ですね」


 そう。魔力なんて注ぎ込んでいないのだから、単純に植物としての成長期なのではないか。辺境伯の大木の下に行ったのは数えるほどしかなく、ここ最近は足を全く向けていない。辺境伯の皆さまと竜の方たちが見守っているのだから、私の手は必要ないからとお誘いも断っていたから。


 セレスティアさまから更に詳しい話を聞き出すと、大木はここ数日で一回りほど大きくなっているそうだ。

 夜に成長したようで、朝起きた警備の方たちと竜の方たちが首を傾げて考えたが原因が分からない。とにもかくにも土地の主であるヴァイセンベルク辺境伯さまに連絡を入れ、今に至るという訳だ。

 

 「大木が大きくなったことは喜ばしいことでしょう。人間には分からないようですが、竜の方たちの話によれば大木周辺の魔素が濃くなっているそうです」


 「え?」


 さらに謎が深まった。私の肩の上に乗っているクロも原因を考えてくれているようで、首を傾げながらセレスティアさまの話を聞いている。興味が湧いたのかロゼさんとヴァナルも彼女の話に耳を傾けていた。


 ロゼさんとヴァナルは辺境伯の大木の件を知らず、なんのことだか分からないはずなのに。疑問符を浮かべているようなので、簡単に説明するとなるほどと頷いてくれた。

 私の魔力は面白いって喜んでいるけれど。好きでやらかしている訳じゃない……あ、島は自分の意志で魔力をつぎ込んだのだから文句は言えないか。島になにかしらの影響はあると覚悟していたから事実を受け止められたけど、まさか辺境伯領で異常が起こるとは。


 『ナイ。島で魔力を注いだでしょ』


 「うん。私の魔力を全部注ぎ込んだけど……」


 あれ、まさかねえ。私の肩の上で考えていたクロがなにかひらめいたらしい。セレスティアさまの方へ飛んでいき、私を見ながらちょっとだけ首を傾げている。

 やり過ぎたかなあと思っているけれど、島に多く集まっているというお魚さんや暑い場所特有の果物は興味はある。島の面積が大きくなっているようだから、お世話になっている竜の皆さまや亜人連合国の恩返しもあるのだから、むしろ更に注ぎ込むべきだろうか。


 『地面の中を伝って、ナイの魔力に関係するところと繋がったんじゃないかなあ?』


 専門家じゃないから予想は外れているかもしれないよと、クロが言葉をつけ足した。島に注ぎ込んだ魔力はとんでもない量で、各地に点在している私の魔力と関係がある所に惹かれて繋がったとかそんな感じらしい。

 

 「話が違う場所にまで広がるなんて考えていなかったから……大丈夫かな」


 特に辺境伯さまの胃が心配だ。ディアンさまと取引の話をしている時とか、顔が引きつっていたし。


 「良いことではありませんか? 誰かに迷惑をかけている訳ではありませんし、喜んでいる方々がいらっしゃいます。領も大規模遠征から大きな問題は起こっていません」


 セレスティアさまは鋼の心臓を持っている上に、クロやヴァナルといった魔獣の類が大好きなので除外。竜の方が大木の下に訪れて子育てをしているが故に、知名度が上がり見学希望者が増えているのだとか。

 監視塔から眺めるようにして、お金を取っているそうだ。そのお金は大木周辺の環境整備費に充てられるのだとか。他にも亜人連合国と取引をして、領軍に貸与している武具の質が上がったそうな。装備が良くなって、軍の人たちに気合が一層入り訓練や魔物討伐の際には気迫が凄いのだとか。

 

 「――ナイ、ここからが本題です。辺境伯の大木へ参りませんか?」


 セレスティアさまが口にした意外な言葉。いつもならば報告だけに留めているというのに、なにかあるのだろうか。

 気になるけれど、様子を見てみたいから丁度いいのかも。彼女の言葉に二つ返事をして、今から辺境伯領へと向かう手筈となった。ソフィーアさまも一緒に来るそうだから、セレスティアさまから先に話を聞いていたのだろう。お隣さんに、あとでアドバイスを下さいと連絡を入れおくことを忘れない。


 辺境伯領への移動は、セレスティアさまが用意した転移魔術を使える魔術師にお願いするそうだ。帰りもその方にお願いするのだが、ロゼさんが『ロゼが今度からマスターたちを転移させる!』と主張したので、次からその役目はロゼさんとなった。移動手段が馬車から転移に置き換わっている。私が移動となると沢山の護衛の方たちにお世話になる。

 彼らに負担を掛けないのは良いことだけれど、馬車移動も嫌いじゃないからちょっと寂しい。でも大袈裟な護衛が付くのは事実なので、やはり微妙……。

 

 「増えてる?」


 そうこうしている内に、お城で待っている魔術師さんの下へと行き大木の手前に転移する。監視小屋の方たちに挨拶をして、大木の下へと歩いていく。一年生の二学期に訪れた時よりも竜の方たちの数が増えているような。その時は数組の番だったはずなのに、子供の竜が増えていた。先に生まれた子たちは一メートルほどのサイズに成長して、後から生まれた子たちの面倒をみているし。

 背中に乗せて遊んだり、脚に絡みついてくる子竜を相手にしてた。いつもセレスティアさまが嬉しそうに辺境伯領のこの場所の報告をしてくれるけれど、卵が多く生まれたと聞いていただけで、孵ったと報告は受けていない。

 

 『増えてるね。いいことだよ』


 クロが私の顔にすりすりとして、子竜たちの下へと飛んでいった。何気に面倒見がいいクロだけれど、私の肩に乗れるサイズなので、子竜の子たちの間で一番小さいけれど。

 魔力量は半端ないので竜の方たちからは一目置かれているし、ご意見番さまの代替わりなのは周知の事実なので、ちゃんと敬われているのは流石というか。チビとか餓鬼とか言われないのは羨ましい限りだ。

 

 「ふふふ……。凄く、とてもよいことですわ! 大木が大きくなったと同時に卵も孵りましたから!」


 クロに遅れてセレスティアさまが呟いた。お可愛らしいと漏らしながら、セレスティアさまが写真の魔道具を持ち出して、何度も何度も撮影している。

 竜の方たちは慣れているようで、普通に子竜たちの面倒を見ていた。カオスな光景だけれど、卵の話は初耳だ。聞いてないよとソフィーアさまを見ると『すまん』と申し訳なさそうな顔をして、今回辺境伯領まで私を呼んだ理由を告げる説明役がくるからもう少し待って欲しいとのこと。


 誰が来るのだろうと待っていたら、監視小屋が騒がしくなるのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] これは、ちょっと本気でクルーガー家はジークに家督譲る方面で動いた方が良さそうだなぁ 辺境伯領はもうセレスティア嬢じゃなきゃ管理無理だし でもジークは絶対に首を縦に振らないから、クルーガー家に…
[一言] リームだっけ?(すまん国名あやふや)もう一つの樹も成長してるんじゃなかろうか? あ、アルバトロス(男爵領)にも一つ若木があったような···??? 亜人の国にも樹を植えて魔力注いだら卵が孵る?…
[一言] 島に魔力を全力で流し込んだ影響が現れたみたいですね。
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