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0021:仲間内。

2022.03.08投稿 2/2回目

 ソフィーアさまの背がかなり小さくなった頃、息を吐き二人に向き直る。


 「ジーク、リン、ありがとう」


 二人が面倒ごとに巻き込まれなくてよかった。聖女の称号を持っている私なのである程度の不敬ならば見逃してくれる可能性があるけれど、二人はただの護衛であり平民である。

 難癖を付けられれば確実に負けてしまう立場なので、こういうことには巻き込みたくはないし、十分に配慮をしなければならない。


 「いや、結局なにもしていないからな」


 「大丈夫?」


 「うん。ちょっと詰め寄られただけで何かされたって訳じゃないから、平気」


 私の言葉にぴくりと片眉を上げたジークは、じっとこちらを見つめてくる。

 

 「――何をされた?」


 今度は腰を曲げて視線を合わせられたので、誤魔化すなよということらしい。


 「ナイ?」


 今度はリンまで加わって。


 「……んー」


 大したことはしていないのだ。単に彼女に言ったことが伝わらなかっただけである。メッサリナさんがあの後にどういう行動をとったのかは分からないけれど、殿下たちが私に詰め寄ったということは彼らに『距離を取った方がいい』という話はしたのだろう。

 ただ、彼らの態度から推察するに、感情を煽るような伝え方をしたのだろう。もう少しキチンと丁寧に話すべきだったと、今更ながらに反省するのだった。


 「言え。というか昨日なにをした?」


 高圧的な言葉であるけれど、二人の場合は本当に心配してるから。そしてもう一つ私がなにか面倒ごとに巻き込まれていないかという、確認作業だったりする。

 生まれ変わってからというもの、面倒事が舞い込んでくることが多々ある。私と一緒にいた時間が長い幼馴染組は、それをよく知っているのからか、知らないことがあるとこうして問い詰められて吐かされるのだ。


 「あー……うん」


 話すか話さないか迷うけれど、話したところで状況に変化はないだろうし、ウチのクラスではこんなことがあると知っておいた方が巻き込まれないで済むだろう。


 「誤魔化すのは無しだ」


 「だね。ナイはいつも私たちに肝心な所を話してくれない」


 「わかった。話すから、とりあえず二人とも顔、近いって」


 結局、二人に詰め寄られて話すことになったのだけど、起こったことと私の推測を聞いてジークは呆れ、リンはあまり理解できなかったようだ。

 だからリンには貴族のルールと庶民の常識を説明して、ようやく理解してくれた。これでリンに貴族と平民の距離感が掴めたのならば、ヒロインちゃんのあの行動も無意味なものではなくなる。関係者には迷惑極まりない行動だろうけれども。


 「その女、物語に憧れすぎてるな」


 「んー、そんなもんじゃない? だってまだ十五歳だし」


 「確かにな。だが、この学院に通うならお貴族さまのルールは必修だろう。平民なら尚更だ。それに俺たちも十五だぞ」


 「彼女と私たちじゃあ育った環境が違い過ぎるもの。子供の頃に読んだ絵本とかに憧れてるんじゃない?」


 「本気か?」


 「そうじゃなきゃ、王子さまになんて近づかないでしょ。顔はいいし、お金持ちだし」


 この場には三人しか居ないので、言いたい放題である。とはいえ声量は押さえてあるけれど。


 「……他には?」


 「愛があるんじゃないの、多分……」


 恋とか愛には縁遠いのでよく分からないけれど。でも殿下たちとヒロインちゃんたちの間では甘い空気が流れているし、まあそういうことなんだろう。私的には、王子さまと結婚なんて面倒で大変なだけってイメージしかないから、付き合うなんて選択肢が存在しない。


 ――面白え女。


 なんて少女漫画や乙女ゲーム的な展開がある訳もなく。そもそもそのヒロインポジは件のヒロインちゃんである。

 でもまあ現実での出来事なのだから、ゲームや物語の感覚で行動しないでよと思うし、無責任なものを作って世の女の子たちに夢を与えているものだ。

 どうにも捻くれて生きてきたからか、そういう夢物語には唾を吐くタイプだった。シン〇レラとか典型的だろう。継母や義姉たちにいじめられて王子さまに見初められる、なんて展開。


 基本王族は王族同士での婚姻を結ぶもの。国内の有力貴族と強固なつながりを持ちたければ、その貴族との婚姻を結び関係を持つ。

 シンデ〇ラの家って有力な貴族だったかどうか分からないし、むしろ王太子ならば外交の為に他所の国の姫さまを娶れよと突っ込みを入れたくなる。しかも彼女、王子妃教育なんて受けてないだろうから、結婚後は超大変である。政を執り行わなければいけないし、諸外国や国内の有力貴族との繋がりの維持。それに奇麗ごとだけではなく汚れ仕事もあるだろうに。


 そんなことを前世で友人に愚痴ればお前は捻くれすぎていると、白い目で見られた。


 ソフィーアさま経由で今回の件は伝わるだろうけれど、これは公爵さまに報告案件だ。ソフィーアさまから伝われば十分だと思うけれど、他人の目から見た証言も必要だろうし、大人組の判断も必要になってくる。筆不精だから手紙は苦手なんだよなあと、心の中でまた愚痴るのだった。



最後だけ決めて勢いで書いていましたが、道筋が大分見えてきたので『微ざまあ』のタグを追加しました。上手い『ざまあ』が書けるのか分からないので『微』にしております。チキン。

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― 新着の感想 ―
[一言]  チキンではない、です。わたくし的には。  微ざまぁ、なのか、盛大ざまぁ、なのか、それは主観の領域。作者様、読者への気配り、お優しい方と存じました。  作者様がどのようなざまぁをご用意下さっ…
[一言] アラジンも似たような疑問いきますよねえ
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