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パンドラボックス  作者: 早坂兎武
3/4

第一章 商業の街アートリオン 第2話 アートリオンの禁句(タブー)

パンドラボックス第1章 アートリオン編  第2話 アートリオンの禁句タブー


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


―利用規約―


・ツイキャス、ニコニコ、リスポンなどで上演する際は、作者に断わりの必要はございませんが、連絡やツイッタ―通知を出していただけますと、録画や上演枠に顔を出させて頂きます。


・上演する際はこの台本のタイトルとURL、作者(協力は不要)、配役表をコメント欄にのせていただきますようお願いいたします。また、mojibanなど補助ツールの使用は可能としますが、台本のURLの代わりにするのはやめてください。


・過度のアドリブ(世界観の改変)、性転換は一切しないようにお願いします。また、適度なアドリブや読みにくい個所の語尾改変は、世界観の変わらない程度ならOKといたします。


・無断転載はしないでください。もし、発見や連絡があった場合、作者が確認したのち法的処置を行いますのでよろしくお願いします。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



【登場人物】

ラーク・ウィッシャー:15歳。第一次グランハルト帝国戦争を戦い抜いたクラッチ・ウィッシャーの息子。職業は魔法剣士。剣の技術に秀でているが、魔法に関してはてんでダメ。下級魔法でも最弱の威力しか出せない。グランハルト帝国の皆が持っている力、「グラン」を持っているが、うまく自分の力を理解していない。熱い性格で常にポジティブな考えを持っている。


ミカエル:15歳(人間年齢)。ラークの夢の中に現れた天使。容姿はかなりの美女。彼女の歌う歌には癒しの効果があり、支援要因として主人公パーティーを支える。出来損ないの天使であり、人間の気持ちを理解するためにラーク一行の旅についていくことになった。


ジョージ・ブライアン:性別おかま。40歳。クラッチとともに第一次グランハルト帝国戦争で戦った英雄。第一次グランハルト帝国戦争時の年齢は30歳。職業クラスはハンドガンがメインウェポンのガンナー。スナイパーライフルも巧みにこなすことから、グランハルト帝国戦争時は王城からクラッチたちの通信を頼りにガベルと戦った。現在では『なんでも屋じょーじ』を経営している。グランハルト帝国の皆が持っている力、「グラン」を持っている。


アンジェ・クレイトル:12歳の関西弁をしゃべる少女。初登場シーンは???表記。商業の街アートリオンの出身。職業クラスは魔術師だが、詠唱に関してはかなりのオリジナル。だが、自分の出したい魔法晶術が出せてしまうことから、アートリオンの中では変わり者と言われている。商業の街アートリオンでクレイトル市場を経営しているクレイトル一家の看板娘。グランハルト帝国の出身ではないため、『グラン』は使えないが、『覚醒』を備えている。だが、覚醒するためには条件があるらしく、その条件を満たしていないため、発動したことはない。


クルーラ・クレイトル:40歳。関西弁で話す。商業の街アートリオンにて、クレイトル市場を経営している。職業クラスは行商人。特殊職業クラスであり、彼の話に背くものは行動不能となる。基本的に温厚だが、気に食わないことが起こると、彼の持っている能力で自ら制裁を下す。アートリオン市場会の会長も務めている。


ミシェル・ベルサス:15歳。アンジェの幼馴染。職業クラスは???(アンノウン)。アンジェのことが好き。だが、彼女には気づいてもらえずにため息をつくことが多い。根はしっかりとした男の子だが、隠されていることが多すぎる。


ギルベルト・アンダーソン:業魔ごうまガベルが率いる、暗黒四天王が一人。火の魔法の使用に長けている。口にピアスをつけており、性格はチャラくてウザい。敵を散々あおるのが趣味で、その性格上、味方までも煽ってしまうことがある。見た目年齢は20代前半。


町民A:ジジィです。


町民B:ババァです。



≪メイン≫


ラーク(不問):

ミカエル♀:

ジョージ♂:

アンジェ♀:

ギルベルト♂:

クルーラ♂:

ミシェル(不問):


≪サブ≫

町民A♂:

町民B♀:


