表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

440/1475

0440:流れが変わったかも。

2022.08.28投稿 1/4回目

 さて、どうしたものか。


 いろいろと起こり過ぎて気が削がれてしまい、最初の勢いはない。もちろん、向こうが妙な行動に出れば遠慮無用の武力行使に走るけれど。魔石を五つ破壊したことが効いているのか、私のご機嫌を伺っている節がある。第一皇子と銀髪くんにヒロインちゃんは例外で、空気の読めない子判定している。

 問題児であるヒロインちゃんは皇帝が凄く気になるようでそちらに気を取られているし、銀髪くんは右手首の痛みに必死に耐えている。治してあげるべきか迷った末に、静かになったので止めておこうと腹を決めた。


 「皇帝陛下、わたくしたちを攫った責任を取って頂きたく。――大国故の面子もありましょうが、此度の件、少なくとも西大陸の二国を敵に回しております」


 皇帝陛下の肉襦袢の圧が凄いけれど彼の前に立ち確りと目を合わせて、言葉を紡ぐ。収め所を示しているのだから、そのことに気付いて欲しいが如何に。

 

 「……宰相。どう考える?」


 ぎょろりと視線だけを動かした皇帝は宰相閣下に問いかけた。どうやら顔も動かすのが面倒だったらしい。カロリー消費しないと太る一方だし、肥満だと寿命が縮む原因なのだけれどね。痩せればそれなりの見た目になりそうだけれど。ミラクルが起きれば、ヒロインちゃんが振り向いてくれるかもしれないよとアドバイスを送りたくなるが、我慢ガマン。


 「は。事を穏便に済ませるならば、責任はある程度取るべきかと。上手く交渉が進めば黒髪黒目のお方との縁も維持できたまま、西大陸の者との交流も願えましょう」


 ちらりと宰相閣下が私の方を見るので、小さく頷いておく。帝国がこのまま滅びてしまうと面倒極まりない。

 東大陸が荒れるのは自由だけれど西大陸にまで波及するのは困る上に、私が東大陸の情勢をどうにかしろとか言われかねないのだから。代替わりとか簒奪ならば、勝手にどうぞと思う。それで治世が安定するなら一つの方法であり手段だもの。無能をトップに据えているより、断然良い。


 「帝国が潤うならば、隣の大陸との交渉もアリ……――吾はその桃髪の娘が望みだ。手に入れられるか?」


 うーん、堂々と私たちの前でその話をするのは不味いと思うけれど、皇帝が望んでいる相手はヒロインちゃん。庇う気も起きないのでアルバトロスの判断次第だ。


 「それは娘子の所属国次第かと。彼女がアガレス皇帝陛下へ嫁ぐ価値ありと考えられれば、機はありましょう。陛下の男っぷりの見せ所ですぞ」


 持ち上げてる。宰相閣下は大変そうだと苦笑い。メンガーさまも大聖女さまも若干引いているけれど、帰れる望みが出来たので少し顔色が良くなってきたかな。

 このまま帝国暮らしとかシャレにならないので、アガレス皇帝が好色の無能でも話は通るので希望はある。宰相閣下は常識人のようだし、黒髪黒目信仰の狂信者ではない。帝国上層部が宰相閣下のような方ばかりでありますようにと願っていると、またしゃしゃり出る人が居た。

 

 「宰相っ! また貴様はそうやって陛下を誑かすのか! 好色陛下と他国から、しかも隣の大陸の者にまで舐められるではないか!」


 テンションが銀髪くんみたいだと溜息を吐きつつ、もう舐められてますと第一皇子を見る。身内の問題を私たちに曝け出しているから、他国にも舐められるのだ。第一皇子は私たちのことを気にしていないか、かなり下にみて何もできない者だと判断しているのだろう。

 アルバトロスに戻ったら報告書を提出しなければならないし、聖王国の大聖女さまも同様。メンガーさまも、国から聴取を受けるだろうし戻ったら春休みが潰れるだろうなあ。どうしてこうもお休みの日に問題が起こってしまうのだろうか。学生として休暇を楽しみたいというのに、理不尽だよなあ。


 「アイン殿下、そう高圧的に怒りなさるな。威厳と言うものは身形や言葉で身に付くものではありませんぞ」


 宰相閣下がジト目で第一皇子を見た。ぐっと息を呑む第一皇子。


 「アイン、陛下を好色というならば貴方の趣味は如何なものでしょう?」


 ウーノ皇女がここぞとばかりに第一皇子の追撃に出たようだ。まあ好色どころか男色だもんねえ。お貴族さまや王族、皇族としては問題だろう。堂々とそのことを暴露したのだけれど、本人は周囲に気付かれていないつもりだったのだろうか。侍女や侍従が就く皇族である。スキャンダラスな噂は直ぐに広まるだろうし、隠し通せるとも思えない。

