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0419:新たな住人。

2022.08.19投稿 1/2回目

 三学期があと数日で始まる、その日。子爵邸に新たな仲間がやってきた。仲間というのは語弊があるかもしれないけれど、今日から一つ屋根の下――別館だけれど――で暮らすのだから一緒だろう。

 新しく建てられた別館には既に荷物が運び込まれている。聖女さまたちが身の安全の為に子爵邸の別館で生活することが決まったのだけれど、まさかアリアさま以外の知り合いの聖女さまがやってくるとは考えていなかった。


 「ようこそいらっしゃいました。アリアさま、ロザリンデさま」


 子爵邸の馬車停に着いた教会の馬車から降りてきたのは、アリアさま以外の聖女さまはロザリンデさまだった。ロザリンデさまが子爵邸に住むことになったことは、意図的に隠されていたのか、単純に忘れていたのかは謎だけれど、知っている人で良かった。

 クロを肩に乗せて、子爵邸の面々が揃ってお二人を出迎える。クロは勿論だけれど、ロゼさんや子フェンリルにエルやジョセにルカ、何故かエルの背に乗っていたお猫さままでいらっしゃる。賑やかなのは良い事だし、新しく増えた面々も紹介しなければならないので丁度良いのだろう。


 「今日からお世話になります、ナイさま」


 「ナイさま、よろしくお願いいたします」


 アリアさまとロザリンデさまが聖女としての礼を執る。アリアさまは教会施設で過ごしていたから、こっちの方が確実に安全だ。

 ロザリンデさまは侯爵家からの移動となるので、下手をすればグレードダウンのような気もするが気にしていないだろうか。もちろん安全面という意味合いでは、子爵邸の右に出る場所なんて早々存在はしないだろうけれど。


 「気軽に過ごしていただけると嬉しいです。ロザリンデさまには少々手狭となるかもしれませんが」


 侯爵邸の私室の方が絶対に広いと思う。別館が完成した際に見学させて貰ったのだけれど、部屋の大きさはいたって普通。ミナーヴァ子爵邸の私の部屋より狭く、住み込みの侍女さんたちに与えられている部屋よりは広い。

 

 「気にしておりません。新しく建てられた別館が用意され、そちらで過ごすように聞いております。――この度はミナーヴァ子爵邸で過ごすこととなった栄誉、真に感謝いたします」


 ロザリンデさまがもう一度頭を深く下げる。私もそれに倣って頭を下げるのだけれど、そんなに畏まらなくても。別館にも侍女さんが配置されるので、基本的なことは彼女たちに任せても大丈夫。

 ただロザリンデさまはお貴族さまらしくない生活を最近満喫しているようで、介添えの方はそう必要ないらしい。なんだか最初に出会った頃の彼女のお貴族のお嬢さまっぷりが随分と懐かしい。

 

 「私も今日からナイさまのお屋敷で暮らせることになったこと、本当に嬉しいです! 改めてよろしくお願いします!」


 勢い良く頭を下げたアリアさまに苦笑を浮かべると、肩からクロが飛んでアリアさまとロザリンデさまの前で止まる。


 『今日からよろしくね。二人とは会ったことがあるけれど、こうして喋るのは初めてだから挨拶させてね。――ボクはクロって言うんだ。君たちの名前を教えて貰っても良いかな?』


 「ロザリンデ・リヒターと申します」


 「アリア・フライハイトです!」


 多分、爵位が考慮されているのかなあ。ロザリンデさまが先でアリアさまが後に挨拶をしている。


 『ロザリンデとアリアって呼んでも良いかな?』


 クロは社交に積極的というよりも、少々緊張気味の二人に気を使ったのだろう。ただ、クロが行くと余計に緊張するんじゃないのかな。アリアさまは顔を輝かせながら、クロが喋れるようになったことを喜んでいるけれど、ロザリンデさまは自己紹介を終えた後は固まっているし。


 「はい、よろしくお願いしますね!」


 「よろしくお願いいたします」


 エルとジョセは知っているし、ロザリンデさまはルカと初対面。まだ喋ることはできないけれど、エルとジョセを通して意思疎通は出来る。

 お猫さまはエルの背の上にちょこんと綺麗に座って、金色の目を細めながらぞんざいにお二人と挨拶をしていた。ロゼさんと子フェンリルは、ロゼさんが子フェンリルの紹介をしていたので、私が説明することはなく。後は子爵邸の面々との挨拶を済ませて、別館へと歩いていくお二人の背を見送った。

 

 「馴染めるかなあ……」


 うーん、どうだろうか。


 「フライハイト嬢に心配は必要はなさそうだがな」


 「リヒターさまはどうでしょうか?」


 アリアさまは割と順応能力が高そうだし、エルとジョセとも普通に喋っているし、偉そうな言葉使いのお猫さまも受け入れていた。ロザリンデさまは顔が引きつって、言葉数も少なかったから。


 『緊張しているみたいだったね』


 お二人を見送った後、クロは私の肩に戻っていた。首を少し傾げてお二人の緊張を感じ取っていたようで。


 『クロさま。ロザリンデさまは慣れるまでに少し時間が掛かりましょう。彼女の様子を気にしておきます』


 『そうですね。せっかく聖女さまの家で過ごされるのです。私たちの所為でくつろげないとなれば、聖女さまの不名誉となりましょう』


 エルはクロの事を幼竜さまからクロと呼ぶようになっていた。ジョセも同様でクロと呼んでいる。エルとジョセは二人を気遣っているようだけれど、余計に緊張するんじゃないのかなソレ。二頭が動くということは黒天馬であるルカも一緒に付いてくる。三頭一緒に別館に遊びに行くつもりなのだろうか。どちらにしろ、アリアさまとロザリンデさまが馴染んでくれると良いのだけれど。


 『人間の癖に我らに対して考えすぎであるな』

 

 顔を手で洗いながら、お猫さまも何か思う所があったようだ。苦言というよりも、お二人に対する悪意のない素直な感想なのだろう。


 「ロゼさんも君も、アリアさまとロザリンデさまをよろしくね」


 静かに佇んでいたロゼさんと子フェンリルに、視線を向けると『うん』と頷くロゼさんと『わふ』と声を上げた子フェンリルが答えてくれるのだった。

 ご指摘にて、0002話でジークとリンが一番長い付き合いで~となっていたのですが後の話に矛盾があるので、0002話の『一番』を抜きました。ジークとリンが主人公と一番長い付き合いという設定が気に入ってくれていた方には申し訳ありませんが、後に響き過ぎるので修正させてください。┏○))ペコ

 言い訳ですが、設定等起こしておらず、本文が設定! と言い切るやり方の上に、毎日投稿チャレンジ期間中故の読み直しできないのが辛い……。

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― 新着の感想 ―
[一言] 直ぐに慣れるでしょう と言うか慣れないと其処での生活が苦になるし、色々と政治的判断で侯爵家から来てるとすると必死に慣れようと頑張るのでは? キツイ物言いが多いけど頑張り屋な娘ですし え…
[気になる点] >顔を手で洗いながら、お猫さまも何か思う所があったようだ。 次の日は雨だったのだろうか?
[一言] >~0002話で~ 1000話超える予定なんだな
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