第一章 商業の街アートリオン 第3話 アートリオンを守りし者たち
―利用規約―
・ツイキャス、ニコニコ、リスポンなどで上演する際は、作者に断わりの必要はございませんが、連絡やツイッタ―通知を出していただけますと、録画や上演枠に顔を出させて頂きます。
・上演する際はこの台本のタイトルとURL、作者(協力は不要)、配役表をコメント欄にのせていただきますようお願いいたします。また、mojibanなど補助ツールの使用は可能としますが、台本のURLの代わりにするのはやめてください。
・過度のアドリブ(世界観の改変)、性転換は一切しないようにお願いします。また、適度なアドリブや読みにくい個所の語尾改変は、世界観の変わらない程度ならOKといたします。
・無断転載はしないでください。もし、発見や連絡があった場合、作者が確認したのち法的処置を行いますのでよろしくお願いします。
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≪メインキャラ≫
ラーク・ウィッシャー:15歳。グランハルト帝国戦争を戦い抜いたクラッチ・ウィッシャーの息子。職業は魔法剣士マジック・ソーディアン。剣の技術に秀でているが、魔法に関してはてんでダメ。下級魔法でも最弱の威力しか出せない。グランハルト帝国の皆が持っている力、「グラン」を持っているが、うまく自分の力を理解していない。熱い性格で常にポジティブな考えを持っている。
ミカエル:ミカエル:15歳(人間年齢)。ラークの夢の中に現れた天使。容姿はかなりの美女。彼女の歌う歌には癒しの効果があり、支援要因として主人公パーティーを支える。出来損ないの天使であり、人間の気持ちを理解するためにラーク一行の旅についていくことになった。
ジョージ・ブライアン:性別おかま。40歳。クラッチとともにグランハルト帝国戦争で戦った英雄。グランハルト帝国戦争時の年齢は30歳。職業クラスはハンドガンがメインウェポンのガンナー。スナイパーライフルも巧みにこなすことから、グランハルト帝国戦争時は王城からクラッチたちの通信を頼りにガベルと戦った。現在では『なんでも屋じょーじ』を経営している。グランハルト帝国の皆が持っている力、「グラン」を持っている。
業魔神ガベル:長年生き続けている業魔業魔神。その性格は残忍。グランハルト帝国戦争の時に乱入してきたが、クラッチ、ティアを合わせた四人の英雄「グランハルトブレイバー」に封印されていた。しかし、この度、誰かが封印を解き復活してしまった。
アンジェ・クレイトル:12歳の関西弁をしゃべる少女。商業の街アートリオンの出身。職業クラスは魔術師マジシャンだが、詠唱に関してはかなりのオリジナル。だが、自分の出したい魔法晶術が出せてしまうことから(本人曰く術式は全て暗記済み)、アートリオンの中では変わり者と言われている。商業の街アートリオンでクレイトル市場しじょうを経営しているクレイトル一家の看板娘。グランハルト帝国の出身ではないため、『グラン』は使えないが、『覚醒』を備えている。だが、覚醒するためには条件があるらしく、その条件を満たしていないため、発動したことはない。
クルーラ・クレイトル:40歳。関西弁で話す。商業の街アートリオンにて、クレイトル市場しじょうを経営している。職業クラスは行商人。特殊な職業クラスであり、彼の話に背そむくものは行動不能となる。基本的に温厚だが、気に食わないことが起こると、彼の持っている能力スキルで自ら制裁を下す。アートリオン市場しじょう会の会長も務めている。
ミシェル・ベルサス:15歳。アンジェの幼馴染。職業クラスは???(アンノウン)。アンジェのことが好き。だが、彼女には気づいてもらえずにため息をつくことが多い。根はしっかりとした男の子だが、隠されていることが多すぎる。
ギルベルト・アンダーソン:業魔ごうまガベルが率いる、暗黒四天王が一人。火の魔法の使用に長けている。口にピアスをつけており、性格はチャラくてウザい。敵を煽あおるのが趣味で、その性格上、味方までも煽あおってしまうことがある。見た目年齢は20代前半。