~本編~

クルーラM「うちに帰ってきたラークはんたちを見ると、その姿はまさに、覚悟を決めたもんの顔やった。その顔を見たワシとジョージ、ミシェルはそっと胸をなでおろした。その夜は宴会やった。夜遅くまでどんちゃんしよった子ども連中は大広間で眠りに入りよった。そのかわいらしい寝顔をみて、ワシとジョージは酒を飲みなおすことにしたんや」


クルーラ「そんなに楽しかったんかいな?ほら、みてみぃ!ええ寝顔と寝息やで?」


ジョージ「あら、本当ね。かわいらしいわぁ。」


クルーラ「子どもは寝ることが仕事やさかいな。ま、明日から地獄やから、その前の眠りは大事なんやけどな。」


ジョージ「覚悟を決めた彼らなら大丈夫じゃないかしら。……ねぇ、クルーラ。」


クルーラ「ん?どないしたんや?ワシはゴリラ男を抱く趣味はあらへんで?」


ジョージ「違うわよ。私飲み足りないから付き合ってよ。」


クルーラ「なんや、そんなことかいな。えぇで。誰かと飲む久々のうまい酒やけぇの。」


ジョージ「ありがとう。ほら、帝国のウィスキー「グランパージ」よ。」


クルーラ「お?帝国一高いウィスキーとは気が利くやんけ。いつからお前さんはそこまで気が利くようになったんや?」


ジョージ「もとからよ!失礼しちゃうわ。」


クルーラ「せやったか?ま、えぇわ」


ジョージ「……それよりもあなた。あの子……どうするつもり?」


クルーラ「……ミシェルか?」


ジョージ「そうよ。あの子、人間じゃないでしょ?」


クルーラ「さぁのぉ。……ジョージ、お前には教えとこうかの。」


ジョージ「あら、何かしら?」


クルーラ「実はな。あいつの……ミシェルの存在自体が、このアートリオンの禁句タブーなんや。」


ジョージ「!?どういうこと!?」


クルーラ「アホかお前は。そんな大きい声出したら子どもらが起きるやろ!それに、そこまで聞いたら図書館行く意味あらへんやろが」


ジョージ「……そうね。早まったわ。ごめんなさい。」


クルーラ「謝らんでもえぇ。……お前さんに教えとこか……今から話すんわ、ミシェル本人とアンジェは知らんことやが……このこと……ミシェルがこの国の禁句タブーっちゅうんわ、こいつら以外のアートリオンで住んでるもんは全員知っとる事実なんや。」


ジョージ「そう……変わったことするのね。」


クルーラ「ワシの職業クラス忘れたんか?職業クラス行商人は、相手がワシに歯向こうたらそこで終わりや。」


ジョージ「どういうこと?」


クルーラ「ワシがこの禁句タブーに対して肯定したらそれがこの街の答えになるんや。あいつを……ミシェルを殺すな。そう命令したんや。あいつを人間として生活させる。差別なんて失くしてしまえばえぇ。例え、どんな存在でもな……」


ジョージ「クルーラ……」


クルーラ「そんなしんみりすなや。ワシの人生にあいつの人生足しただけの話や。後悔なんぞしとらん。」


ジョージ「ならいいわよ。さて、グランハルト一番のお酒にかなうアートリオン一番のお酒はあるのかしら?」


クルーラ「お!そんなら、えぇ酒があるで!せや、ジョージ。あんさんに頼みがあるんや。」


ジョージ「あら、珍しいわね。何かしら?」


クルーラ「実はな……」



―間―



ラーク「ふぁぁぁぁ……よく寝た……」


ミカエル「おはようございます。」


ラーク「あ、ミカエル。おはよう。」


アンジェ「おっそいでぇ!ラーク!」


ラーク「ごめんね、アンジェ。どうも朝が苦手でさ。」


アンジェ「もうちょいでウチがあんたを投げ飛ばすとこやったんやからな!」


ラーク「起きてきてよかったぁ……」


ミシェル「みんな、朝食ができとるでー」


ラーク「げ!?もうそんな時間!?」


アンジェ「ラークが一番いっちゃん遅かったんやで!」


ミカエル「ぐっすり寝ていましたね」


ラーク「だ……だってよ……少し長旅で疲れたっていうか……てか、あの男の子……ミシェルだっけ?なんであんなに元気なんだ?」


ミカエル「知らない」


アンジェ「商人あきんどの朝は早いんや!当たり前やろ!朝の市場いちばの店、5店舗の店長やさけな。商人あきんど纏める力もあるもんで、市場いちばのおっちゃんらの間では、おっちゃんの後釜はミシェルって言われとるぐらいなんや。」


