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0407:取り分。

2022.08.13投稿 1/2回目

 ――討伐した数を覚えていてください。


 アルバトロス王国ギルド支部の支部長さんの言葉だ。先ほど火蜥蜴を計十三匹倒したが、配分ってどうなるのだろうか。


 「とどめを刺した方が基本的に総取りですね。まあこれは僕たち魔術師のルールなので、聖女さま方はどういたします?」


 チームで行動している冒険者の皆さまもルールを決めて運用しているそうだ。取り分って喧嘩の元となりチーム崩壊の危機、なんてことになる可能性が高いのでかなりシッカリと決められているそうで。今回、冒険者登録を済ませた理由は素材の換金の為。本来ならこの場所に練習としてやってきても良いけれど、強い魔物イコール良い素材が落ちる、だ。

 せっかく来たのだし副団長さまたちの懐に入るだけでは問題があろうと、アルバトロス上層部に掛け合ってくれたらしい。

 実力があるからチームを組んで真面目に冒険者として取り組めば、AランクやSランクになれるそうな。昇格試験がある故に直ぐにランクが上がるのは不可能だし、銀髪くんの件で審査が厳しくなったので、低ランクの冒険者でも昇格審査に時間が掛かるとか。


 冒険者を副業としてやるなら、適当な場所に赴いて魔物を倒し素材をギルドに売り払うのが一番効率が良いそうだ。討伐依頼等は受けず、ただひたすら換金のみ。なので副団長さまの冒険者ランクはEランクで止まっている。

 彼の実力を知っている人たちは、昇格試験を受けてみてはとよく言われるそうだが、忙しいの一言で断っているとか。

 ランクが上がると指名依頼があるから面倒なのだろう。拒否権があるので断ることも出来るが、拒否を続けるとランクが下がる。高ランクなんて目指していないので、冒険者としてのランクには興味はなく、ギルドで換金する為に登録しているに過ぎないそうだ。

 

 「ジークとリンはどうする? 私は副団長さまの方式で良いかなって考えているけれど」


 必要なものは自分たちの懐へ。残りはギルドで換金してお小遣い稼ぎ。


 「試し切り出来ただけでも十分だが……」


 「どうしよう?」


 魔物を倒すとお小遣いが貰えるって感覚があまりないので、ジークとリンが戸惑っている。教会護衛騎士は討伐派遣の時はいくら倒しても、討伐派遣手当がつくだけだもんねえ。私も討伐派遣の時は定額の支給だから、ちょっと慣れないかも。

 ちなみに討伐派遣の時は軍や騎士の方たちが素材や魔石を回収する。で、被害を被った領にいくらか払われて、あとは軍や騎士団の補填に回されるから。


 「気軽に考えて頂ければ良いですよ。今回は通常の派遣ではなく魔術の練習としてこの地に赴いているんです」


 強い魔物が出現する地域なので、軍や騎士の方々を常駐させるよりも魔術師さんたちの遊び場にする方が効率や利益が良かったのだろう。常に副団長さまのような強い方は居ないが、チームを組めば大抵の問題は片付く。本当、魔術師と呼ばれれる方々は変態と言われるだけはある。


 「じゃあ三人で山分けする? 後で美味しいもの買って貰って、みんなで食べようよ」


 私は王都の街に出られないから子爵邸で働く誰かにお使いを頼むことになるけれど。お留守番組のクレイグやサフィールに託児所の子供たち、ちょっとしたものならば邸で働いている人たちに差し入れも良いのかも。

 美味しいものを食べている時は幸せだから、たまにはこうして贅沢をしても誰も怒らないだろうし。王都の流行りのお菓子とか手に入れられるなら、食べてみたいよねえ。料理長さんがご飯やお菓子を丹精込めて作ってくれ、滅茶苦茶美味しいけれど偶には違うものも口に入れたい。ようするに偶に食べるジャンクフードは何故か美味しいというヤツである。


 「お前はまた食いに走るのか」


 「ナイはもっと食べても良いと思うけど」


 ジークが呆れつつ、リンがフォローに回っていた。食べても太らないからなあ。食べた先から魔力に変換されているようだけれど。胃の大きさは決まっているので、食べられる量は決まっているから悩ましいよね。無限に食べられるならば、無限に食べてみたい気持ちもある。

 

 「もう。――で、どうするの?」


 歩きながら先を目指しているけれど、また魔物がいつ現れるか分からないしさっくり決めておく方が良いだろう。


 『?』


 クロが私の肩で大きく首を傾げる。


 『うん?』


 ロゼさんは何故かいったん立ち止まって、長く縦に伸びて天辺の部分を左右に揺らしている。


 「何か気配が……いえ、勘違いですね」


 副団長さまも周囲を見回し不思議そうに首を傾げた後に、目を細めつつ結局何もないと判断したようだ。


 「どうしました?」


 何が起こるか分からないし、念の為に聞いておく。いつもと違うようなという感覚は結構大事で、こういう感覚も大事だろうから。残念なことに、私は全く分からなかったけれども。魔術は各々で得意分野や領域が違うから、仕方ない部分もある。

 

 「いえ、何か視線を感じたのですが……一瞬で感覚が逃げていきましたね」


 『ボクも何か感じたけれど、分かんなくなっちゃた』


 『ロゼも感じた。でも何だろう、分からない。ごめんね、マスター』


 一人と一頭と一匹、それぞれ同じような意見だった。感知に長けている方たちだから、気を付けた方が良さそう。そもそもこの場所は強い魔物が出る土地なのだから、気を抜かない方が良い。


 「謝らなくていいよロゼさん。気を付けて進もうね」


 ぺたんと地面に平面に伸びたロゼさんに声をかけると、丸みを帯びて元の形に戻ったあと、ロゼさんのまん丸ボディーを撫でる。何故かクロが私の顔に顔をすりすりしてくるので、クロの頭も撫でておいた。


 「ジーク、リン。素材は三人で山分けで。――この先何があるか分からないし、気を引き締めて行こう」


 申し訳ないけれど分け前は勝手に決めさせて頂いた。


 「ああ」


 「うん」


 私の言葉に確りと頷いてくれたジークとリン。気合を入れる為に片手を二人の前に突き出すと、ジークとリンも私の意図が伝わったようで拳面を突き出した。軽くそれぞれの拳面に合わせる。儀式とか気分の切り替えに丁度良いよね、コレ。あとは私がやりたいだけの自己満足だけれど。


 魔術師としてならまだまだ半人前。ジークとリンは騎士なので前衛としての役割が大きい。副団長さまが前衛が居ると楽でいいですねえと、少し前に呟いていた。普段は一人でこの場所に訪れたりしているのだろうか。

 彼ならばどんな敵が出てきても軽くあしらってしまうイメージがあるので、苦笑いをするしかないのだけれど。


 「奥へ進みましょう。時間が経てばもう一度冒険者ギルドへ戻って換金です」


 ちょっとした不安と期待を持ちつつ、足元の悪い道を進む一行だった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 倒した者が討伐対象の素材総取りってのは良い案だけど、同行してる者によっては危険な案になるのでは? 例えば欲深い者なら率先して倒しに行きますけど、飛ばし過ぎて身の危険を顧みずなんて事もある…
[一言] >視線 HERE COMES A NEW CHALLENGER! 是非とも連コインしてもらい良いお客様になっていただかなければ(狩る気マンマン) 実際んトコはどんなニューカマーなのか気に…
[一言] 次の問題(ルビ:お客様)が来たみたいですね
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