アインス・クルセイダー:業魔ごうまガベルが率いる暗黒四天王が一人。水の魔法に長けている。女性の業魔で元人間。何があったかは不明で姿かたちは人間だが、実力では他の業魔をしのぐものを持っている。暗黒四天王でNo.3の強さを誇る。冷静でスタイルがいいことから、なかなか合う服がないので胸のところはぱっくりと空いている服を着ることが多い。冷静沈着だがガベルへの忠誠心はそこそこしかない。ただし、ガベルに反旗を翻ひるがえすものには容赦なく制裁を加える。
≪配役表≫比率3:2:2
ラーク:不問:
ミカエル/アインス:♀:
ジョージ/業魔神ガベル:♂:
クルーラ:♂:
アンジェ:♀:
ミシェル:不問:
ギルベルト:♂:
ラークM「目の前にはアートリー・バーンになったミシェルがたっていた。その姿はまさに竜神そのものだった。」
アンジェ「あれが……ミシェル……」
クルーラ「せや。あれがアートリオンの伝承であり、禁句であり、神からも人間からも差別され続けてきたアートリーバーンの姿や。」
アンジェ「お父ちゃんは知ってたん?」
クルーラ「もちろんや。あいつと初めて会うた時からすでに知っとったからのぉ。」
ミカエル「神からも差別されていたのは初めて聞きましたが本当でしょうか?」
クルーラ「もちろんや。本人から聞いたさけぇの。それこそその力の強大さとアートリーバーンの誰かを守りたいという思いの強さ、そして従順さに付け込んでドレイとして扱われてたんや。ミシェルの家族やって例外やない。そして、ミシェルの家族は神と人間に殺されたんや。」
ラーク「その殺された原因って業魔戦争ですか?」
クルーラ「せや。業魔ごうま戦争にミカエル側として連れていかれたミシェルの家族は、後ろから敵側の業魔に狙われ、体力を奪われたところをクレス帝国の人間に殺されたんや。」
ミカエル「そう……でしたか……」
クルーラ「せやからミシェルが父親と母親を守れなかった分、あいつの誰かを守りたいっちゅう思いは一番いっちゃん強いんや。せやからこそ、誰かが傷つくのを見てられへんかったんやろなぁ」
アンジェ「…………」
ミシェル「我わが名はアートリー・バーン。この街を……民を守るために顕現した。」
ギルベルト「ハーーッハッハッハ!何がアートリー・バーンだ!タダのデカ物じゃねぇか!神と人間に差別されたドレイごときに何ができるっていうんだよ?あぁ?」
ミシェル「お前は街の人とアンジェを傷付けた。絶対に許さへん。」
ギルベルト「許さない?許さないってどうするんだ?やれるもんならやってみろよ!魔界の炎!地獄炎!」
ミカエル「また、禁術!」
ラーク「危ない!!」
ミシェル「フェザー・ウインド!」
ギルベルト「な!?打ち消されただと!?」
ミシェル「さて、次はなんや?あまり失望させんなや?三下。」
ギルベルト「三下?三下やと?ふざけんな!三下は手前だ!煉獄爆撃斬!!」
ラーク「魔術で出した剣で切りかかった!?」
ジョージ「それだけじゃないわ。あの剣にまとっている闇……なにかありそうね。」
ミシェル「そんな一辺倒な攻撃しかしないから三下って言われるんわからんのか!ウインドスラッシュ!」
ギルベルト「うぉ!?」
ジョージ「体勢を崩した!?チャンスよ!」
ミシェル「ダークネス・ウインド!!」
ギルベルト「ギヤァァァ!!」
ミシェル「加えて、レジステッド!」
ラーク「ミシェルの傷が回復していく。」
ギルベルト「ギァァァ!!」
アンジェ「逆にこっちは苦しんどるで!?」
クルーラ「ミシェルが負った傷があいつに刻まれていってるんや。絶対回避不可能の禁術。まず、人間が使うのは不可能やな。」
ミカエル「あれほどの禁術のなかでの最強魔法を詠唱破棄で連続で出せるなんて……どれほどの膨大な魔力と魔法脳なの。」
アンジェ「魔法脳?」
ミカエル「魔術を作るときに色々考えるでしょう?その考えるために私たちは詠唱を使うのだけれども、魔法脳が大きい人は詠唱なしでどんどん術式が組めてしまうの。」
クルーラ「その魔法脳が膨大でないと禁術なんてもん詠唱破棄で出せんし、重ねてなんて不可能や。それができるっちゅうことはそれなりの魔法脳があるんやろうなぁ。」
アンジェ「ミシェル……」
ラーク「あの、クルーラさん。」
クルーラ「なんや?」
ラーク「ミシェル……アートリー・バーンってどういう存在なんですか?」
クルーラ「……そうか、ラークはんら本読めてへんかってんなぁ。」
ジョージ「えぇ、その項目の前に爆発音が聞こえたからここに駆けつけてきたのよ。だから、内容には一切、目を通していないわ。」