ミカエル「あら、そんなにすごいお方だったのですね。」


ミシェル「アンジェ、その話はいいから……皆も、冷めんうちによ食べてな。」


ラーク「わかった!」



―間―



ラーク「ふぅー食ったぁ……ごちそうさまでした!」


クルーラ「お粗末さんな!」


ミカエル「お粥というのですか?薄味で、その中にもいろいろな風味が合わさっていて、おいしかったです。体も温まりました。」


ジョージ「う~ん、お酒を飲んだ後だから、最高にしみるわねぇ!」


クルーラ「せやろ?『カンポウ』と言われる……まぁ、薬みたいな食材いれとるからの。出汁はアワビっちゅう貝の仲間からとっとるさけぇ、味は美味うまいはずや!……さて……あんさんら、図書館に行くんやろ?」


ラーク「……はい!」


ミカエル「勿論です」


アンジェ「何言っとんねん!当たり前やろ!」


ジョージ「全員覚悟は……できたようね!」


ラーク「……俺たちは、目の前にあることばかりにとらわれていた。本当の事実から目をそむけていたんだ。だからこそ、本当の歴史を見て、禁句タブーが何かを調べたい!」


ミカエル「五大国の歴史を知ることが、私たちの今後のためになるのなら、調べて知る覚悟が必要なことがわかりました。」


アンジェ「せやから、ウチらは調べる!そう決めたんや!」


クルーラ「そうか。なら、そんな若人わこうど達のために予備知識を教えたろ。んなもん、いちから学んだら日が暮れるさけの。ジョージもそのほうがいいんとちゃうか?」


ジョージ「そうね。私もあまり禁句タブーのことについては知らないもの。」


ラーク「そうなの?」


ジョージ「えぇ。基本的なことは知っているけれども、本当の意味は知らないのよね。」


クルーラ「あんさんら、そんなんやったら本間に日が暮れてまうで。とりあえず、基礎知識、禁句タブーとは何かや。」


ジョージ「私が聞いたことあるグランハルトの中での意味は『言ってはいけない言葉』っていう意味で使われているわね。」


クルーラ「ほう、こりゃぁ驚いた。一部しか教えられとらんのやなぁ」


ジョージ「一部?どういうこと?」


クルーラ「禁句タブーっちゅうんは、『やったらあかん言動』という意味でワシらは使つことる。ただこの言葉、ややこしいんは、裏の意味があんねん」


ラーク「裏の意味?」


クルーラ「せや。裏の意味……神様かみさんはその裏の意味を恐れて禁句タブーを封じたんや。その裏の意味は……『世界を壊すような言動』や」


クルーラ以外全員「!?」


クルーラ「例えば……せやなぁ……おい、アンジェ」


アンジェ「なんや?おっちゃ……」


クルーラ「(遮るように)バァカ!」


アンジェ「はぁ!?なんでいきなりそないなこと言われなあかんねん!!いくらおっちゃんやからって……」


クルーラ「それや!」


アンジェ「うわぁ!今度はなんやねん!!」


ジョージ「どういうこと?」


ミカエル「よく……わかりませんが……」


クルーラ「あんな?人間、腹立つこと言われたら怒るやろ?どんな些細ささいなことでも小さな怒りから大きな怒りがある。そこなんや。そこが禁句タブーの怖いところやねん。ワシらが生まれる遥か昔にな。それがもとで戦乱が絶えなかった時代があったんや。ある帝国と、ある帝国、仮に帝国A、帝国Bとしようや。帝国Aは不作続きで、飢饉ききんおちいっとってのぉ、その帝国Aが帝国Bの神様かみさんに悪口をうたんや。『帝国Bの人間が神様かみさんを必要ないとっとる。はよ、天界に帰れクソ野郎!って言ってたぞ!』ってな。ラークはんに聞こう。自分がもし、帝国Bの神様かみさんとして、そないなこと言われたらどないする?」