 火がたつからこそ煙が出るのだから、まあ事実だろうなあ。個人的な意見を述べて良いのならば、ヒロインちゃんも銀髪くんも熨斗を付けてくれてやるのに。いや熨斗は違うか。裸に赤いリボンでも身に纏わせて送るのがベストかな。本人たちは凄く抵抗しそうだけれど。


 「ウーノ、貴様……女の癖に出しゃばるなと毎度言っておろう」


 「その考えが甘いというのです。貴方が次代の皇帝となれば帝国は好色どころか男色を好む国と言われてしまいますよ」


 好色よりも男色の方が不味いよね。子供が出来ない可能性だってあるのだから。他に十四人も皇子たちが居れば、男系の血統は維持できるから彼らの子を第一皇子の養子として迎え入れれば問題なさそうだけれど。


 「なっ!」


 「露見していないと? 噂は何年も前から流れておりますよ。そして事実を証明する者も居ります。――黒髪黒目のお方。此度は帝国がご迷惑をお掛けいたしました」


 わたくしの頭では足りぬでしょうが、まずは交渉の席へ就いて頂きたいとウーノ皇女が。宰相さまも彼女の言葉に頷いているし、私の身分は知っているのだろう。あとは聖王国の大聖女さまとメンガーさまも一緒の席に座れることが出来れば良いのだけれど。彼らの様子を伺うよりも聞いてみる方が早いかなコレ。


 「此度の件は皇子殿下方の暴走とお見受けいたします」

 

 「黒髪黒目のお方、我々帝国上層部も殿下方を止めることは出来ませんでした。であれば殿下方と同罪でございましょう。ご迷惑をお掛けしたこと、謝罪いたします」


 あー……そんなにぶっちゃけてしまわなくとも。黙っていれば良いのに、どうして謝ってしまうのか。ここではない何処かから召喚できる可能性もあっただろうし、そっちを狙っていた可能性もあるから止めなかったのだろうね。結果は同じ世界の隣の大陸の人間だったけれど。


 ――しかしまあ、なんで私以外の四人が召ばれたのだか。


 黒髪黒目は私だけだし、本当に謎。まさか彼らも転生者ということはあるまいし……あれ、そういえばヒロインちゃんは『ゲーム』と言っていたことがあったな。

 随分と以前だしどうでも良い事だったので忘れ去っていたけれど。大聖女さまも何故か第一皇子殿下が男色もイケる人だと耳打ちしてくれたし。あれ、あれと頭の中で思考がぐるぐるし始めるけれど、やるべきことがある。


 頭を下げる宰相閣下に、これじゃあ暴れることは出来ないなと苦笑い。まあ、収めるべき所に収められそうなので、文句を言っても仕方ないか。

 皇帝はヒロインちゃんを手に入れられる可能性が出てきたことに、ウッキウキみたいだし御しやすい。いろいろと考えている間に皇女さまや宰相閣下の命によって、銀髪くんには再度足枷、更に手枷と猿轡を嚙まされた。一応西大陸の人間なので、私の安全を脅かすということで拘束とのこと。

 

 「いえ、わたくしへの謝罪は結構です。それより竜の大群やアルバトロスの魔術師たちが帝国へ乗り込んでくる可能性が高いでしょう」


 直ぐに攻撃態勢に移るとは考え辛いですがと、付け加えておく。クロが怒っていたら、例のレーザービームが飛んでくる訳で。一夜にして帝都が……一夜あれば帝国の半分くらい落とせそうだな。失礼、一瞬にして帝都が灰燼と化す気がする。


 「え?」


 「あ?」


 「はい?」


 「お?」


 順番にウーノ皇女、第一皇子、宰相閣下、皇帝陛下が声を上げ呆けた顔になる。まあ、竜が襲ってくるなんて考えられないよねえ。帝国の使者が訪れた時、クロには引っ込んでいてもらったし。あとついでに割と強いスライムさんと成長途中のフェンリルに、エルフのお姉さんズやお婆さまも一緒に来るんじゃないのかなと踏んでいる。エルとジョゼはどうだろう。

 子育ての最中だし、ちょっと分からない。アルバトロスの竜騎兵隊もやってきそうだなあ。航続距離は竜よりも短いだろうから、彼らの背に乗って帝都に着いたら空母から発艦する航空機みたいになりそう。


 アガレス帝国に召喚されて三十分程度の時間が過ぎた頃だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] おとぎ話にだけ存在する、一夜で消えた国 本当に実現されてまう……
[一言] たまに、ナイさん頭ワイテル発言するよね。(皇帝さんヒロインにワンチャンあるよみたいな?)
2022/08/28 13:54 となりのにゃんぱすー
[気になる点] ナイの黒髪の長さが気になる。短くても長すぎても、本人は子供っぽいと嫌がるかも。長くても肩に届くくらい? [一言] 流れる(流される)ようにアガレス帝国蹂躙(笑)。ナイ本人は流されている…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