クルーラ「そういうことかいな。しゃぁないな。ほんなら話したるか。ワシとミシェルの出会いの話をな。」
ジョージ「それって関係あるの?」
クルーラ「関係あるも何もアートリー・バーンについてはさっき話した通りや。実力と正義感の強さからドレイとして使われとったってな。神からも人間からも差別を受けた種族。それがアートリー・バーンや。昔からそれが気になっとったワシは実態を調べるために、伝手つてをたどって、神の国エデンにいったんや。」
ミカエル「エデンですって!?」
クルーラ「せやで?なんか知ってるんかいな?」
ミカエル「エデンは私と母の故郷こきょうです。」
クルーラ「そうかいな。今のエデンはよう知らんけど、当時のエデンは、業魔軍の侵攻により、食糧危機や物資危機に陥っとった。そういうの補うためにストリートチルドレンが大量に増えとったんや。そのエデンで、あるストリートチルドレンに会おうてな。それがミシェルやった。まぁ、ミシェルに関しては他と境遇は違うんやけど、他のストリートチルドレンに混ざって端の方で物を売っとった。あんときのミシェルは自分の羽で作ったアクセサリーを売っとってな。できも素晴らしかったし、話術も商人顔負けの交渉力やった。他のストリートチルドレンと違ちごうて、元気に接客しとってのぉ。そこで興味沸いたワシはあいつに話しかけたんや。」
ー間ー
≪神の国エデン 噴水広場≫
クルーラ「よう、兄あんちゃん!ワシにも商品売ってくれや!」
ミシェル「いいですけど、ボクの商品は高いですよ?」
クルーラ「かめへんかめへん。ん-とな、アンタの店の商品全部くれや!」
ミシェル「な!?なんでそんなこと!?あなたとは今日初めて会ったばかりだというのに、こんなこと……」
クルーラ「とりあえず、いったん店閉めてこっちにきてくれへんか?少し話しようや。」
ミシェル「……はい。わかりました。」
クルーラ「物分かりようて助かるわ。ほな、いこか。」
ー間ー
≪神の国エデン Bar「G.E.」≫
クルーラ「いい酒やなぁ!こんなバーあるんかいな!」
ミシェル「このバーは安くておいしいから、ボクの行きつけでして。」
クルーラ「まてや、行きつけって。お前さん、見た限り10歳ぐらいやろ?」
ミシェル「ここは神の国ですよ?成人は5歳で迎えるんです。」
クルーラ「ということは、お主も何かの神様かいな?」
ミシェル「アートリー・バーンっていえばわかりますか?」
クルーラ「そりゃぁ、わかるもなにも、ワシの住んどるところの神様やからな?」
ミシェル「それがボクなんですよ。」
クルーラ「……は?」
ー間ー
≪商業の街アートリオン≫
クルーラ「それからワシはミシェルに色々聞いたんや。アートリー・バーンについて、この街の禁句のことも含めてな。その対価として、ワシは人間の国々の言葉を、ま、ワシはここの言葉しか知らんけど、それを教えた。そんだけの話や。」
アンジェ「でも、ミシェルはウチが小さいころからの知り合いやで?そんなのありえんわ。」
クルーラ「神様かみさんも大変みたいやったぞ?人間の年齢に合わせるんわな。アンジェの年齢……15歳の年齢が神様年齢やと3000歳なんや。ワシらの暮らしに合わせるためにその辺、色々調整したみたいやで。そうやろ?ミカエルの嬢ちゃん。」
ミカエル「えぇ。私たち神は人間年齢に合わせるために様々なことをしないといけません。私もそうですが、さぞ大変だったと思います。」
ジョージ「人の依り代は必要じゃないの?」
ミカエル「依り代は必要なのですが、人の身体というわけではありません。人間という概念さえあればそれでいいのです。」
クルーラ「せや。やからミカエルの嬢ちゃんやミシェルみたいに人の体しとるもんや、あのギルベルトっちゅうやつみたいに異形いぎょうのやつもおるってやっちゃ。それだけ意志の強いミシェルがアートリー・バーンになった。この戦いはもろたで?」
ー間ー
ギルベルト「お前、その力を人のために使うのかんか?」
ミシェル「それの何が悪い?人間世界のために俺が神の力を使うのがダメな理由はないだろう?」
ギルベルト「ダメな理由はないさ。ただ、そんな下等かとう種族のために使うとは……お前、神から堕おちたか?」
ミシェル「だからなんだ?もともと俺は差別されていた身だ。堕おちていようが変わらんよ。」