ラーク「俺なら……イライラしたり怒っちゃったりしちゃうかもしれないけど、まず事実を確かめます!その事実をもとに、しっかりと話をして……」


クルーラ「せや。まず、帝国Bの神様かみさんも確かめた。帝国Bの王様おうさんにその話をし、国民に確認させた。するとどうや。帝国Aの人間が神様かみさん悪口言っとったという言質げんちを得たんや。」


ミカエル「その話、聞いたことがあります。それに怒った帝国Bの神様かみさまは、帝国Aに怒りの鉄槌を落とした。その鉄槌がきっかけで、帝国Aと帝国Bが戦争になった。」


クルーラ「せや。一人の人間の心ない言葉が神様かみさんたちを怒らせた。挙句あげくの果てには、帝国Aと帝国Bの力の強い神様かみさん同士で戦いが始まったんや。その戦いが第1だいいちじ業魔ごうま戦争せんそう……」


ミカエル「……(唾をのむ)」


クルーラ「そうやで?嬢ちゃん。嬢ちゃんのお母っ(か)さん、ミカエルがうなった戦いや。その戦いを防ぐ元として、作られたのがパンドラボックスや。」


ラーク「でも、それっておかしくないですか?」


クルーラ「ん?なにがや?」


ラーク「それなら、なぜ業魔戦争ごうませんそうに第一次とついているのが不思議で。パンドラボックスができたのなら、それで戦争が止まるはずだと思うのですが?」


ミカエル「……第二次業魔戦争はパンドラボックスを作っているときに起きたのよ。」


クルーラ「せや。パンドラボックスの制作過程に目を付けた別の国の業魔ごうまが襲ってきたんや。そこで起きたのが第二次業魔戦争。その戦いを最後に業魔戦争は終わった。第一次業魔戦争が終息までに十年かかったのに対して、第二次業魔戦争は一月ひとつきで終わったんや。」