ギルベルト「確かになぁ。だが、そんな神様もどきに現神である俺が負けるわけねぇわなぁ!!地獄から出でし炎よ!わが呼び声に応え舞い上がれ!!ヘルフレア・サイクロン!!」
ミカエル「最大禁術をここで!?」
アンジェ「避けや!ミシェル!!」
ミシェル「……散!!」
ー間ー
アンジェ「……あの大きな竜巻が……一瞬で消えてしもうた……」
クルーラ「そうやった。これがアートリー・バーンやった。」
ミカエル「これも詠唱破棄……」
クルーラ「いや、そうやない。あれは、エデンの……いや、ミシェル家に伝わる魔術や。」
ギルベルト「俺の最大魔法が一撃で……く……くそがぁ!!ダークネス・エンド!!」
ミシェル「!?これはまずい!」
ジョージ「辺りが暗く……ラーク!離れるんじゃないわよ!!」
ラーク「わかった!これはまるでブラックホールだ……」
アンジェ「ブラックホール?なんやそれ。」
クルーラ「わかりやすぅいうと、宇宙の掃除機やな。まさしく闇の世界やわ。」
ギルベルト「さぁ、俺がどこにいるかわかるか?アートリー・バーン。」
ミシェル「うるさい。さっさと来いよ。」
ギルベルト「まぁ、そう焦るなよ。俺がこうしたのはお前の精神を揺るがすためなんだからよ!」
ギルベルトM「いい獲物はいねぇか?お?あそこにいいガキがいるじゃねぇか。よし」
アンジェ「ミシェルー!お父ちゃん!どこおんねん!」
クルーラ「アンジェ!どこや!」
アンジェ「お父とっちゃん!ここや!ここ!」
クルーラ「くそ、見えん!開眼!そこか……あれは?」
ー間ー
ギルベルト「さぁ、俺はどこにいるでしょうか?」
アンジェ「あいつの声……どこにおるんや!?」
ギルベルト「ここだぜぇ、嬢ちゃん。ダーク・ソード!!」
アンジェ「な!?」
アンジェM「あかん!回避が間に合わん!」
アンジェ「……終わってまう」
クルーラ「終わらせるか!!このドアホ!!」
アンジェ「痛ッ!この声はお父ちゃん!あ!辺りが明るく……」
ー間ー
クルーラ「…………」(腹を刺されて立っている)
ギルベルト「…………」(右手が手首まで腹に入っている)
アンジェ「…………え?」
ギルベルト「よう、おっさん。てめぇに要はねぇんだよ。」
クルーラ「奇遇やのぉ……ワシもお前さんに用はないんや。ただの、このままにしといてくれや。抜いたら血の量が多くてすぐ終わってまうし、娘に最期の言葉ぐらい残すのが父親の務めやからの。」
ギルベルト「ハハハハハ!俺がそんな優しいことすると思うか?急所は外してるし、出血も最小限に抑えているが体の中に悪魔蟲を放った!ま、一つ言うとすれば体を悪魔蟲が蝕むまでの時間しかないとだけ言っておこうか。」
クルーラ「そうかいな。そりゃぁ有益な情報やで。」
ギルベルト「じゃぁな、おっさん!蝕め!悪魔蟲!」(腕を引き抜く)
クルーラ「ガハァ!!」
アンジェ「お父とっちゃん!」
ジョージ「クルーラ!」
クルーラ「何騒いどんねんな。2人して」
ジョージ「当たり前じゃないの!親友ともがそんな弱弱しい顔してたら……」
クルーラ「アホぬかせ。ワシは天下のクルーラ様やぞ?そう簡単に死ぬかいな。」
ジョージ「でも……」
クルーラ「おう、ゴリラ……」
ジョージ「……何よ」
クルーラ「おいおい、いつものようにツッコんでくれや……お前さんのツッコみ聞かな長旅いかれへんやないか」
ジョージ「……内容次第にしてあげるわ」
クルーラ「……しゃぁないな。じゃぁ、聞いといてくれや。アンジェもよく聞くんや。そこの若人わこうど達も。ワシの最期の言葉を聞いてんか。」
ラーク「はい。」
ミカエル「えぇ。」
ミシェル「(涙を流している)」
クルーラ「せやな……ま、この話がいいやろ……お前さんらの夢はなんや。」
ラーク「夢……ですか?」
クルーラ「そうや。夢。聞かせてんか。」
ミカエル「天井と地上の人たちが手を取り合う世の中を作ることです。」
クルーラ「……ええ夢やな。ミカエルはんならできる。任せたで。」
ジョージ「『なんでも屋じょーじ』をこの街で出すことよ。この街の方たちは羽振りがいいもの。」
クルーラ「……お前さんらしいな。」
ミシェル「(泣きながら)このクレイトル市場とアートリオンの発展です!」
クルーラ「……それもええなぁ。ミシェルが纏めとる姿見たかったわ。」