ラーク「それってもしかして……」


クルーラ「パンドラボックスが完成したっちゅうこっちゃ。その完成したパンドラボックスが世の中の禁句タブーをすべて食べてしもうてん」


ジョージ「あら、禁句タブーまみれの戦争がそんなに一瞬で終息を迎えてしまったのね。」


ミカエル「パンドラボックスの力がそれほど強大だったのでしょう?」


ジョージ「……そう」


クルーラ「さ。あとは調べてきぃな。また、おいしい飯作って待ってるさかい。」


ミシェル「良かったらこれ、お昼ごはんやから持ってって!」


ジョージ「あら、助かるわね。ありがと。」


ラーク「それじゃ、行ってきます!」




―間―



ミシェル「…………」


クルーラ「えぇんか?ミシェル」


ミシェル「何がです?」


クルーラ「お前さんの好きな女が、お前さんのこと嫌いになるかもしれんのやで?それに、その恋はもう成就せんかもしれんぞ。」


ミシェル「かめへんっすよ。あの人らのうとることが本間ほんまなら、遅かれ早かれ、俺の正体がわかってしまうやん。」


クルーラ「……せやな」


ミシェル「やとしたら、俺が話す前に、知ってもらうほうがええんとちゃうかって。」


クルーラ「そうかいな。まぁ、知れるかどうかは知らへんけどな。」


ミシェル「?なんでや?」


クルーラ「お前さんのことをせた文献ぶんけんなんざ元から無いんや。」


ミシェル「え?」


クルーラ「こういうもんがおるっていうんはあるけど、お前さんがそれっていう表現はあらへんねん。」


ミシェル「そうなんや……」


クルーラ「せや……せやから、これ以降はお前さんの仕事やで?アンジェにきっちり説明したり。」


ミシェル「…………」



―間―



ラーク「ここがアートリオン中央図書館の禁書庫か……」


アンジェ「せや。ウチあまり好きやないんよなぁ。ほこり臭いし。」


ミカエル「しかし、本当にクルーラさんの名前を出したら入れましたね。」


ジョージ「さすがというところね……さ、例の文献ぶんけんのところに着いたみたいよ。」


ラークM「そこにあったのは、厚さ30㎝あろうかという本が5冊と、厚さ10㎝ぐらいの本が2冊置いてあるだけだった。」


ラーク「うわぁ、この本、分厚ぶあつすぎないか?」


ジョージ「そうね……これを全部は骨が折れそう。」


ミカエル「ちょっと待ってください。」


アンジェ「どうしたんや?ミカエルちゃん。」


ミカエル「のものよ。われにその中身を見せよ。リード・オブ・ワード」


アンジェ「うわぁ!文字が!」


ジョージ「なるほど……その本から必要な情報を抜き取ったのね。さすがは女神様だわ」


アンジェ「ほぁぁ……それはすごいなぁ……でも、ウチには読めへんわ。」


ジョージ「なら、私が読みましょうか?」


ラーク「お願い、ジョージ」


ジョージ「わかったわ。……グランハルト帝国とクレス帝国の争いがもとに起きた第一次業魔戦争。その戦争で戦った帝国の神様は、グランハルト帝国はミカエル、クレス帝国はガベルであった。グランハルト帝国を取りまとめていたミカエルはその戦いのさなか、ガベルにたれ命を落とした。……詳細がないようね。」


ミカエル「……詳細は今朝、クルーラさんが言っていた通りです。グランハルト帝国とクレス帝国は元々、手を結んでいて仲良くしていたらしいのです。それぞれが治めている国々の人たちも国のいが多く、二つの国は繁栄していたそうです。」


ラーク「?クルーラさんの話と違う気がする……」


ジョージ「それはそうよ。最初から飢饉ききんの国なんてあるわけないでしょ?」


ラーク「それもそうか……でも、ミカエルのお母さんとガベルは仲良かったんでしょ?なんでいがみ合ったの?」


ミカエル「クルーラさんの話を聞いていなかったの?グランハルト帝国が飢饉ききんおちいったことを話していたでしょ?」


ラーク「うん。父さんから聞いたことがある。グランハルト大飢饉だいききん。グランハルト暦450年におこった食糧危機だよね。その食糧危機があったから、両国りょうこくは仲が悪くなって……」


ジョージ「まって。そのあたりもこの文献に書いている内容は違うみたいよ」


ラーク「え?」


ジョージ「この文献にはね、『そもそもグランハルト大飢饉だいききんなんてものはなかった』って書いてあるわ。」


ラーク「なんだって!?」


ミカエル「そもそも、その『グランハルト大飢饉だいききん』こそグランハルト帝国が作った禁句タブーなのよ。」


ラーク「どういうこと?」


ミカエル「グランハルト大飢饉だいききんは、グランハルト帝国が自分の国民が行った出来事をいんぺいするために作った嘘だったのよ。」


ラーク「え!?それじゃぁ、自分の国の考えを正当化するためについた嘘ってこと?」


ジョージ「近からず遠からずということかしら?ま、間違えてないからいいんじゃない?それよりも、気になる文章があったのよ。」


ラーク「気になる文章?」


アンジェ「なんやなんや?」


ジョージ「これは、アンジェに関することかしら。」


アンジェ「うち!?」


ジョージ「アートリオンの国に伝わる話よ。」


アンジェ「ん?どれどれ?……読まれへん……難しいわぁ……」


ジョージ「ふふ……まだ子どもだものね。『アートリオンに昔から伝わる伝承として、アートリーバーンという伝説の生き物がいるといわれている。この生き物は人間に化けることもでき、実際の人間と同じように話したりする。』」