ラーク「父さんと同じ、グランハルト帝国統括騎士隊長になって、国をまとめることです。」
クルーラ「……盛大な夢やなぁ。ま、ラークはんならできるやろ。自分を忘れんかったらなぁ……アンジェは?」
アンジェ「……夢」
クルーラ「そうや……お前の夢や……うぐぅ!」
クルーラ、ギルベルト以外全員「!?」
アンジェ「お父ちゃん!?」
クルーラ「気にすんな。少し虫が暴れとるだけやさかい。ゆっくりでえぇ。教えてくれ。」
アンジェ「……正直、今を楽しく生きるだけ考えていたウチには夢なんてない。けど……(泣き始める)ウチを支えてくれたミシェルやお父ちゃんに恩返ししたいんや」
クルーラ「そんなことかいな」
アンジェ「せや!やからお父ちゃん!ウチの前からおらんくなったらあかんで!絶対やかんな!!」
クルーラ「それは無理やわ……すまんな。けど、アンジェの心の中にはちゃんとおる。それは、約束するからな。」
アンジェ「うん……うん……」
クルーラ「さて、続きやが、お前さんらがそれをしっかり頭の中に持っていれば道は必ず開けるんや。ラークはんの騎士隊長の夢、ミカエルはんとミシェルの街や人々への思い、アンジェの恩返し、本当はワシが力になりたいし、見届ける義務があるんやが無理そうや。彼らの夢や目的達成の未届け人。頼めるか?ゴリラ男」
ジョージ「当たり前じゃない。そんなのお安い御用よ。それといい加減名前ぐらい覚えなさいよ!私はゴリラ男じゃなくて『なんでも屋じょーじ』の店主ジョージ。ジョージ・ブライアンよ!」
クルーラ「……せやな。頼んだでジョージ(吐血)」
ミシェル「クルーラさん!」
クルーラ「もうお迎えかいな。もう少し待たんかいや。さて……(大きく息を吸う)アートリオンの民たち!みんなには今まで迷惑をかけてもうた!本当にすまん!ワシからの最期の願いや!これからも、このアートリオンを愛してんか!ワシがどのような道を……希望を用意しても!絶対にそれを守ってくれ!未来のアートリオンは任せたで!また会おうな!ぬ……ぐぁぁぁぁぁ(吐血)」
ー間ー
ジョージ「……らしい最期じゃないの。」
アンジェ「……せやな」
ラーク「アンジェ……その……」
アンジェ「なぁ、ラーク。今その話したらぶち殺すで」
ラーク「な!?」
アンジェ「ウチは今ブチギレとんねんや!あの下衆野郎に!」
ギルベルト「下衆?下衆だって?ハハハ!おかしい限りじゃねぇか!父上殺されて気でも触れちゃいましたかぁ?かわいい嬢ちゃん!お前も今からあっちに……」
アンジェ「黙れ」
ギルベルト「むぐぅ!?」
ギルベルトM「なんで言葉が出てこない!?まさか……これって」
ラーク「あの能力は……」
ミカエル「行商人の力……」
ジョージ「これが……覚醒?クルーラの死でアンジェが覚醒したというの?」
ミシェル「そうみたいやな。せやけど、アンジェのは少し特殊みたいや。」
ラーク「特殊?」
ギルベルト「何が覚醒だ!雑魚が粋がってもどうしようもねぇぞ!ヘルフレア」
アンジェ「散!!」
ミカエル「え!?それって!?」
ミシェル「俺が使うとる禁呪やね。これはアートリー・バーンにつたわるもんやから普通の人間にはできひん。つまり、今のアンジェは一度見た魔法や技がすべて使えるぐらい俺よりも膨大な魔法脳を持っているっちゅうことや。」
ラーク「うそ……だろ?」
ミシェル「そして、見たことなくてもその人の能力はマネできてしまう。これも怖いんや。」
アンジェ「職業変更。銃士!」
ラーク「銃士ってことは……」
ジョージ「私の能力スキルね!楽しみだわぁ。」
アンジェ「これは、ミシェルの分!全弾打ち込む!クラッシュバレッド!!」
ミカエル「あれはジョージがグランハルト帝国の公園で見せた。」
ジョージ「もう、あれって結構難しいのよ!嫉妬しちゃうわ。それに……」
ラーク「全弾命中……」
ジョージ「たった一回で全弾命中なんて……私は何回練習したと思ってるのよ。ほんとに嫉妬しちゃう。」
アンジェ「職業変更!魔法剣士!」
ミカエル「今度はラークね。」
ラーク「てことは……」
ギルベルト「めんどくせぇ!とっとと終わらす!ヘル・オア・ヘブン!!」
ミカエル「あれは!?即効性の致死魔法!逃げて!アンジェ!」
ラーク「いや、アンジェは逃げない……このままでいい。」
ミカエル「どうしてよ!?アンジェが……アンジェが死んじゃうのよ!」