アンジェ「あ、それならウチも聞いたことある。たしか、時々(ときどき)山のほうから下りてきて、人を襲ったりするんやろ?」


ミカエル「あ、そう伝わってるんですね。」


アンジェ「え?ちゃうん?」


ミカエル「えぇ。どうやら、それも禁句タブーとされているようですね。」


アンジェ「なんやて!?」


ミカエル「実は……」



SE:爆発音



ラーク「なに!?」


ジョージ「外からね。」


ミカエル「いきましょう。」


アンジェ「ちょ!?まったってぇな!」


アンジェM「なんなん……ウチの知らないことが多すぎるやん……本間ほんまになんなん……これ……この世の中の禁句タブーって……」



―間―



ギルベルト「アーハッハッハッハ!!商業の街アートリオンを襲撃しゅうげきしろと言われてきたが、なんだ?このゴミのような国は!」


ミシェル「やめぇな!!街に危害きがいを加えんな!!」


ギルベルト「うるせぇな……おめぇらがこの街のおさを出さねぇからこうなるんだろうが!あぁ?」


ミシェル「せやから、今外出中でおれへんってっとるやん!」


ギルベルト「おめぇらが、かくまってるのはわかってんだよ!早く出しやがれ!」


ミシェル「絶対に……絶対に出すもんか!!」


ギルベルト「……そうか。なら……もう一回……お、あの家を燃やせば出てくるか?」


ミシェル「そこは……アンジェとの……やめろ!!」


ギルベルト「ほう、お前の大事な家か?ならなおさらやめるわけにはいかねぇなぁ!!!」


ミシェル「ちょ……やめ……」


ギルベルト「が怒り!業火に焼かれよ!フレイムバースト!!」


ミシェル「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


クルーラ「せや!!クルセイド!」


ミシェル「!?クルーラさん!!」


クルーラ「なんや?なんで、こんなに街が燃えとんねん」


ギルベルト「おめぇがこの街の長か?」


クルーラ「ん?あぁ、そうやで?なんや、お客様きゃくさんか?」


ギルベルト「まぁ、客っちゃぁ、客だわな。」


クルーラ「……その口ぶり……ぇ客じゃなさそうやなぁ……」


ギルベルト「お!おっさん理解が早くて助かるね~!」


クルーラ「なにしにきたんや?あんさん、ガベルの手先やろ?」


ギルベルト「これも話が早くて助かる。」


クルーラ「しばれ……威圧プレッシャー


ギルベルト「!?」


クルーラ「さてと、ここからはワシのターンや」


ギルベルト「ワシのターンって……俺の体の動き止める必要なくね?」


クルーラ「これ以上燃やされるんは堪忍なんや。この街はワシらにとって大事なもんやさけの。」


ミシェル「クルーラさん……」


クルーラ「さて、単刀直入に聞こうかの……目的はなんや?」


ギルベルト「俺は、この街を治めるように、業魔神ごうましんガベル様に仰せつかったわけだ。」


ミシェル「ふざけんな!この街をどうするつもりなんや!」


ギルベルト「さっきもいったじゃねぇか!この街を統治するために。」


ミシェル「そうやない!真の目的はなんや!」


ギルベルト「さすが、察しがいいなぁ……アートリーバーン……」


ミシェル「な……!?」


クルーラ「…………」


ギルベルト「なんでそれを知ってるんだという顔だな。我々は神だ!知らぬわけがないだろうが!厄災やくさい前触まえぶれ、アートリーバーン!」


クルーラ「黙れ。」


ギルベルト「ぐ……」


クルーラ「ひざまずけ、クズが……」


ギルベルト「ぐぁ!!」


ギルベルトM「だから、なんなんだよ……この能力は……」


クルーラ「すまんのう……ウチのわけぇもんがちょっと頭に血が上っとるようで。」


ギルベルトM「それにこいつ……空気が……」


クルーラ「さて、話がまとまらんゆえに交渉決裂や……なぁ、あんさん……話がまとまれへんかったら……仕置きせんといかんやろ?……ハァァァァァァァァ!いてぇじゃすまへんでゴルァ!怒りの鉄槌、正義の名のもとのものの脳天をぶち抜けぇ!怒髪天鉄槌ヒューリオスハンマー!!」