ジョージ「落ち着きなさい。ミカエルちゃん。仮にも今のアンジェはラークよ?ラークはこういう場では逃げないわ。」
ミシェル「それに今のアンジェをラークはんはよく見といたらいい。」
ラーク「え?」
ミシェル「アンジェにはラークはんのあの技のレベルアップも可能にできるからや。」
アンジェ「ハァァァァァァ!」
ラーク「あれは、無砲炎!!でも、おれのとは何か違う気が……相手の攻撃が渦巻いて、圧縮されていくような感じがする。」
ジョージ「無砲炎むほうえんには2種類あるのよ。ひとつは完全に相手の技を打ち消すもの。これはラークがやっていたものなのだけれど、クラッチはどちらかというと、今アンジェがやろうとしているものをよく使っていた。よく見ておきなさい。これが、無砲炎の最終系……」
アンジェ「ハァァァァァァ!!」
アンジェM「ミシェル……お父とっちゃん。見てて……これが……」
アンジェ「これがウチの!!お父ちゃんの!!アートリオンの思いを込めた一撃や!豪砲炎!!」
ギルベルト「……は?」
ギルベルト「おいおいおいおいおいおい!!まてまてまてまてまてまて!そんなのきいてねぇよ!覚醒してさらに強くなって、俺の最強秘奥義が打ち返されて!って、まてよ。これを食らったらだめだ!逃げねぇと!」
アンジェ「跪け!」
ギルベルト「んぐ……」
ギルベルトM「動けねぇ!嘘だろ……ここで職業クラス行商人の威圧プレッシャーだと!?」
アンジェ「業魔のおっちゃん。お痛いたが過ぎたな?この街の弁償代とお父とっちゃんのこと、そして、ウチの大事な……大好きなやつに手を出したこと!死んで詫びや!!」
ギルベルト「嘘だろ!?死にたくねぇ!死にたくねぇ死にたくねぇ!死にたくねぇよぉぉぉぉぉ!!」
SE:轟音と爆発
ー間ー
ラーク「やったのか?」
ミシェル「ギルベルト消失……」
ジョージ「勝ったみたいね!」
アンジェ「……(大きくため息をついて)みんな!勝ったで!ウチ等は勝ったん……や……」
ミカエル「アンジェ!……アンジェ!大丈夫!?」
アンジェ「(寝息)」
ジョージ「今はそっとしてあげましょう。あれだけの魔力を無条件で使ったもの。かなりの疲労のはずよ。」
ミカエル「そうね。かっこよかったわよ。アンジェ。あなたのこと好きになりそうなぐらいね。」
ー間ー
≪世の狭間≫
ギルベルト「あれ?ここはどこだ?おれは……」
ガベル「ここは世よの狭間はざまだ。ギルベルト。」
ギルベルト「ガベル様!」
ガベル「ギルベルト。ここは世よの狭間はざまといい、お主を生き返らせるかどうかを判断する場所となっておる。所謂いわゆる、業魔裁判の法廷だ。」
ギルベルト「業魔……裁判?あれ?俺って悪いことした?」
ガベル「判決を言い渡す。ギルベルト。貴様はこのガベルの命令を超える行為を行った。人間の虐殺までは許可を出してはいない。よって、貴様を輪廻転生の世界から外させてもらう。」
ギルベルト「……は?うそ……だろ?そんな……」
ガベル「さらばだギルベルト。貴様はいい奴だった。」
ギルベルト「ちょ……まてよ……な?落ち着いてくださいよ。ガベル様……ね?」
ガベル「……さらばだ。」
ギルベルト「な……な……ガ……ガベル!!貴様ぁぁぁぁぁ!!」
アインス「無礼者!!」
ギルベルト「グァァァ!!アインス、何しやが……ひっ!体が消える!ガベル様!1人はいやだ!1人ぼっちにしないで!俺は!ガベル様!ガベル様ーーーーー!!」
ー間ー
ガベル「……すまない。アインス」
アインス「いいえ、ガベル様がギルベルトに特別な思いを持っていたのを知っております。その思いを踏みにじったギルベルトを私は許しません。」
ガベル「そうだな……私も少し甘かったか……」
アインス「いいえ。」
ガベル「時にアインス」
アインス「はい?どうされましたか?」
ガベル「お主、何か企んでおらんか?」
アインス「!?」
ガベル「元人間で業魔軍にきて四天王になりあがった貴様だ。何かあるのではと思ってな。」
アインス「……いいえ。」
ガベル「まぁよい。戻りたければいつでも人間の世界に戻らせてやる。とだけ言っておこう。」
アインス「……失礼いたします。」
ー間ー
≪アートリオン中央広場≫
アンジェ「……ん……んん」
ミシェル「起きたか?アンジェ」
アンジェ「ミシェル!あんたこそ、大丈夫かいな?」
ミシェル「大丈夫や!こんなもん!俺はアートリーバーンやで!」
アンジェ「せやな」
ミシェル「こわなかった?」
アンジェ「え?」
ミシェル「アンジェ、俺のこと怖いと思ったんやないやろうかと思ってな。いきなり人外に変身したんやから。」
アンジェ「そうは思っとらんよ。」
ミシェル「え?」
アンジェ「だって、ミシェルはミシェルやん?ウチの好きなミシェルは、鈍臭どんくそうて、無駄に知識あって、えらそうで」
ミシェル「偉そうにしとらんやろ!?それにディスってない!?」
アンジェ「ディスってないわ!褒めとんねん!(溜息)それに……」
ミシェル「それに?」
アンジェ「いつもウチのこと思ってくれるやん?せやから本当に感謝しとるんよ。」
ミシェル「……せやな。そう思ってくれたら嬉しいわ。」
ジョージ「あら、アンジェ起きたのね。」
ラーク「アンジェ!おはよう!体は大丈夫?」
アンジェ「見てのとおりやで!」
ジョージ「それじゃぁ、広場に行きましょうか。」
アンジェ「広場?」
ジョージ「そこで本日のメインイベントが行われるのよ。クルーラの葬儀がね。」
ー間ー
(アートリオン中央広場)
ジョージ「よし、街のみんなも集まったわね。」
アンジェ「なぁ、ラーク」
ラーク「ん?どうしたの?」
アンジェ「あの……」
ミカエル「アンジェ!!」
アンジェ「のわ!?いきなり抱き着くとか何やねんミカエルちゃん!」
ミカエル「だって……だって……アンジェが死んでしまったかと思って……」
アンジェ「やからって、ちょっと苦しいわ。それにウチのために泣いてくれてるんやね。うれしいで。」
ミカエル「え?私……泣く?」
ラーク「ミカエルの顔、涙でぐちゃぐちゃだ」
ミカエル「え?ちょ……見ないでよ!」
ジョージ「そこー、いちゃつくのは後にしてもらえるかしら?」
ミカエル「す……すみません」
ジョージ「まったく……とりあえず、この街のアートリオンの首長しゅちょうであったクルーラ・クレイトルは本日の業魔との戦いで命を落としたわ。ここでアートリオン式の葬儀を行わせて頂戴。アンジェ。できるわね。」
アンジェ「え!?う……うん。できるんはできるけど、ウチでえぇの?」
ジョージ「お願いできるかしら。私でもできるのだけれども、あなたがやる方がいいと思うし、クルーラもそのほうがうれしいと思うの。」
アンジェ「……わかった。……死者の魂は空に返る。空から天へ。天から地上へ、地上から天へ。輪廻転生を果たしこの世に生まれし命を我々は歓迎する。この街アートリオンのために死力を尽くし、この街を守り抜いたクルーラ・クレイトルをここに追悼する。……御霊よここに。レイン・カーネーション」
ー間ー
アンジェ「これで父クルーラ・クレイトルの命は輪廻転生を果たし、子のアートリオンに返ってくるやろう。会場のみんな。黙祷や。」
ー間(10秒ぐらい)ー
アンジェ「OKやで。おっちゃん!終わったで!」
ジョージ「ありがとう。それじゃぁ、クルーラからの答辞をここで流すわね。」
ラーク「え?死者の声って流せるの?」
ジョージ「録音に決まってるじゃないの。このグランシーバーに録音していたのよ。さ、始めるわよ。再生。」
ー間ー
≪グランシーバーからの声≫
クルーラ「これで喋れるんか?」
ジョージ「えぇ、大丈夫よ」
クルーラ「わかった……おう、みんな!元気か?これが流れとるっちゅうことは、多かれ少なかれ、ワシの身に何かあったときや。そして、アートリオンの禁句であるアートリー・バーンが顔を出したときやろう。まず、この禁句であるアートリー・バーンであるミシェルを隠していたこと申し訳ない。ここに頭を下げさせてもらう。ミシェルに神の国と同じ思いをさせとうなかったんや。本当に済まない。さて、本題に行くわけやが、このアートリオンの状況的におそらくやが、首長がいない状況や。ゆえに、新しい首長をミシェル・ベルサス……お前に任せようと思うとる。」
ー間
ー
≪アートリオン広場≫
ミシェル「え?俺?」
アンジェ「ぴったりやん!やりぃや、ミシェル!」
ミシェル「けど……俺はアートリー・バーンで」
ジョージ「最後まで聞いてから判断しなさいな。クルーラのあなたへの思いは本物よ。」
ミシェル「え?」
ー間ー
≪グランシーバーからの声≫