ギルベルト「ふげぁぁ!?」



―間―



ラーク「クルーラさ……!?」


ジョージ「……何があったの?」


クルーラ「見てのとおりや。」


ジョージ「……説明してくれる?」


クルーラ「……こいつが、ワシらの国の禁句タブーに触れた結果や。」


ミカエル「禁句タブー?」


クルーラ「あんさんら、図書館で『アートリーバーン』の項目は見ぃひんかったか?」


アンジェ「見たわ。けど、それがなんなんか読もうとしたときに、爆発音が聞こえたんや。」


クルーラ「さよか……けど、その話の前にせなあかんことがあんなぁ。」


ラーク「え?」


クルーラ「のぅ、あんさん、いつまでたぬき寝入ねいりしとんねん。はよぉ起きぃな。」


ギルベルト「………ハハハ、ハーッハッハッハッハ!!お前、強いなぁ……」


クルーラ「当たり前や。伊達だてにここのおさやっとらんで」


ギルベルト「なるほどな……さて、それなら、こっちも本気で行くか。」


ラーク「誰だ!あいつ!」


ジョージ「少し、まずそうね……ラーク、ミカエル、加勢かぜいするわよ」


ラーク「(ミカエルとなるべく同時に)おう!」


ミカエル「(ラークとなるべく同時に)はい!」


アンジェ「……え?ウチは?」


ジョージ「あなたが、この国の禁句タブーを知りたいというのなら加勢かぜいしなさい。」


アンジェ「ちょいまちぃな!何言って……」


ジョージ「これは遊びじゃないの!!生半可な気持ちで加勢かぜいしないで……」


アンジェ「……!?」


ジョージ「……すぐな判断じゃなくてもいいわ。あとからでもいい。クルーラ、いいわね。」


クルーラ「かめへんで……ミシェル!」


ミシェル「はい。」


クルーラ「アンジェを頼む。」


ミシェル「!?……わかった。」


ギルベルト「さぁて……どいつから殺してやろうか……キヒヒヒ」


アンジェ「なんや?あいつ様子がおかしいで?」


クルーラ「……チッ。ジョージ」


ジョージ「わかってるわ。ラーク、ミカエル、私たちの動きについてきなさいよ?」


ミカエル「えぇ。久々に私もキレてしまいましたので。」


ラーク「三人の動きについていくなんて無茶だろ!?ま、やるしかないんだけどね!」



ー間ー



ギルベルト「我が血潮、いにしえの溶岩流のように熱くたぎり、が体を熱く燃やせ!!悪魔的爆炎デビルズ・ブースト!!」


クルーラ「が心の目よ見開かれん、第一心だいいっしん開放リリースが心の聴覚ちょうかく開かれん、第二心だいにしん開放リリース。我が心の感覚研ぎ澄まされん、第三心だいさんしん開放リリース……我が第六感、開眼かいげんせよ!感覚開放センセ・リリース!」