クルーラ「ワシがアンジェやなくミシェルを指名したのは、三つの理由からや。一つ。アンジェはおっちょこちょいが過ぎるから首長には向かん。あいつに任せたらアートリオン及びクレイトル市場が崩壊や。人間、適材適所ちゅうもんがあるからのぉ。やから、アンジェにはミシェルを支えてほしい。それに向けてアンジェはラークはんの旅に同行して、ほかの国の現状や内情を勉強するんや。その知識をもってミシェルを支えてほしい。ミシェルをいかせられへんのは、アートリー・バーンの宿命や。よろしく頼むで。」
ー間ー
≪アートリオン中央広場≫
アンジェ「は!?おっちょこちょいってなんやねん!……っていま、旅の同行を認めてくれた?やった!」
ラーク「やったねアンジェ!」
ジョージ「ミシェルを支えるために見分を広げろということだと思うわよ。これからも勉強ね。」
アンジェ「勉強は苦手やぁぁ!」
ー間ー
(グランシーバーからの声)
クルーラ「そして、二つ目。ミシェルは頭がえぇ。実際ワシがここまでやれたのはミシェルのおかげでもある。ありがとう。あらためて感謝や。そして、三つ目。アートリーバーンに関してえぇ思いをしていない住民も多いやろ。せやけどな、それを受け入れなあかん世の中に代わってきたんや。アートリーバーンやから迫害する、差別する。そういうのを失くしたいんや。その適任がミシェルや思うとる。これはミシェルしか頼めん。みんな、これからもミシェルをよろしくな。あと、アンジェ!風邪ひくんやないで!じゃぁの!」
ー間ー
≪アートリオン中央広場≫
ミシェル「……ありがとう……もったいないわ。俺には」
アンジェ「ミシェル。ウチからも頼むわ。やってくれんか。」
ミシェル「アンジェ……」
アンジェ「お父とっちゃんが守ってくれたこの街を守ってほしいねん。お願い。」
ミシェル「……わかった。アートリオンのみんな!!俺が今日からこの街のリーダーや!といってもアートリーバーンやから信用ないかもしれへんし、わからんことも多いし、みんなの方が知っとることも多い。やからみんなで作っていこう!このアートリオンを最高の商業の街にするで!」
(SE:拍手)
アンジェ「よし、みんなはウチにおいで。今日は遅いから寝てから出発や!」
ラーク「わかった。あ、そういえば、武器を新調したいんだけど。」
ジョージ「あら?私のお店の武器じゃ不満かしら?」
ラーク「じゃなくて!もう1本ほしいんだ。」
ミカエル「二刀流ですか?」
ラーク「うん。昔、父さんが教えてくれたんだ。今の剣術を身に着けるために小太刀二刀流を身に着けようとしたけど無理だったって。俺はそれを身に着けて、クラッチ隊長の技も受け継ぎたい。そして、こえるんだ。父さんを。」
ミシェル「なら、これを使つこうて」
ラーク「これって?小太刀?」
ミシェル「歪いびつな形やろ?この刀は持ち主を選ぶんやけどあなたなら大丈夫そうやから。」
ラーク「そうか……ってうわぁ!?」
ミカエル「小太刀が赤く……」
ジョージ「ラーク、あなたの剣と小太刀を合わせなさい。」
ラーク「合わせる?こう?ってうわぁ!!」
ミカエル「ラーク!?」
アンジェ「ラークの周りに赤い炎が!?」
ジョージ「これはラーク自身の魔力の炎よ。これだけの魔力がラークに秘められていたとはね。前言撤回するわ。ラーク。(小声で)あなたはクラッチ以上の魔法剣士になるかもね。」
ラーク「なんかすごく体が軽くなった……」
ミシェル「終わりや。これで契約は完了やで」
ラーク「ありがとう!ミシェル!」
ミシェル「ええで、さぁ、もう寝ないと!ガベルは待ってくれへんで!」
ー間ー
≪アートリオンゲート≫
アンジェ「ほな、ミシェル!いってくるな!」
ミシェル「気を付けていってくるんやで!皆さんも何かあったら鳩でも飛ばしてください!何でもどこでも商品を届けに参りますんで!」
ラーク「わかった!よろしくね!」
ジョージ「それじゃぁ、一度グランハルト帝国に帰るわよ。」
ラーク「わかった!じゃぁなミシェル!」
ミカエル「お元気で!」
ミシェル「みなさん、行ってらっしゃい!アンジェ!また旅の内容話してなぁ!」
アンジェ「うん!いってくるわ!」
アンジェM「絶対にこの世の中、禁句に向き合うんや。お父ちゃんみたいな人は二度と出さん!」
ミカエルM「第1章 アートリオン編 完」
ラークM「次回 第2章 アクトリー編へ 」