ジョージ「狙撃手スナイパーとしての才覚研ぎ澄まされん。完全開放フル・バースト!」


ミカエル「魔術の本流、私の心よりも深く深く沈みたまえ。ネイチャー・オブ・ワールド!」


ラーク「俺だってやれるんだ!ハァァァァァァ!第一陣開放ファースト・ブースト・パージ!!」


ジョージ「へぇ、ラーク……開放パージ系使えるのね。」


ラーク「唯一、できる開放パージ系がこれなんだ!」


ジョージ「そうなのね……まぁ、上出来よ」


ラーク「ありがとう。だけど、それよりも……」


ギルベルト「キヘヘヘ……キャーハッハッハッハッハ!」


クルーラ「せや……あいつを抹殺することが先や。」


ギルベルト「抹殺ぅ?やれるものならやってみやがれぇ!テメェら人間に、神との力の違いを見せてやるぜぇぇぇ!!フレイム・バースト!」


ジョージ「詠唱破棄!?」


ギルベルト「俺たちは神だ!それぐらいたやすいんだよ!」


ラーク「任せて!打ち消せ!無砲炎むほうえん!!」


ジョージ「あれは、クラッチの!?」


ギルベルト「俺の技が打ち消されただと!?」


ラーク「よし!」


ジョージ「へぇ。やるじゃない。それじゃぁ、こっちのターンね。クラッシュ・バレッド!」


ギルベルト「ウグッ!足を抜かれたか。」


ミカエル「のものを張り付けよ。スタンプ」


ギルベルト「ぬぉ!動けねぇ!」


クルーラ「仕置きやな。神の鉄槌ゴッド・オブ・ハンマー!!」


ギルベルト「グハァ!」


ラーク「やったか!!」


クルーラ「んなわけないやろ。仮にも神やで。」


ギルベルト「そういうこったな。」


ラーク「え!?無傷!?」


ジョージ「即効性の治癒ヒール能力スキルがあるのね。本当に面倒くさいわ。」


ギルベルト「お褒めに預かり光栄だぜゴリラ野郎。ただ、こんなもんで終わると思うなよ。ハァァァァァァ……」


ミカエル「この気は!?神の加護を。ディフェンド・オブ・ウォール!!」


ジョージ「どうしたの?ミカエルちゃん。」


ミカエル「この瘴気しょうき。神の国に伝わる禁術を使う前触れです。」


ラーク「禁術?」


ミカエル「えぇ。その禁術は私たちにかなりのダメージが入ります。精神的にも肉体的にも。」


ジョージ「なるほど。そのための壁というわけね。」


ミカエル「えぇ、ですから皆さん防御術を!」


ギルベルト「行くぞ。深淵より出でし炎よ。我の身にまとい、その力を我に示せ!闇炎あんえん黒龍弾こくりゅうだん!!」


ラーク「大きいのが来る!」


ジョージ「言ってる場合!?防御をしなさいよ!ディフェンドアーマー!」


ラーク「そうだね。ハァァァ。防御の型、壱の陣!盾の構え!」


クルーラ「なんや、万全やのう。アイアンアーマー!」


ミカエル「ディフェンド・パール。」


アンジェ「なら、ウチも!ディフェンド・パール!!」


ミシェル「……固縛こばく


アンジェ「え?なんやそれミシェ……」



SE:爆発音



ギルベルト以外「ウァァァァァァ!!!」



ー間ー



ギルベルト「あぁ、微妙に手を抜いちまった。人間がきれいに死ぬように調整すんのムズイわぁ。こんな雑魚しかいねぇ国の統治をおれに任せるとは、ガベル様も何を考えているんだか。」


クルーラ「……大丈夫かいな。みんな。」


ラーク「こっちはみんな大丈夫。アンジェは?」


アンジェ「こっちは……大丈夫や……ってミシェル!?」


ミシェル「なんや?……大げさ……やな?」


アンジェ「大げさって……頭から血ぃ流してるやん!?」


ミシェル「んなもん……たいしたことないわ。そろそろ……オレも……やれること……やらしてもらわななぁ……ええやろ?……クルーラさん」


クルーラ「あかん!それが何意味するかわかっとんかい!」


ミシェル「アンジェも覚悟決めたんや!オレにも……決めさせてんか……」



ー間ー



クルーラ「わかった。無理したら殺すで」


ミシェル「うん。今までありがとうな。クルーラさん」


クルーラ「…………」


アンジェ「どういうこと……なぁ、何しようとしてんのや!ミシェル!」


ミシェル「あ、そうやったか。話してなかったかぁ。面倒めんどいのぉ。堪忍したってぇな。」


アンジェ「え?」


ミシェル「あんなぁ、アンジェ。アートリーバーンって聞いたことないか?」


アンジェ「アートリーバーン……伝説上のあれやろ?」


ミシェル「そ。オレの能力は前話したやろ?」


アンジェ「“???(アンノウン)”やったっけ?」


ミシェル「そ。今が”???”(アンノウン)の力を見せる時やなと思ってな。見といて、アンジェ。これが、アートリーバーンの……オレの能力スキル、“???(アンノウン)”の力や!ハアァァァァァァ!!」


アンジェ「ミシェルの周りに魔法陣が!?しかも大きい!」


ジョージ「あの子、何をする気!」


町民A「なんだ!?この風は!」


町民B「これは、伝説にあったアートリーバーン様の神風かみかぜじゃ……」


ミシェル「(微笑んで)アンジェ、みんな。幸せにな。」



ー間ー



ミシェル「われ真名まなはアートリーバーン。身命しんめいを賭して、この街、アートリオンを守るものなり。われの身に鋼のよろいを。われの身に鋼鉄こうてつの刃を。ここにいるすべてのものを守るために、目の前の侵入者を没する力をわれに!皆の前に顕現けんげんせよ!聖なる使者!アートリーバーン!!ハァァァァァ!!伝承魔法!!アートリー・オブ・ゴッド!!」


アンジェ「え?……アートリー……バーン?」


ギルベルト「ぬぉ!?なんだ、この風の威力は!」


クルーラ「みんな!伏せや!」



ー間ー


アンジェ「あれが……ミシェル?」


ミシェル「我が名はアートリーバーン。身命しんめいして、このアートリオンを守るものなり。」


町民A「あれが……アートリーバーン様……」


町民B「どうか……この街を守ってくださいませ。アートリーバーン様。」


アンジェM「目の前に現れたんは、まさしくドラゴン。うろこの光や髭の長さ。伝承とはいえ、ここまで大きなドラゴンに代わってしもうたミシェルにウチは何も言えんかった。」


クルーラM「そりゃぁそうやろうな。ただ一つ言えるんは、アートリオンの禁句タブーが現れたことによって、この戦いは完全にこっちの勝利になったも同然や。勝てるで。これは。」


ギルベルトM「パンドラボックス第一章第2話、アートリオンの禁句タブー

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